健康 食事

コーヒー、朝の1杯は最高だけど、からだに良いのか?悪いのか?

2020-05-10

こんにちは、この記事に興味を持ってくださりありがとうございます。

みなさまはコーヒーは好きですか?コーヒーというとカフェインが入っているので刺激が強いとか、なんとなくあまり健康に良くない印象がありますよね。

で、その一方で、コーヒーのメーカーは結構、コーヒーの健康機能について、ごりごりに広報活動をしている印象もあります。

コーヒーの機能性と言えば、良く知られているのは糖尿病予防で、わたし自身はあまりコーヒーに対して悪いイメージは持っていませんが、例えば妊婦さんで、「コーヒーはカフェインが入っているので飲まない!」と言いながら、カフェインが含まれる緑茶や紅茶を平気で飲んでいる人が知人にいて、コーヒーって過剰に悪者にされるなあと感じたのを思い出します。

ちなみにわたしはコーヒーは朝に1杯飲み、仕事中のマイボトルにいれているのもコーヒーなので、平均すると大きめのマグカップ2杯分くらい毎日飲んでいます。

さて、今回の記事では、コーヒーの機能性や有害事象などについて、報告されている内容を共有させていただきたいと思います。

カフェインの有害性や摂取目安について

コーヒーのイラスト「コーヒーメーカーとコーヒーカップ」

はじめにカフェインについて、まとめておきたいと思います。まずカフェインは眠気を覚ますなど、興奮作用があることはよくご存じだと思いますが、メカニズムはご存じでしょうか?

カフェインが神経を興奮させる作用というのは、神経をおちつかせるアデノシンという化学物質と構造が似ているため、体がアデノシンと間違ってカフェインを吸収してしまい、アデノシンが吸収されなくなるというメカニズムです。

結構シンプルで分かりやすいメカニズムですよね。

ではこのカフェインの過剰摂取によって、どのようなことが起きるのでしょうか?

・中枢神経系では、めまい、心拍数の増加、興奮、不安、震え、不眠などが起きます。
・消化器系では、下痢、吐き気、嘔吐などが起きます。
・長期的なリスクでは高血圧のリスクが上がります。
・また、妊婦が過剰摂取することで、乳児の低体重のリスクが上がる可能性があります。
・2015年にはエナジードリンクの過剰摂取によるカフェイン中毒死したという報告があります。
ー農林水産省HPより抜粋

わりと書いてあることは刺激的でびっくりしますね。

これだけ読むとカフェイン、やべ~んじゃないか?とどうしても思ってしまいます。

じゃあ、どのくらいの量が適切なの?と考えると思いますが、欧米やWHOなどのガイドラインでは妊婦で200 mg、健康な大人で400 mg以上の摂取は避けるように、というのが目安とされているようです。

カフェイン400 mgを基準に考えた時の摂取目安量は下記のようになります。

飲み物カフェイン量
(100 mLあたり)
1日の目安量
エナジードリンク
(モンスターエナジー)
401000 mL以内
エナジードリンク
(レッドブル)
321250 mL以内
コーヒー
(インスタント)
80500 mL以内
コーヒー
(ドリップ)
60600 mL以内
お茶
(緑茶、ほうじ茶など)
202000 mL以内

上記の目安量を守るというのは大切でしょう。

エナジードリンクでカフェインが多いものは100 mLあたり300 mg含まれるものもあるそうなので、商品によって全然異なります。よく飲まれる方は、カフェイン量を確認しておくことは大切かもしれません。

また、このデータだけ見ると、たしかにコーヒーはカフェインの過剰摂取につながる可能性があるので、気をつけたほうが良いかもしれません。

わたしはざっくり計算では、1日のカフェイン量は400 mgを超えているような気がしてぞっとしました。

カフェインの摂取は問題解決力を向上させる?

勉強のイラスト「テスト勉強・女の子」

それでは、ここからカフェインのメリットなどについて紹介したいと思いますが、最初にカフェインが集中力などに影響するかを検証した研究を紹介したいと思います。

紹介する論文は、米国で行われた研究で、カフェインの摂取による作業効率の変化を評価した論文です。

Zabelina DL, Silvia PJ. Percolating ideas: The effects of caffeine on creative thinking and problem solving. Conscious Cogn. 2020 Mar;79:102899

この論文では、カフェイン200 mg含んだカプセルを使って試験をしているので、必ずしも飲み物のコーヒーではありませんが、コーヒーに換算すると300 mLくらいの量を摂取していることになります。

この論文では、創造的な能力(答えが複数ある問題を回答する)と問題解決能力(答えが1つしかない問題を回答する)の2つの能力を評価しているのですが、その総合評価が下記の通りです。

問題解決能力カフェイン有カフェイン無
洞察力19点16点
分析力10点9点
総合点29点 *25点
(統計的には総合点のみ差が認められました)

