運動と食事

健康

食事と運動ではどちらが内臓脂肪を下げるのか

はじめに

こんにちは、食品会社に勤めるブロガーのPonです。元研究開発職で食品と腸内細菌の研究で社会人博士を取得しています。このブログでは僕が気になった論文などを紹介しています。最近はダイエット関連の勉強をしているので、良かったら他の記事も読んでみてください。

さて、ダイエットと聞いて、皆様は”運動”と”食事”のどちらが大事だと思いますか?僕は別の記事[1]でも紹介したんですが、論理的に考えると基本的には食事が大事だと思っています。ですが、運動と食事を直接比較した研究は見ていないなあと思いまして、今回紹介させていただきます。ポイントは以下の3点です。

内臓脂肪の減少は食事(カロリー制限)のほうが効果が高い

運動はたくさんするほど内臓脂肪を減少させる

食事は摂取カロリーを大幅に減らしても効果はあまり変わらない

良かったら最後まで読んでみてください

研究概要の紹介

今回紹介する論文[2]は、香港大学の研究グループによる運動による減量を行なった研究(26研究、n=983)と食事による減量を行なった研究(15研究、n=394)を集めたメタアナリシスの論文です。

メタアナリシスと言うのは複数の論文を統合して一つの結論を出す手法で、今回紹介する論文のようなヒト臨床試験(RCT)のメタアナリシスは、一般的にはエビデンスレベルが最も高い研究です。

ただし、今回研究を行っているグループはどちらかというと身体活動の研究グループのため、食事の論文の検索はちょっと甘いのかなという印象を持ちました。

では、さっそく結果の紹介をしたいと思います。

食事のほうが内臓脂肪を下げる

まず、基本的な結果を紹介すると、運動でも食事でもちゃんと内臓脂肪の減少効果がありました。運動と食事ではどちらの方がより効果があるのかは、直接比較しているわけではないのですが、数値だけ見ると運動に比べて食事のほうがキレイに内臓脂肪の量を減少しそうです。

効果量
運動-0.28 (-0.37~-0.19)
食事(カロリー制限)-0.53 (-0.71~-0.35)

この結果はあくまでも介入の結果、どちらの効果が大きかったかを比較しているので、どの程度運動でカロリーを消費したのかや食事でカロリー制限をしたのかは考慮していません。

ただ、論文の中で介入によるカロリー収支の変化量を図示しているのですが、運動の論文では1週間あたり1000kcalから2000kcal程度の論文が多いのに対して、食事制限では2000kcalから5000kcalの論文が多く、6000kcal以上のカロリー制限を行っている論文もありました。

論理的に考えると、食事制限で摂取カロリーを1000kcal減らすのと、運動で消費カロリーを1000kcal増やすのでは、効果は同じはずなので、食事制限によって摂取カロリーを減らすほうがカロリー収支を大きくしやすいのだろうなと思います。

これは、以前に紹介した記事[3]でも100kcal分の運動はランニングなら15分、早歩きやサイクリングなら30分に対して、100kcal分の食事は、バニラアイスなら1/3カップ、ウィンナーソテーなら2本、オレンジジュースなら100mL程度になることからも、一般的な感覚としても納得できるかなあと思います。

運動はたくさんするほど効果が高く、食事は変わらない

一方で、この論文で不思議な結果となっているのが、運動と食事では量反応性が全然違った点です。量反応性というのは、カロリー収支を減らすほど、内臓脂肪も減るかどうかということです。

運動は1週間あたり1000kcal消費するごとに、効果量-0.15 (-0.23~-0.07)

だったのに対して、

食事は1週間あたり1000kcal摂取量を減らすごとに、効果量-0.04 (-0.17~0.08)

という結果でした。

こちらの結果も運動と食事で直接比較しているわけではないのですが、運動の場合のみ、消費カロリーを増やせば増やすほど内臓脂肪を下げたということです。

運動と食事では介入の遵守に違いがあるのかもしれない

さて、この結果を見て皆様はどのように感じましたか?繰り返しにはなりますが、運動よりも食事のほうが内臓脂肪の減少には良さそうです。つまり、この論文を実生活に活かすとしたら、まずは食事介入が良いと言えます。

一方で、食事介入はたくさんすればする程効果が出るかというとそうでもないようですね。この理由は分かりませんが、僕が思ったのは、自分では1週間あたり2000kcalくらい摂取量を抑えているつもりでも、実際は1000kcalくらいしか抑えていないというようなことが、多いのではないかと思います。

食事の摂取量は、朝昼晩の3食に加えて、間食までありますので、徹底的にコントロールをすることが難しいのだと思います。

それに対して、運動は2時間半のランニングで1000kcalなど、かなりインパクトのある内容になるので、本当に運動をしたかどうかを比較的正確に測定できると思います。この違いが容量反応性の有無に影響を与えたのかなと思います。

イメージすれば分かると思いますが、平日(週5日間)にコップ1杯(200mL)分のオレンジジュースの摂取カロリーを抑えることを正確に測定するのは難しいと思いますが、平日(週5日間)に30分ランニングをしているかどうかは、概ね正確に測定できるのかなと思います。

つまり食事制限は効果は出やすいが、かなりぼんやりとした内容になってしまうということを頭に入れて取り組んだほうが良いのかなと感じました。

さいごに

今回紹介した論文は運動系の学術誌だったこともあり運動の方にのみ量反応性が認められたことを強調して、運動が良いとアピールしている印象がありました。

でも、この記事で紹介した通り、この論文の結果を見ても基本的には食事制限のほうがキレイに効果が出そうなのです。また量反応性があるとはいえ、運動によって消費カロリーを増やすことは、食事制限で摂取カロリーを抑えるよりも、だいぶ負担が大きいことをまずは覚えておくと良いのかなと思います。

僕のブログでは、この他にも減量に関する記事を紹介しているので、良かったら他の記事も読んでみてください

参考

  1. 日本人のヤセ菌はブラウティアかもしれない [URL] https://ponlab.info/archives/1746
  2. Recchia et al. Dose-response effects of exercise and caloric restriction on visceral adiposity in overweight and obese adults: a systematic review and meta-analysis of randomized controlled trials. Br J Sports Med 2023, 57, 1035-1041 [LINK]
  3. 栄養系研究者の視点でダイエットを徹底解説した記事 [URL] https://ponlab.info/archives/1732
  • この記事を書いた人

Pon

食品会社勤務の元企業研究員(PhD)。食の機能性研究、腸内細菌の研究をメインにしていました。興味関心は公衆衛生、疫学、食品の機能性。好きな食べ物はカレーと杏仁豆腐。コテンラジオ、キングダムが好きです。統計の専門家に憧れます。興味のある研究について、Xやブログで発信しています。

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