免疫に関する記事を続けていますが、今回は腸内細菌ではなく、胃です。一応細菌つながりということでピロリ菌について紹介をしたいと思います。
ピロリ菌という言葉は聞いたことがあると思います。体の中にいる菌の中でも特に注意した方が良い細菌の一つです。ただ、ピロリ菌感染の診断や治療に関することは専門家に相談していただきたいので、この記事では触れません。
予め、ご容赦ください。もし、検査の方法や治療方法などについて調べたい場合には、日本臨床内科医会の出版しているピロリ菌感染症という冊子LINK がオススメです。
この記事のポイント
- ピロリ菌は胃潰瘍、十二指腸、胃がんなどのリスクを上げます。
- 感染率は日本人での50%ととても多いです。
そもそもピロリ菌ってどんな細菌。どんな病気になるの?
ピロリ菌は胃などに存在する細菌で、べん毛がプロペラのように動くのでヘリコプターから、ヘリコバクター・ピロリ菌と言う名前がついています。
ピロリ菌を発見したオーストラリアのロビン・ウォレン氏とバリー・マーシャル氏は2005年にノーベル医学生理学賞を取っています。
ピロリ菌は慢性胃炎、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、胃がんなどの発症リスクを上げることが知られています。次の図をみれば、いかにピロリ菌の影響が大きいかわかると思います。
炎症などを引き起こす危険な細菌ピロリ菌
上の左図は十二指腸潰瘍になった人の再発率を調べた研究ですが、十二指腸潰瘍はピロリ菌との関連性が高い疾患で、非常に再発率が高い疾患のようです。しかし、ピロリ菌除去を行った人では劇的に再発率が下がっているのが分かりますね。
さらに、右の図ではピロリ菌感染者1246例と感染していない人280例で、その後、胃がんになった人数を比較した研究ですが、ピロリ菌感染者では36例が胃がんになったのに対して、ピロリ菌の感染がない人では胃がんの発症例はありませんでした。
このように、胃がんや胃潰瘍、十二指腸潰瘍などと大きな関連があるピロリ菌ですが、どれくらい感染しているかを比較したデータを次に紹介したいと思います。
50%以上の日本人がピロリ菌を持っている
ピロリ菌と聞いても、あまり聞きなれない方(私はそうでした)は、ピンとこないかもしれませんが、かなりの方がピロリ菌に感染しています。
上のグラフは、各国の感染者の割合を示していますが、日本でも半分以上の人が感染しています。欧米などでは3割を切っている国もありますが、途上国では、さらに高い感染率です。
また、日本人の感染率も年代によって大きく異なっているようで、30年近く前の古いデータではありますが、20代で約30%なのに対して、40代以上で80%近い感染率という感じです。
どうもピロリ菌の感染は親から子供に受け継がれることが多く、胃酸の力が弱い5歳までの間に感染することで、胃のような特殊な環境の中でも棲みつくことができるようです。
近年は、ピロリ菌の除菌が一般的になり、衛生環境も改善されたことでピロリ菌自体は撲滅の方向に進んでいるようです。
まとめ
ここまで読んでくださりありがとうございました。
ピロリ菌について気になった方、除菌をしたいと思われた方は必ずご自身で医療機関に相談されてください。ほとんどの内科で検査も治療も可能ということでした。
まとめとは少し違うのですが、最後にピロリ菌は本当に悪いの?という話を書きたいと思います。
実は明らかに悪い菌というレッテルを貼られているピロリ菌ですが、アレルギーや喘息の発症リスクを下げるかもしれないなど、ピロリ菌に感染しているメリットを報告した研究もあるそうです。
これは、専門家の間では良く知られたことのようですが、一般の方は知らないと思います。私もそのエビデンスレベルや因果関係までは分かりませんが、それでも、私たちにとって悪い菌と決めつけていたのに、実はそうでもなかったとしたら、それは盲点ですよね。
今回の例はピロリ菌でしたが、そのようなことが様々な菌に対しても今後、明らかになってくる可能性もあるんじゃあないかと思います。それでは。