はじめに
こんにちは。この記事に興味を持ってくださりありがとうございます。先日、過敏性腸症候群(IBS)の治療ガイドラインが発表されました。わたしにとっての勉強も含め、このガイドラインのポイントをまとめた記事を紹介してきました。
過敏性腸症候群(IBS)治療ガイドラインの記事 ・過敏性腸症候群治療ガイドライン:低FODMAP、グルテンフリーについて ・【英国消化器病学会】過敏性腸症候群(IBS)の対応に関するガイドライン要約 |
今回の記事では、食事療法の中のポイントの一つ、プロバイオティクスについて紹介します。プロバイオティクスは体に有益な細菌を含んだ食品のことを言います。発酵食品など、そこまでお金がかからないものもありますが、高価サプリメントもあり、迷いますよね。
プロバイオティクスは健康イメージが強いと思いますが、過敏性腸症候群(IBS)に対しては、
- プロバイオティクスは効果があるの?
- サプリメントを買ったほうがいいの?
- プロバイオティクスのサプリを買うならどれがいいの?
そんな疑問がどうしても出てくると思います。この記事では、そんな疑問を持っている方に向けて書きたいと思います。
Pon(ブロガー)
食品会社勤務。社会人博士課程の大学院生。腸内細菌や食品の機能性研究、公衆衛生などに興味があります。Twitterはこちら。気になった論文を共有したりしています。
プロバイオティクスは発酵食品など体に良い細菌のこと
はじめに、「プロバイオティクス」って名前は聞いたことあるけれど、あんまり良く分からない!と言う人のために簡単に説明したいと思います。
プロバイオティクスは、体に有用な細菌のことです。多くの場合には、ビフィズス菌、乳酸菌などのような腸内細菌や納豆、ヨーグルトなどの発酵食品を指します。
プロバイオティクスという名前の菌がいるわけではなく、体に良い働きをする細菌の総称になります。
また、名前が似ている言葉で「プレバイオティクス」という言葉もあります。これは、消化されにくく、腸内細菌のエサとなる食品で食物繊維などです。
プロバイオティクスもプレバイオティクスも腸内環境改善のためにはとても大事ですが、過敏性腸症候群の人はプレバイオティクスは注意が必要な食材です。なぜなら、腸内細菌のエサとなり、発酵が起こることで膨満感などを感じる場合があるからです。
過敏性腸症候群の方が、プレバイオティクスをどのように摂取したらよいか?については、下記の記事などを参考にするとよいと思います。
プロバイオティクスの過敏性腸症候群(IBS)改善効果は全般的にあり!
それでは次にこの記事のメインである、プロバイオティクスと過敏性腸症候群の関係を見たいと思います。上の図はその結果になりますが、メタアナリシスといって、複数論文の結果を統合して、一つの結果をまとめた研究です。
リスク比1の値が縦棒になっていて、黒いひし形がこの縦棒よりも完全に左側にある場合には効果ありです。結果を見ると、腸内細菌カクテル、Lactobacillus、Bifidobacterium、Escherichia、Streptococcus、Clostridiumは完全に1の線よりも左側の効果です。つまり、効果ありです。Saccharomycesは効果ありっぽいですが、1をまたいでいるので、統計的には有意差なしです。
全体を見ると、プロバイオティクスは細菌の種類に関わらず効果がありそうですが、やっぱり乳酸菌(Lactobacillus)やビフィズス菌(Bifidobacterium)は研究数も多く、エビデンスもしっかりしている印象なので、わたしが選ぶとしたらこのどちらかだと思いますね。
あと、カクテルというのは、色々な腸内細菌を混ぜてカプセルなどにしたものです。カクテルもエビデンスが多そうですが、細菌の組み合わせは研究によって違うはずなので、どのくらい信じてよいのか分かりません。
【結論】プロバイオティクスの摂取は推奨ただし研究の質は低い
ここまで読んで下さりありがとうございました。結論から言うと、プロバイオティクスは取らないよりは取った方がよさそうですし、結果のキレも良いと思います。
ですが、英国の過敏性腸症候群の治療ガイドラインではエビデンスの質が低いという問題点が指摘されています。これは、プロバイオティクスの研究自体がメーカーの研究と言うことが多いためだと思われます。メーカーが資金提供した研究であれば、ネガティブな結果が出た場合にはあまり論文としては発表されませんよね。
つまり、プロバイオティクスが大好きな人たちだけの意見をまとめたレビューということになるのです。こういうことはよくあることで、致し方ない点もありますが、エビデンスを見るときには注意する必要があります。
でも、有害なことはなさそうですので、わたしだったらどれかを試してみるんじゃないかな~というのが個人的な感想です。
この記事が少しでも役に立ったら嬉しいです。
それでは。
過敏性腸症候群(IBS)治療ガイドラインの記事 ・過敏性腸症候群治療ガイドライン:低FODMAP、グルテンフリーについて ・【英国消化器病学会】過敏性腸症候群(IBS)の対応に関するガイドライン要約 |
参考文献
Vasant, D. H., Paine, P. A., Black, C. J., Houghton, L. A., Everitt, H. A., Corsetti, M., Agrawal, A., Aziz, I., Farmer, A. D., Eugenicos, M. P., Moss-Morris, R., Yiannakou, Y., & Ford, A. C. (2021). British Society of Gastroenterology guidelines on the management of irritable bowel syndrome. Gut, gutjnl-2021-324598. Advance online publication. https://doi.org/10.1136/gutjnl-2021-324598