健康

もうすぐ新型コロナワクチン始まる~感染症と集団免疫

2021-02-02

初めに

こんにちは。この記事に興味を持ってくださりありがとうございます。新型コロナウィルスのワクチンの接種がまもなく始まろうとしています。ワクチン接種の病院が決まったり、接種する方の優先順位が報道されたりと多くの方が関心を持っているのではないかと思います。

この記事では、感染症の疫学と集団免疫ということで、疫学の教科書的な内容をまとめたいと思います。下記の書籍にまとまっていた内容を参考に記事を書いていますので、良かったら読んでください(あとwikipediaも結構参照しています)。

この記事のポイント

  • 人類が克服してきた感染症には天然痘やポリオなどがあります。
  • 感染症を収束させるためには、集団免疫が重要なポイントとなります。
  • 収束、拡大の指標に基本再生産数があります。
Pon(ブロガー/会社員/社会人大学院生)
この記事を書いているわたしは、食品会社で機能性の研究などをしている企業研究員ですが、社会人大学院生として大学で疫学(病気の原因を調べる学問)を学んでいる学生でもあります(詳しいプロフィールはこちら)。

感染症疫学の素晴らしい功績

感染症と聞いてどのような病気を思い浮かべますか?感染症はウイルスや細菌などの病原体が感染を引き起こす病気と言うことはイメージの通りだと思います。

これまで人類は沢山の感染症と闘ってきました。ここでは人類が克服してきた感染症の歴史を振り返ってみたいと思います。

コレラ

現代の疫学の基礎となったとも言われるのが、ロンドンで起こったコレラの集団発生です。コレラは糞便によってコレラ菌が広がる感染症でしたが、当時は空気感染していると考えられていました。

しかし、ジョン・スノウは、コレラの流行が水の汚染であると考え、ロンドンにあった水道会社のうち、汚染されたポンプを止めることで流行を止めたのです。

スノウのこの功績の素晴らしさは、いくつもポイントがありますが、主なものとして、

  • ロンドンの2つの水道会社のデータを利用した30万人規模の、美しい研究デザインの自然実験が行われたこと。
  • 当時の仮説(空気感染)とは異なる原因だったにもかかわらず、流行を止めたこと。
  • コレラ菌という微生物が発見される前、つまり原因が分からないのに、流行を止めたこと。

などがあげられます。原因が分かっていなくても、流行を止めることはできるというのは、疫学の力ですね。

天然痘

天然痘は天然痘ウィルスを病原体とする感染症です。症状は全身に膿胞を生じ、その致死率が20~50%と非常に高い感染症です。天然痘も古くから知られている疫病であり、ピラミッドのエジプト王(ラムセス5世)のミイラには天然痘の跡がみつかっているそうです。

天然痘は人から人への感染以外が認められないこと、症状から発見が容易なことなどから、感染者の徹底的な隔離と、ワクチンを活用した撲滅キャンペーンによって、ヒトに感染する感染症で唯一完全に撲滅された感染症です。

完全に撲滅ってすごいですよね。そんなことあるんだ?!と思いました。

ポリオ

ポリオ(急性灰白髄炎)はポリオウィルスを病原体とする感染症です。症状は急性灰白髄炎という名前からも想像できますが、麻痺性の症状を引き起こします。特に小児で発症することが多いため、せき髄性小児まひと呼ばれることもあります。

1960年頃からワクチン接種が開始され、日本では1980年に根絶され、世界からもパキスタン、アフガニスタンを除くすべての国から根絶宣言がされており、根絶が目前とされています。

このように、人類が根絶させた感染症の記録は、疫学と公衆衛生によって達成された偉大な功績です。しかし、その一方で撲滅に向けた取り組みを進めていながらも困難を極めている疾病も数多くあり、その例としては、蚊を媒体としていることで感染経路が複雑化されるマラリアなどがあります。

しかし、こういった歴史からも分かるように、隔離政策とワクチン政策を適切に組み合わせることで感染症を撲滅させることが可能だというのは大きな希望だと思います。

次に感染症の伝播と人同士の接触、そしてワクチンがもたらす集団免疫について紹介したいと思います。

流行には直接伝播と間接伝播がある

感染症が流行するメカニズムには、2つのタイプがあります。それは人から人に直接感染する直接伝播と人以外の動物がウイルスや細菌を保有し、媒介動物によって感染が広がる間接伝播と呼ばれるものです。間接伝播には蚊が媒介しているマラリアなどがあります。

人から人に直接感染する感染症を伝染性、あるいは接触感染性などと呼ばれます。例としては、飛沫感染で知られるインフルエンザやコロナウイルス、性感染のクラミジアやHIVそして近年、議論になっている子宮頸がんのリスク因子であるヒトパピローマウイルス(HPV)などがあります。

コロナウイルスが様々な動物によって媒介されたり、インフルエンザが家畜で広がったりすることからも分かるように、直接伝播と間接伝播の両方が起こる感染症もあります。これが一番、対策も複雑となります。

予防接種は未接種者も保護する!集団免疫の大切さ

集団免疫という言葉は聞いたことがある方が多いと思います。これは、ある感染症に対して免疫を持っている人が増えることで、免疫を持っていない人も間接的に守られる現象を言います。

