健康,  腸内環境

パーキンソン病と腸内細菌のメタアナリシス論文の紹介

はじめに

こんにちは。この記事に興味を持ってくださりありがとうございます。今回の記事はパーキンソン病と腸内細菌のメタアナリシスの論文の紹介です。

私は食品会社の社員で、パーキンソン病はテリトリー外です。面白そうな論文だと思い紹介していますが、間違い等ございましたら、ご連絡いただけますと幸いです。

パーキンソン病はアルツハイマー型認知症に次いで多い神経系の疾患です。確かに、身近な方の中でも発症された方がいます。

アルツハイマーやパーキンソン病などの神経系の疾患は腸内細菌との関連が知られておりまして、腸内細菌の研究者が目指している一つの重要なゴールがこれらの神経系の疾患への有効な治療薬の開発と私は思っています。

この記事では、パーキンソン病と腸内環境の関連を調べた10の研究を統合したメタアナリシスの論文を紹介したいと思います。

Pon(ブロガー・企業研究者・社会人大学院生)
ブログを書いている企業研究者のPonです。食品の機能性や腸内環境の研究に興味があります。大学で疫学を学んでいます。Twitterはこちら:Pon_yurublog

パーキンソン病はアルツハイマーに次いで多い神経疾患

パーキンソン病は手の震えや動作、歩行が困難になるなどの運動障害が症状として現れる、進行性の神経変性疾患です。神経変性疾患の中では、アルツハイマーに次いで頻度が高いことが知られています。中高年以上で発症することが多く、65歳以上の高齢者で割合が高いです。(Wikipediaを参照)

パーキンソンやアルツハイマーのような疾患は、健康長寿となった今だからこそ、大きな疾病などにかからなかった人がかかってしまう、最後の関門のようなところもあると言われますね。

ですが、そうは言っても、ちゃんと病気の原因はあって、それが癌や心血管疾患などと比べて進行が遅いだけなのかな~と思っていたりします

あくまでも推測です。では、本文の紹介に行きましょう!

腸内細菌研究のメタアナリシスはまだまだこれから

はじめに、この記事を読んでいる方の多くは説明不要だと思いますが、メタアナリシスというのは複数の論文の結果を統計的に統合して一つの結論を出す解析です

一応、一般的には最もエビデンスレベルが高い研究と言われますが、メタアナリシスの論文も本当に色々あるので、絶対に正しいということではありません。

腸内細菌のメタアナリシスの論文も最近増えてきましたが、共通して言える問題は、引用している論文の違いが大きい(異質性が高い)ことなどがあります。今回の論文も同じ問題がありますが、内容が興味深かったこともあり紹介しています。

パーキンソン病のほうが多様性が高いという意外な結果

最初に紹介するのは、多様性指数の結果です。

多様性指数は何度かブログの中でも紹介していて、腸内細菌の話をするときには、だいたい多様性指数か細菌が代謝する短鎖脂肪酸のどちらかの話に行きつくことが多いです。

下記の記事が分かりやすいと思いますが、多様性指数は細菌の種類と均等度を数値にしたもので、低いと何一つ良いことが無いというのが私のざっくりとした説明です。

ところが、今回紹介する論文では、メタアナリシスの結果、α-多様性がパーキンソン病でコントロール群よりも高いという結果だったのです。

これは衝撃の結果でした。
なんでなんだろう???と思いました。

ただし、一つ気になるポイントがあり、腸内細菌の分析方法で、DNA断片の片側だけをよむシングルリード法の場合にのみパーキンソン病で多様性が高いようです。

DNA断片の両側を読み取る場合をペアエンド法と呼びますが、ペアエンド法では多様性には違いが無かったようなので、この結果についてはもう少し新しい研究報告を待った方がよさそうです。

私はこれまでシングルリードとペアエンドの違いを気にしたことが無かったのですが、多様性の結果を見るときにはちゃんとシークエンスの方法を確認した方がいいなと思いました。

LactobacillusAkkermansiaBifidobacteriumがパーキンソン病で多い

参考文献から改変引用(PD:パーキンソン病)

