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日本人のヤセ菌はブラウティアかもしれない

2023-11-07

はじめに

こんにちは、Ponです。僕は企業で食品の機能性研究や腸内環境の研究を行い、大学で社会人博士を取得した元研究者です。現在は、食品企業で働きながら、健康に関する最新の研究情報などをXやブログで発信しています。最近はダイエットに関する論文を特に気にして読んでいるので、宜しければ他の記事も読んでみて下さい。

今回、紹介する記事は腸内細菌に関する研究記事です。日本で腸内細菌研究のインフルエンサーの一人、医薬基盤・健康・栄養研究所の國澤先生の研究グループの細見先生の発表された論文で、日本人の抗肥満効果のある腸内細菌ブラウティアに関する研究です。

栄養系研究者の視点でダイエットを徹底解説した記事

みなさまは、ダイエットに興味はありますか?ダイエットに関する情報は、非常に沢山あり、何が正しくて、何が間違っているのか良く分からない方が多いのではないでしょうか?この記事では、食品に関する機能性研究を続けてきた知識を踏まえ、ダイエットの中で特に重要な食事管理について、分かりやすく紹介したいと思います。

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日本人特有のヤセ菌はブラウティアだった

まず、皆さんは腸内細菌によって肥満が引き起こされていると聞いたら、どのくらい信じますか?僕は、腸内細菌というのは食生活をはじめとする様々な生活習慣によって変化が起こる通知表みたいなものだと思っています。

ですので、腸内細菌が様々な生活習慣病と関連があるのは当然だと思っています。その一方で、腸内細菌だけ変えれば良いのではなく、腸内細菌を形成した原因となる食習慣、生活習慣を見直すことが必要だと思っています。

とはいえ、やっぱり肥満と関連があった腸内細菌と聞くと興味津々になります。

今回、紹介する論文[1]で肥満との関連が示された腸内細菌はブラウティアという細菌です。この細菌は炭水化物を分解して短鎖脂肪酸を産生することでも知られている有用な細菌の一つですが、もう一つ大きな特徴として、海外と比較して日本人での存在量が高い日本人特徴菌の一つなのです。

これは、非常に興味深いですよね。もしかしたら、日本人の腸と健康について、研究が大きく進展するきっかけにもなるかもしれないという、期待の大きな研究です。

ブラウティアが高いほど肥満、糖尿病が発症リスクが低い

それではさっそく、具体的にこの研究の紹介に入りたいと思いますが、この研究では5000人以上の腸内細菌の測定結果を含むデータベースから、糖尿病と肥満に関連のある腸内細菌をスクリーニングしています。

そして、その中で最も糖尿病との関連が高く、肥満とも関連が認められたブラウティアを見つけています。

ブチリシコッカス、フィーカリバクチバクテリウム、ビフィズス菌なども期待

この大規模データの中で肥満と関連があった腸内細菌としてはブラウティアの他にもブチリシコッカス、フィーカリバクテリウム、ビフィズス菌などがありました。

ブラウティア、ブチリシコッカス、フィーカリバクテリウムの3つの細菌は糖尿病に対しても、肥満に対しても関連が認められ、その存在量が多いほど糖尿病、肥満の割合が低い細菌でした。

また、ビフィズス菌は糖尿病との関連はありませんでしたが、肥満との関連が最も高い細菌でした。これらの細菌に共通する特徴は、炭水化物をエサとして短鎖脂肪酸と呼ばれる腸内細菌が産生する最も重要な代謝産物を作ることです。短鎖脂肪酸は生活習慣病の予防効果などが知られています。

ブラウティアは日本人に特徴的な腸内細菌

では、なぜこれらの細菌の中でブラウティアに先生方が着目したのでしょうか?はっきりとした理由は分かりませんが、大きな理由として考えられるのはブラウティアが日本人の特徴的な腸内細菌だということが、日本を含めた12カ国の腸内細菌の比較[2]で報告されていたためだと思います。

この研究[2]では、日本人の腸内細菌の特徴としてビフィズス菌、ブラウティア菌が多く、炭水化物を代謝する機能が優れていることを報告していました。そして、日本人の平均寿命の長さ、低い肥満率などとの関与を解明する鍵として期待されていたのですが、まさにそれが今回の論文で美しく証明されたようで、とても興味深かったです。

ブラウティアが酢酸を産生し、代謝産物のリレーが起こる

さて、最後にこのブラウティアは果たして肥満を予防するのか、それとも肥満の結果、ブラウティアが減少するのか、すなわち因果関係について書きたいと思います。

個人的には、原因でもあり、結果でもあるため、正のスパイラルを起こしているというのがリアルな実態だと思っています。しかし、この論文[1]では、動物実験を用いて因果関係まで丁寧に調べられています。具体的には、マウスにブラウティア菌を与えて肥満を予防したというデータが掲載されています。つまりこの結果から考えると、ブラウティアによって肥満が予防されるということが言えます。

さらに、ブラウティアが肥満を予防するメカニズムには、ブラウティアが短鎖脂肪酸の一つである酢酸を産生し、この酢酸を別の細菌(ブチリシコッカス)が利用して酪酸を産生することではないかと推定しています。

わたしは、このデータが特に面白いなと思いました!

確かにブラウティアが有用な細菌とは言え、一つの細菌だけで働くのではなく、共生する他の細菌の影響も含めて考えることはとても重要だと思います。

最後に

ここまで読んでくださりありがとうございます。日本人の特徴菌であるブラウティアに肥満や糖尿病予防効果があるかもしれないというのはとても興味深い話でしたね。

國澤先生の研究グループは沢山の食品メーカーと共同研究をされているので今後はどんな生活習慣、食習慣によってブラウティアが増加するのか?といった研究も報告されていくかもしれません。

一方で、今回の研究は日本人を対象とした研究であり、日本人以外では別の細菌が痩せ菌として報告されていたりします。

例えば、先日、カズレーサーさんのテレビ番組で腸内細菌の話が出た時のクリステンセネラは英国の双子研究で発見された有名な痩せ菌ですが[3]、日本人では割とマイナーな細菌だと思います。

このように、腸内細菌は食文化の異なる集団では特徴も大きく変わるので、それが研究の限界点でもあり、研究のユニーク性でもあると思います。

今後の研究がとても楽しみですね。
ここまで読んでくださり、ありがとうございました。

参考文献

  1. Hosomi et al. 2022, Oral administration of Baltic wexlerae ameliorates obesity and type 2 diabetes via metabolic remodeling of the gut microbiota. Nature Communications, 13, 4477 (LINK)
  2. Nishijima et al. 2016, The gut microbiome of healthy Japanese and its microbial and functional uniqueness. DNA Research, 23, 125-133 (LINK)
  3. Goodrich et al. 2014, Human genetics shape the gut microbiome. Cell, 159, 789-99 (LINK)
  • この記事を書いた人

Pon

食品会社勤務の元企業研究員(PhD)。食の機能性研究、腸内細菌の研究をメインにしていました。興味関心は公衆衛生、疫学、食品の機能性。好きな食べ物はカレーと杏仁豆腐。コテンラジオ、キングダムが好きです。統計の専門家に憧れます。興味のある研究について、Xやブログで発信しています。

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