どうでしょうか。この結果を見ると問題解決能力については、カフェインのように覚醒作用があることが重要なのかもしれません。

また、洞察力自体は統計的な差がなかったのですが、洞察力の問題の反応速度もカフェイン有が速かったそうです。一方で創造的な能力を評価するテストでは、全ての項目で差が見られませんでした。

この研究結果から分かることは、作業によってはカフェインを摂取することが理にかなっていると言えそうです。

カフェインを摂取することによって評価が下がった項目はなかったので、トイレが近くなることさえ気にならなければ、テスト20分くらい前にコーヒーを飲むと、もしかしたらテストで力が発揮しやすいかもしれません。

コーヒーは糖尿病や心疾患を予防し、死亡のリスクを下げる

コーヒーで一服している人のイラスト(男性会社員・タンブラー)

次にコーヒーが全ての死亡のリスクを下げるという、国立がん研究センターが行った下記の研究を紹介したいと思います。

がん研究センターの論文はどれも質が高く、そして、日本人を対象とした研究のため、とても役立つ情報が多くあります。

Saito E, Inoue M, Sawada N, Shimazu T, Yamaji T, Iwasaki M, Sasazuki S, Noda M, Iso H, Tsugane S.
Association of coffee intake with total and cause-specific mortality in a Japanese population: the Japan Public Health Center-based Prospective Study.
Am J Clin Nutr. 2015 May;101(5):1029-37.

この研究では、コーヒーを飲む量を1杯未満、1~2杯、3~4杯、5杯以上という形でグループ分けをして、全ての死亡、そして、がんや心疾患、脳血管疾患などによる死亡のリスクを比較しています。

下記のグラフは全ての死亡と心血管疾患(心疾患)による死亡の2つの結果を、コーヒーを飲まない人を100としたときのリスクを示しています。

結果から見て分かるように、3~4杯飲んでいる人が最もリスクが低いU字型の分布になっています。

ちなみに、コーヒーはこの他にも脳血管疾患、呼吸器疾患による死亡のリスクも下げました

これらの結果は上記の農林水産省が公表しているカフェインの摂取量は400 mg未満が望ましいという発表と矛盾があると思いませんか?わたしが考えている理由は大きく2つあります。

① カフェインのリスクを上回る他の物質(ポリフェノールなど)の効果があった。
② 分散して飲んでいればカフェインのリスクが下がるのかもしれない。

1つめのカフェインのリスクを上回る他の物質というのは、代表的な物質としてはクロロゲン酸というポリフェノールです。

このクロロゲン酸は糖尿病の予防効果が知られています。糖尿病は心血管疾患などのリスクを1.5~2倍ほど上げることが知られていますので、このエビデンスともぴったり説明がつきます。

2つめは、農林水産省の発表内容は有害事象に関する情報です。

カフェイン中毒による死亡の報告があったため、リスクについては過大評価で書かれているかと思います

中毒死というのはカフェインのカプセルを1度に大量に飲むなど、短い時間で極端な量を摂取した場合に起こると考えたほうが自然だと思います。

あまり知られていないと思いますが、滋養強壮で有名なマカなどのサプリメントを悪ふざけで大量摂取して無くなるといったことも、珍しい話ではないようです。

そういったこともあるので、一度に大量に飲むのでなく、ある程度分散して飲むのであれば、コーヒーは4杯くらいまでなら問題ないのかなと思いました。ただ、5杯以上飲むグループではリスクが上がっているので、そうは言っても飲みすぎによるリスクというのはあるということは認識した方が良いのかなと思います。

まとめ

チルドカップコーヒーのイラスト

今回の記事も比較的長文になりましたが、クロロゲン酸などについては、この記事では、あまり言及する余裕がありませんでした。

ですが、追加の情報として、飲料という形態について書かせてください。

別の記事で機能性成分ではなく、食品として考えることが大事ということを書かせていただきました。

実はわたしはコーヒーについても同じことがいえると思っています。というのは、飲料という形態は、機能性成分を血中に吸収するのにとても効率がよいという利点があると考えています。

そして、クロロゲン酸やカフェインは水に良く溶ける物質ですので、飲料として摂取するというのが合理的だと思っています。このように「機能性成分×食品の構造」という相乗効果も考えられるのではないかなと思っています。

長くなりましたが、今回の記事をまとめると下記のようにまります。

・カフェインは1日400 mg以上は中毒症に注意
・カフェインによって問題解決能力があがる!(とくに洞察力)
・コーヒーは糖尿病、心筋梗塞などの予防につながり、死亡のリスクを下げる。

以上となります。コーヒーを飲まれる方も、苦手という方にも、何かしら参考になることがあればうれしいです。さいごまで読んで頂きありがとうございました。

  • この記事を書いた人

Pon

食品会社勤務の元企業研究員(PhD)。食の機能性研究、腸内細菌の研究をメインにしていました。興味関心は公衆衛生、疫学、食品の機能性。好きな食べ物はカレーと杏仁豆腐。コテンラジオ、キングダムが好きです。統計の専門家に憧れます。興味のある研究について、Xやブログで発信しています。

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