健康 時事ネタ

コウモリは病気にならずにウィルスのホストとなるメカニズム

2020-05-11

こんにちは。初めまして。この記事に興味を持ってくださりありがとうございます。新型コロナウイルスが中国の研究所なのか?武漢の市場のコウモリなのか?そして、そこにアメリカは関係があるのか???みたいなニュースが飛び交っていますね。

でも、正直よく分からないですよね~。ぜったいフェイクニュースが混じっているだろう!とは思いますが、われわれ一般市民がこういったフェイクニュースを確認する方法ってあるのだろうか?と思ってしまいます。

さて、今回はコロナでおなじみのコウモリについて、記事にしたいと思います。と言いますのも、コウモリは様々なウィルスを保有する媒介動物として知られていますが、不思議なことにコウモリ自体はこれらのウィルスでなくなることが無いということが分かっていて、このメカニズムが面白そうだなと思い紹介したいと思いました。

ちなみにこの記事は、下記のNatureの記事と、関連文献を参考にまとめさせていただきました。

NEWS FEATURE  04 MAY 2020
Profile of a killer: the complex biology powering the coronavirus pandemic

コロナウィルスでヒトに重篤な感染症を引き起こすのは全てコウモリ由来

コロナウイルスのイラスト

はじめにコロナウィルスについて、わざわざ書かなくても勉強されている方も多いと思いますが、書かせていただきます。

コロナというのは、語源はクラウン(王冠)ということで、王冠のようにとげとげした形をしているからのようです。

顕微鏡写真とかを見たことがある方が多いと思いますが、たしかにとげとげしていますね。意外と名前はかわいいですよね。

そんなコロナウィルスですが、今回の新型コロナウィルス以外にもSARSや一般の風邪をふくめ、いくつも報告があるというのはご存じの方も多いと思いますが、全部で約70種類くらいの報告があるようです。

ウィルスというと、無限に変異を繰り返してそうなので、そんなもんか~という感じもありました。

そして、その中で人間に感染するものは全部で7つあるそうです。

7つの内訳は下記の通りになり、ネズミ由来とコウモリ由来に分かれますが、コウモリ由来が5つあり、SARSもMERSもCOVID-19もコウモリ由来のコロナウィルスが引き起こすようです。

げっ歯類(ネズミ)由来の
コロナウィルス
2つ(風邪症状を引き起こす)
コウモリ由来のコロナウィルス2つ(風邪症状を引き起こす)
3つ(重篤な症状を引き起こす)
【重篤な症状の3つ】
・SARS-CoV(SARSの原因)
・MERS-CoV(MERSの原因)
・SARS-CoV-2(COVID-19の原因) 

これを見ると、コウモリがコロナウィルスのホストになっているというのがよく分かります。

プレプリントサーバーに投稿された論文(MF Boni et al。bioRxiv https://doi.org/10.1101/2020.03.30.015008(2020))で、今回の新型コロナウィルスSARS-CoV-2をふくめ、約70種のコロナウィルスのゲノム配列をデータベースから参照し、コロナウィルス同士がどれだけ似ているかを、系統樹という図で示した論文が公開されています。

下記の図がその結果をNatureが要約したものですが、新型コロナウィルスは、コウモリ由来で中国南部(広東地域)で発見されたRaTG13というウィルスと最も似ていたそうです。

そして、この研究ではどのようにして解析しているのか分かりませんが、年代推定も行っていて、40~70年前に新型コロナウィルスは分岐したのではないかと推定しています。

わたしは、40~70年前にできたと言われても、それが新しいのかどうか、いまいちピンとこないので、へぇ~となって終わりですが・・・。

これが正しいとすると、コウモリや他の動物が保有し、人には感染していない期間が数十年間あったということになりますね。

ほかで聞いた話では、コウモリからアルマジロに感染し、漢方薬のためにアルマジロを密輸した人によって人に感染したという報告があるそうです。

(Natureのウェブサイトから引用)

コウモリが感染しても病気にならない理由

超音波を出すコウモリのイラスト

さて、わたしの中ではこのなぜコウモリは感染しても病気にならないのかというメカニズムに興味があったので、ここからがメイントピックスです。

このメカニズムについて紹介されているのが下記の論文です。

Brook CE et al. Accelerated viral dynamics in bat cell lines, with implications for zoonotic emergence. Elife. 2020 Feb 3;9.

この論文では、コウモリの培養細胞を用いてウィルスが感染したときのモデル実験をを行っています。

(細かいことは分からなかったのですが)この研究では、細胞培養の試験で2種類のコウモリとミドリザルの細胞などを比較して、コウモリがウィルスに感染した時の細胞の応答を解析したり、その後の死滅までの観察を行っています。

この試験の結果、ウィルスが感染したときに、コウモリの細胞で免疫応答は起こっていることは確認できたようです。

しかしながら、通常であれば炎症などを起こして、ウィルスを撃退するとともに、自分自身へもダメージを受けてしまうところ、ウィルスを撃退せずに保有するというシグナルを送るそうです。

しかし、考察の中で、このようにしてウィルスを保有するシステムがある為、コウモリの体内で毒性が現れるように変異を起こすことが有ると指摘しています。

たしかに、咳やくしゃみで飛散し、伝播することでウィルスは生存するので、毒性が何も現れないと、初めのうちはコウモリの体の中がウィルスの培養装置になるかもしれませんが、その後の伝播方法がないというのは、ウィルスにとっては問題なのかもしれません。

さいごに

謝罪動画のイラスト(男性)

ここまで読んでくださりありがとうございました。今回の記事ですが、しっかりと論文を読む前に記事を書き始めたら、非常に難解で、十分に理解することが出来ませんでした。

もしも、よくご存知の方がいましたら、まちがいなどありましたら、ご指摘いただければと思います。今回の記事をまとめると、下記の通りになります。

・人間に感染するコロナウィルスは約70種類のうち7種類。さらに、そのうちの5種類がコウモリ由来
・新型コロナウィルスもコウモリ由来で40~70年前に誕生したと推定される
・コウモリがウィルスを保有しても発病しないメカニズムは独自の免疫システムによる

今回の記事で取り上げたコウモリですが、コロナウィルスだけでなく、エボラ出血熱や狂犬病など、恐ろしい感染症の媒介者のようです

中国をはじめ、わりと広い地域でコウモリを食べる習慣があるようですが、さまざまなウィルスを体内にストックするという事実を聞いてしまうと、わたしは、コウモリを食べるという気持ち悪さ以上に、病気が心配なのでぜったいに食べられないだろうなと思いました。

その一方で、コウモリがウィルスを体内で無毒化する免疫システムというのはヒトに応用することができれば、画期的な治療薬の開発につながる可能性もあるんだろうと思いました。

今回のコウモリの研究は細胞培養でしたが、もう少し進んだ研究がされたら面白そうだなと思いました。

  • この記事を書いた人

Pon

食品会社勤務の元企業研究員(PhD)。食の機能性研究、腸内細菌の研究をメインにしていました。興味関心は公衆衛生、疫学、食品の機能性。好きな食べ物はカレーと杏仁豆腐。コテンラジオ、キングダムが好きです。統計の専門家に憧れます。興味のある研究について、Xやブログで発信しています。

-健康, 時事ネタ

© 2022 Pon Powered by AFFINGER5