こんにちは。この記事に興味を持ってくださりありがとうございます。皆さんは日本人が健康のために食べている食品の中で、もっともマーケットが大きいのがヨーグルトだということはご存じですか?
ヨーグルトと言えば、腸内環境を改善するというイメージだと思います。でも、実は、ヨーグルトには腸内環境だけでなく、口腔内の環境を改善し、歯周病を予防する効果があるとも言われています。
この記事では、ヨーグルトと口腔内細菌の関係を調べた日本人を対象とした研究を紹介します。
この記事のポイント
- ヨーグルトを多く摂取している人は歯周病になりにくいです。
- 乳製品のカルシウムや有用な細菌が働いた可能性があります。
- ヨーグルトを食べる人は他の食生活も良いため、他の食生活の影響があるかもしれません。
Pon(ブロガー・食品開発・疫学研究)
この記事を書いているPonは、食品メーカーの研究職で、大学で公衆衛生を学んでいます。食品の機能性研究を中心に、健康に関する情報をBlogやTwitterで発信しています。
口腔内細菌と歯周病
歯周病は歯周ポケットなどに歯周病菌が凝集し、歯周組織を溶かしていく病気です。つまり歯周病は口腔内細菌によって進行するので、歯周病の人は口腔内細菌が健康な人と全く異なります。
歯周病の人の口腔内細菌叢については別の記事でまとめていますので、良かったら読んで下さい(LINK)。
さて、今回はこの歯周病予防の話になりますが、ヨーグルトが歯周病を予防することが報告されています。しかも、日本を代表する久山町(ひさやまちょう)コホート研究の中で行われた研究のため、とても質の高い研究になります。
ヨーグルトは日本で最もマーケットが大きい健康食品と言われていて、皆さん大好きです。そんなヨーグルトの一番よく知られた機能は腸内環境の改善です。もし、ヨーグルトが腸内環境を改善しているだけでなく、口腔内細菌の構成を変えたり、歯周病を予防する機能があったら面白いですよね。
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参考歯周病患者と健康な歯の人の口腔内細菌は全く組成が異なる衝撃的結果
歯周病は歯周病菌が凝集し、歯石となって歯ぐきに炎症を起こしたり、歯の根元となる歯周組織を溶かします。初めは歯ぐきの腫れや出血が起こり、やがて歯が抜け落ちてしまう非常に怖い「病気」です!この記事では歯周病と健康な人の口腔内細菌の違いを、欧州の研究から紹介したいと思います。
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ヨーグルト高摂取は27%歯周病のリスクが下がる
それでは、研究を紹介していきたいと思います。この研究は福岡県の久山町の住民を対象とした追跡研究の中で行われています。
研究参加者の健診などに加え、口腔内細菌などのデータも取っていて、この論文では主に食事データの中のヨーグルトの摂取量と歯周病の関係を調べています。
ヨーグルトの摂取量はアンケートで回答してもらい、摂取量で4つに分け、少ないグループから、Q1、Q2、Q3、Q4としています。実際の摂取量はQ1から、0 g、0.1~29 g、29~80 g、80 g以上となっています。
そして、Q1からQ4のグループに分けて歯周病などの比較していますが、イメージの通り、ヨーグルトをたくさん食べている人は、女性が多く、喫煙者や糖尿病患者が少ないなど、総じて健康そうなグループになっています。(下記の表を参照)
Q1(0 g) | Q2(0.1-29 g) | Q3(29-80 g) | Q4(80 g-) | |
人数, N | 395 | 314 | 389 | 371 |
女性, % | 34 | 56 | 68 | 65 |
喫煙者, % | 29 | 17 | 9 | 7 |
糖尿病, % | 14 | 16 | 13 | 13 |
BMI, kg/m2 | 23.4 | 23.3 | 23.0 | 23.0 |
そして、ヨーグルトの摂取量と歯周病のリスクは、摂取していない人を1としたときに、Q2で0.85、Q3およびQ4で0.73となり、ヨーグルトの摂取量が中央値よりも高い人で歯周病が27%も予防できるという結果になっています(下記のグラフを参照)。
しかも、この結果は年齢、性別だけでなく、糖尿病のような歯周病との関連が知られている疾病や歯磨きの回数、虫歯などの口腔内環境の影響を調整した(取り除いた)後の結果なので、かなり強い関連があると考えてよいと思います。
口腔内細菌のタイプで歯周病か歯周病ではないかを分けると、ヨーグルトの摂取量が少ないほど歯周病タイプの口腔内細菌を持っている人が高いという結果で、歯科健診のデータと口腔内細菌の再現性もあったようです。
どうしてヨーグルトが歯周病を予防したの?
では、このヨーグルトが歯周病を予防するというメカニズムはどのようなことが効いているのでしょうか?
ヨーグルトは発酵食品なので、体に良い細菌が働いて、歯周病菌を減少させたという可能性も否定はできません。ですが、実はヨーグルトに限らず、乳製品は歯周病を予防することが知られており、その理由として、乳製品に含まれるカルシウムが歯周組織を丈夫にしてくれていると考えられます。
また、研究紹介の中でも書いた通り、ヨーグルトを食べている人がそもそも健康ということもあります。特に論文の中で強調されていたのが、ヨーグルトを食べている人は、食生活全体として、健康な可能性があります。
ですので、ヨーグルトを食べている人の食生活全体が歯周病に予防的に働いたというメカニズムもあるのではないかと考えられそうです。
ヨーグルトに含まれるプロバイオティクスが働いていると面白いなあと思うのですが、論文の考察の中ではそこまで言及はしていなかったので、実際にはヨーグルトを食べても、ヨーグルト中の細菌が、口腔内に定着するのは難しいのかもしれません。
下記のツイートで論文を紹介しているように、腸内細菌ではヨーグルトのプロバイオティクスがほとんど定着することなく、24時間以内に減少することが分かっているので、口腔内細菌でも、ヨーグルト由来の細菌が直接定着するのは難しいのかもしれません。
さいごに
ここまで読んで下さり、ありがとうございました。今回の記事のポイントは、
- ヨーグルトを多く摂取している人は歯周病になりにくいです。
- 乳製品のカルシウムや有用な細菌が働いた可能性があります。
- ヨーグルトを食べる人は他の食生活も良いため、他の食生活の影響があるかもしれません。
と言うことで、メカニズムについては正直なところヨーグルトのプロバイオティクスが効いているのかは分かりません。
そもそも、ヨーグルトが効いているのではなく、他の食生活の影響があった可能性もあります。
これを聞くと、ちょっと残念な感じもしました。でも、ヨーグルトをたくさん食べている人は歯周病になりにくいと言うことは確かで、とても興味深いことでした。
口腔内環境を改善する細菌としては、ロイテリ菌という乳酸菌が、ロイテリンという抗菌物質を産生し、歯周病菌の繁殖を抑え、歯周病に予防的に働くことが報告されています。
もし、口腔内細菌という文脈でヨーグルトを考えるのであれば、オハヨー乳業のロイテリがエビデンスが取れているのでおすすめです。
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良かったら試してください。それでは、また別の記事でお会いしましょう。
参考文献
- Ma, J. et al. (2022). Yogurt product intake and reduction of tooth loss risk in a Japanese community. Journal of clinical periodontology, 10.1111/jcpe.13593. https://doi.org/10.1111/jcpe.13593
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