考えてみると、当たり前ではありますが、ワクチンを接種することで、自分自身が感染するリスクを下げることになりますが、それは自分から他者へ感染させるリスクを下げることにもなりますので、間接的に自分の周りの人に対してもワクチンの影響は大きいのです。

多くの人が免疫を持っている集団では人から人に伝播する集団感染も起こりにくく、感染症を収束させることができます。集団免疫をつける方法としては、ワクチンキャンペーンなどが一般的ではありますが、ウィルスは感染することで免疫を獲得し、集団免疫をつけるというスウェーデンの大胆なコロナ対策が報じられたりもしました。

集団免疫の重要な点は、免疫を持たない人も間接的に守られることにあります。例えばアナフィラキシーなどのために予防接種を受けられない人でも、周りの多くの人がワクチンを接種することで、集団免疫によって感染症から守ることができるのです。

ちなみに私はあまり良い言葉ではないなと感じていますが、ワクチンなどを摂取せずに、集団免疫に守られる人を公衆衛生キャンペーンにタダ乗りしているということで、「フリーライダー」と呼ぶそうです。

逆に予防接種キャンペーンなどを行っても、接種率が低い場合には集団免疫が起こらず感染症が収束しないということもあります。これは今の日本でも心配される最大の懸念事項の一つではないかと思います。

では感染症が収束するというのはどういうことなのでしょうか?それは、基本性生産数という指標を見ることで知ることができます。

感染拡大か収束か基本再生産数とは

基本再生産数というのは、感染者1人あたり何人に感染させたかという値です。平均して1.0よりも高い場合には、感染は拡大していることを表しますし、1.0よりも低い場合には収束していると言えます。

一般的にはこの基本再生産数と感染してから次の感染が起こるまでの1サイクルの時間から感染者数の予測モデルは立てられます。1サイクルをt日、基本再生産数をR0とすると、t日後の感染者の数はR0倍となっていることになります。(感染した人は免疫を獲得していることを考慮すると、もっと複雑な計算になるので、ここでは考慮していません。)

2t日後の感染者はR0となり、感染症の拡大(収束)の速度がいかに速いかを物語っています。基本再生産数はコロナのニュースでもたびたび報道されています。この基本再正解数を見ることで拡大に向かっているのか、収束に向かっているのか、そして、だいたい1週間後にはどのくらいになっていたらいい感じなのだろうか?などの気づきが出てきます

ズバリ言ってしまうと、基本再生産数は集団免疫の有無を示す指標となるとても有用な数値と言えます。

まとめ

ここまで読んで下さりありがとうございました。集団免疫はコロナの収束のためには非常に重要ですね。

最後に、今もポリオ撲滅と闘い続けている方の記事を1つ紹介したいと思います。現在、世界で残り2ヶ国となっているポリオ保有国の一つパキスタンで活動を続けているメモン氏の記事です(LINK)。

“ワクチン接種を躊躇する人がいることや、誤った情報が流れていることが、パキスタンでのポリオ根絶活動において今なお残る課題であると改めて指摘します。
「ソーシャルメディア上で拡散されている誤った情報が、ポリオワクチンに対する恐怖心を生み出しています。安全性への懸念が依然として根強く残っている部族地帯もあり、説明責任も場所によっては十分に果たされていません」と説明します。”
ーポリオ根絶:完遂への決意|End Polioよりー

ポリオ撲滅のための肝である、ワクチンキャンペーンが誤情報によって妨げているというのは私は想像していませんでした。途上国はワクチンを打ちたい、だけど、社会情勢によって打つことができない人が大勢いるということかと思っていましたが、それ以上の課題として、誤情報による接種拒否が上げられていたことにはショックを受けました。

日本でも、子宮頸がんのリスクを下げるHPVワクチンが、ネガティブな情報に推され、産婦人科学会からも接種が強く推奨されるにもかかわらず国からの推奨接種となっていません(中1~高1は定期接種となり公費で摂取可能)。

公費でがんのワクチンが打てるってものすごいことだと思うのですが、科学的ではない情報を元に接種しないという選択をしていたらとても残念なことです。

これから開始されるであろう新型コロナウィルスのワクチンについては、免疫系疾患や重度のアレルギー疾患を患っている方に対するワクチン接種には慎重な判断が必要だと思いますが、そういった方々がちゃんと感染から守られるためにも、できるだけ多くの方がワクチンを接種し、集団免疫をつけて、コロナの収束に向かってほしいと願っています

それでは。

参考文献

ポリオ根絶:完遂への決意|End Polio LINK

子宮頸がんとHPVワクチンに関する正しい理解のために|日本産婦人科学会 LINK

  • この記事を書いた人

Pon

食品会社勤務の元企業研究員(PhD)。食の機能性研究、腸内細菌の研究をメインにしていました。興味関心は公衆衛生、疫学、食品の機能性。好きな食べ物はカレーと杏仁豆腐。コテンラジオ、キングダムが好きです。統計の専門家に憧れます。興味のある研究について、Xやブログで発信しています。

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