健康,  食事

全粒穀物は体にいいけど、日本人では効果がイマイチな理由

初めに

こんにちは、この記事に興味を持ってくださり、ありがとうございます。全粒穀物はご存じでしょうか?玄米などのように、外皮がついたままの穀物のことを言いますが、全粒穀物は、食物繊維などが多く含まれ、血糖値の急激な上昇を抑えることなどによって、死亡のリスクを10%以上も下げることが報告されています

ところが先日、白米は他の精白した穀物と比べて死亡のリスクが低く、もしかしたら全粒穀物と同じくらい健康的なんじゃないか?という論文を紹介しました(下記の記事)。

先日の記事で紹介した内容は、世界21ヶ国のデータで、すばらしい研究だったのですが、残念ながら研究対象の国の中に日本が含まれていませんでした。ですが、日本人を対象とした研究でも穀物の研究があります。

これまでは、海外の全粒穀物のエビデンスと一致していなかったため紹介していませんでしたが、上記の白米の記事を見ると、必ずしも矛盾しているわけではないかもしれないと思い、記事としてまとめることにしました。

この記事のポイント

  • 全粒穀物は死亡リスクを17%下げますが、玄米でのエビデンスはありません。
  • 米国人の研究では穀物由来の食物繊維を食べると死亡リスクが約20%下がります。
  • 日本人では穀物由来の食物繊維を食べても死亡リスクは下がりません。
  • こういった結果は白米を多く食べる食生活が健康なためだと思われます。
Pon(ブロガー/会社員/社会人大学院生)この記事を書いているわたしは、食品会社で機能性の研究などをしている企業研究員ですが、社会人大学院生として大学で疫学(病気の原因を調べる学問)を学んでいる学生でもあります(詳しいプロフィールはこちら)。

全粒穀物は死亡リスクを17%も下げるが、玄米は効果なし

参考文献1より改変引用

はじめに全粒穀物ってこんなにすごいんだよ!という論文を紹介したいと思います。上の図は全粒穀物が死亡のリスクを下げているかどうかを、45の研究をレビューした論文です(メタアナリシスという解析です)。全ての死亡のデータが集められた論文10報(研究としては11研究)を統合した結果では、1日90gの全粒穀物を食べると、死亡のリスクが17%も下がるという結論になっています(右の図)。

ところが、玄米ではどうかといいますと、1日100g食べた場合の死亡リスクは2%しか下げません(統計的には、差なし)。ただし、このデータでは、がんによる死亡しかデータが取れていない点、論文が1報(研究としては3研究)と少ないことなどから、このデータだけでは玄米が死亡リスクを下げないという結論は強引かなと思います。

玄米も全粒穀物になるので、基本的には死亡リスクを下げると考えられますが、がん以外の死亡を比較していないことや、研究数が少なかったため検出できなかったと考えるのが妥当なのかなと思います

ところが、この結果は以外と再現性があり、先ほどの玄米の研究は中国でしたが、日本人を対象とした研究で、しかも全ての死亡でも再現性が取れるような結果が出ました。

穀物由来の食物繊維の摂取は日本人では死亡リスクと無関係

参考文献2, 3より改変引用

では、今度は日本人のデータを紹介したいと思いますが、上の図は日本とアメリカで行われた2つの研究結果を並べました。どちらも穀物から食物繊維を取ったときの食物繊維量と死亡リスクの関係です。

左の日本のデータを見ると、男性では少し「J字型」のカーブになっていて、すこし死亡を予防できるのかもしれませんが、女性では穀物由来の食物繊維と死亡リスクの関連はなさそうです。一方で、米国のデータでは、沢山とればとるほど死亡リスクを下げるという結果になっています。

どちらの研究も十分に信頼できる大規模研究なのに、これほどまでに結果に違いが出たことはちょっとすっきりしません。ちなみに日本人の研究では、豆、野菜、果物由来の食物繊維と死亡の関係も調べていて、どれも男女ともにキレイに死亡に予防的に関連が見られています。つまり、穀物の食物繊維が死亡リスクを下げないという結果はバラつきと考えるのも違うかな~と思います。

白米が健康的であれば、全く矛盾しない結論

さて、先ほど紹介した日本人を対象とした、穀物由来の食物繊維と死亡リスクの関係の研究ですが、1年くらい前に発表された論文です。発表後、直ぐに目を通していましたが、日本人では穀物由来の食物繊維を食べても健康効果が無かったというのは、結構むずかしい問題だな~と思っていました。

ですが、先日紹介した記事(白米は他の精白穀物よりも死亡のリスクが低い!)をみると、白米が小麦粉製品よりも死亡のリスクを下げていると考えると、何か一貫した結果と言える気がします。

それは、

  • 穀物由来の食物繊維量が多い人は、小麦粉中心の欧米型食生活に偏っている可能性がある。
  • 白米の摂取量が多い人は和食に偏っている可能性がある。

海外のエビデンスでは穀物由来の食物繊維が多いというのは全粒穀物の摂取量が多いということなんですが、全粒穀物をほとんど食べない日本人では、穀物由来の食物繊維量は、白米よりも食物繊維量が10倍くらい多い小麦粉の摂取量が多い可能性が高いです。

そして、白米を食べている人達の食生活は和食が多くなるため、海藻や納豆、魚介類などを多く摂取することになりそうです。つまりは、全粒穀物も穀物由来の食物繊維もエビデンスは豊富で、健康には良いと思われるけれども、まず食生活全体を欧米型から和食中心に変更することが大事と言えそうです。

この結論に至るまで、結構悩みましたし、あくまでも私の考察ではありますが、ちゃんと説明できていますでしょうか?

まとめ

ここまで読んで下さり、ありがとうございました。今回は、エビデンスの解説とは言っても、微妙な感じの結果がどうして出たのかという内容だったので、非常に分かりにくい記事だったと思います。

ただ、一言で結論を書くと、まずは和食を見直そうということです。

そして、洋食や麺類が大好きという人は野菜や魚介類の摂取量が少なくなりやすいので、意識して取り入れるようにすると良いのではないかと思いました。それでは。

参考文献

  1. Aune D, Keum N, Giovannucci E, et al. Whole grain consumption and risk of cardiovascular disease, cancer, and all cause and cause specific mortality: systematic review and dose-response meta-analysis of prospective studies. BMJ. 2016;353:i2716. Published 2016 Jun 14. doi:10.1136/bmj.i2716 LINK
  2. Katagiri R, Goto A, Sawada N, et al. Dietary fiber intake and total and cause-specific mortality: the Japan Public Health Center-based prospective study. Am J Clin Nutr. 2020;111(5):1027-1035. doi:10.1093/ajcn/nqaa002 LINK
  3. Huang, T., Xu, M., Lee, A., Cho, S., & Qi, L. (2015). Consumption of whole grains and cereal fiber and total and cause-specific mortality: prospective analysis of 367,442 individuals. BMC medicine, 13, 59. https://doi.org/10.1186/s12916-015-0294-7 LINK

食品会社勤務の企業研究員。公衆衛生の講座に在籍する、社会人博士課程の大学院生でもあります。食の機能性研究、腸内細菌の研究に軸を置いています。興味関心は公衆衛生、疫学。統計の専門家に憧れます。興味のある研究について、Twitterやブログで発信しています。