次に個別の腸内細菌の結果ですが、この結果も少し意外に感じる結果でした(上の図参照)。

上の図はパーキンソン病患者に多かった腸内細菌を上から順番に記載しています。また、論文中で特に言及があった腸内細菌をハイライトしました。

結果を見るとパーキンソン病の患者に多い腸内細菌が乳酸菌、ビフィズス菌、アッカマンシア(Akkermansiaなど、比較的良い印象の腸内細菌だったのです。

アッカマンシアはあまりイメージが沸かない方もいるかもしれませんが、下記のような特徴的な腸内細菌です。

アッカマンシア(Akkermansia
・腸管の粘液(ムチン)をエサにする腸内細菌
・少ない場合には、腸管の粘液が薄く、腸管のバリアー機能が弱くなっている可能性がある
・多いと、腸管の粘液が食べられてしまい、やはりバリアー機能が弱くなる可能性がある
・つまり、多すぎても、少なすぎても良くない、免疫などと関連が強い腸内細菌

乳酸菌やビフィズス菌は比較的良いイメージを多くの人が持っていると思いますが、こういった腸内細菌がパーキンソン病で多いというのは、正直なところ、「なんでだろう??」と思いました。

一方、健常者で多かったのはフィーカリバクテリウム属、ラクノスピラ(Lachnospiraceae)科の腸内細菌でした。これらの腸内細菌は短鎖脂肪酸を産生する有用な腸内細菌と言えます。

論文では細菌の代謝経路までメタアナリシスをしている!

論文の中では代謝経路についても言及がされておりまして、結果だけを紹介すると下記の通りです。

パーキンソン病で多かった腸内細菌の働き

  • ユビキノン(CoQ)の生合成
  • メナキノン(ビタミンK2)の生合成
  • グルタミン酸の分解
  • メタン生成
  • 乳酸発酵

健常者で多かった腸内細菌の働き

  • コバラミン(ビタミンB12)の生合成
  • グルタミン/グルタミン酸の生合成
  • グルクロン酸、ガラクトグルクロン酸の分解
  • 酢酸分解によるメタン生成

ただ、この記事の中ではこれ以上言及できるほど本文に細かい説明も見当たらず、私にも知識がありませんでした。

まとめ

ここまで読んで下さりありがとうございます。私はパーキンソン病について、ほとんど知らないので、この論文も浅いレベルでしか紹介できていませんが、このように個々の腸内細菌の変化について網羅的にメタアナリシスを行う論文が出始めたことは注目すべきだなと思いました。

正直な感想では、まだメタアナリシスを行うには早いんじゃないかとも感じるところがあります。なぜならメタアナリシスを実施する際には、仮定として、データを統合できるような異質性が低い研究デザインであることが求められるからです。

私は統計の専門家でもないため、解析手法についても突っ込むことができませんが、いくつかの腸内細菌で有意差が出ていたことから、少なくとも解析に耐えられるくらいの研究数が集まってきているというのはとても嬉しいなと思いました。

また、結果で乳酸菌やビフィズス菌が多いという意外な結果が興味深いなと思いました。

メカニズムにはあまり言及できませんが、私は脳腸相関の文脈では腸管のバリアー機能が低下し、腸内細菌由来のLPSが脳血管で炎症を引き起こすというメカニズムが強いと思っているので(こちらの記事参照)、アッカマンシアはこの文脈の中で今後研究が深堀されるかもしれません。

脳腸相関はメチャクチャ面白い研究分野ですね。私も理解が追いつかないところがあるのですが、面白い論文があれば、これからも積極的に紹介したいなと思います。それでは。

参考文献

Romano S, Savva GM, Bedarf JR, Charles IG, Hildebrand F, Narbad A. Meta-analysis of the Parkinson’s disease gut microbiome suggests alterations linked to intestinal inflammation. NPJ Parkinsons Dis. 2021;7(1):27. Published 2021 Mar 10. doi:10.1038/s41531-021-00156-z

食品会社勤務の企業研究員。公衆衛生の講座に在籍する、社会人博士課程の大学院生でもあります。食の機能性研究、腸内細菌の研究に軸を置いています。興味関心は公衆衛生、疫学。統計の専門家に憧れます。興味のある研究について、Twitterやブログで発信しています。