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ビタミンDが新型コロナウィルスの感染をおさえるかもしれない

2020-10-01

こんにちは。この記事に興味を持ってくださりありがとうございます。最近は少し落ち着き始めた感じはありますが、コロナの影響で、免疫関連の話はすごく話題になりますね

ちょうど9月の連休後だったり、Go To トラベルに東京が追加されたり、さらにこれからインフルエンザの季節だったりで、まだまだ注意が必要ですね。

さて、そんな免疫関連の素材として地味に着目されていることの一つとしてビタミンDがありますビタミンDは免疫力を上げることが知られていて、新型コロナウィルスに対しても予防的に働くことが期待されています

そこで、この記事ではビタミンDとコロナの関係を報告したJAMA network openでトレンド入りしている論文の紹介をしたいと思います。

この記事のポイント

  • ビタミンD欠乏症の人は新型コロナウィルスの感染リスクが1.77倍高いです。
  • ビタミンDは免疫機能を高め、呼吸器系の感染症の発症も抑えます。
  • 血中ビタミンD濃度を高めるには魚介類の摂取や日光浴が大事です。

この記事を書いているわたしは、食品会社の企業研究者です。業務で食品の機能性研究を、大学では病気の原因を調べる疫学を学んでいます。

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ビタミンD欠乏症とCOVID-19の関連を調べた米国の研究

参考文献1より改変引用

では、早速研究の紹介をしたいと思いますが、今回紹介する研究(参考文献1)は米国で行われた研究です。新型コロナウィルスの感染有無をPCRで検査し、陽性だった人の特徴を広く調べた研究です。

この研究の面白い点は、かなり広く、新型コロナウィルスのリスク要因を調べていることです。例えば年齢、性別、人種、そして持病などです。そして、新型コロナウィルスの感染リスクを高めている要因を分かりやすく、まとめています。

まずはこの研究の結果の一部を上の図で紹介します。この結果を見ますと、新型コロナウィルスの感染リスクを高めているのは、

  • 黒人であること(リスクは2.54倍)
  • ビタミンD欠乏症であること(リスクは1.77倍)

一方で、、新型コロナウィルスの感染リスクを下げていたのは、

  • 免疫抑制の疾患があること(リスクは0.39倍)

でした。つぎにそれぞれの項目についてもう少し詳しく解説をしますね。

【免疫抑制疾患:リスクを0.39倍に下げる】
免疫抑制の疾患の正確な定義が分からなかったため、少しあやしいですが、免疫システムが正しく機能しない病気の総称で、1型糖尿病や関節リウマチ、全身性エリテマトーデス(SLE)など自己免疫疾患も含まれるそうです。

こういった持病がある人が新型コロナウィルスのリスクが低いと言うのは、病気になるとリスクが下がるのではなく、それだけ気をつけていると言うことでしょう。

ちなみに2型糖尿病、高血圧、うつ病など他の疾病では差がなかったようです。

【黒人:リスクが2.54倍になる】
一方で、やっぱりリスクが高いな~と残念に感じるのは黒人のリスクの高さではないでしょうか?圧倒的ですね。遺伝的な要因もあるかもしれませんが、要因として大きいのは、感染リスクが高いエッセンシャルワーカーの割合が高いこと、人が密集している地域に住んでいる割合が高いことなど、社会経済学的な要因が大きいのは事実だと思います。

現在も、米国内で大きな分断を起こしていますが、本当に人種の問題は根が深いなと思います。

【ビタミンD欠乏症:リスクが1.77倍になる】
最後にビタミンD欠乏症です。これは血中のビタミンD(正確には25水酸化ビタミンD)の濃度を測定し、20 ng/mL以下の場合にはビタミンD欠乏症と診断されますが、この研究では、定期的にビタミンDを測定して、一貫して20 ng/mL以下だった人、つまり慢性的にビタミンDの量が低かった人をビタミンD欠乏症と定義しています。

ちなみに20 ng/mL以下になったことがあっても、一貫していなかった人を疑いとして、別に解析をしています。

この結果ビタミンD欠乏症の人の新型コロナウィルスの感染リスクは1.77倍と非常に高い値でした。これもかなり大きな効果と言えそうです。

なんでビタミンDは免疫力を上げるの?

参考文献2より改変引用

なぜ、ビタミンD欠乏症の人は新型コロナウィルスの感染リスクが高かったのでしょうか?

実は、ビタミンDには以前から呼吸器感染症の予防効果が知られていました。上の図は画像が少し見づらいですが、2017年にBMJという世界的な医学誌で報告されたビタミンDのサプリメントによる呼吸器感染症の予防効果を調べたメタアナリシスです

メタアナリシスというのは複数の研究結果を統計的にまとめて、一つの結論を出す最もエビデンスレベルが高い研究です。

このメタアナリシスでは、25報の論文の結果をまとめて、合計1万人以上のデータでオッズ比0.8、つまり、ビタミンDのサプリメントを摂取することで20%も呼吸器疾患の感染症にかかりにくかったという結論を出しています。

このメタアナリシスでは、もともとの血中のビタミンD濃度が低かった研究ほど、サプリメントの効果が高かったという結果になっていますので、かならずしも全ての人で効果があるわけではなさそうなのですが、ビタミンD欠乏症の人にとってはサプリメントの効果は非常に高そうでした。

今回、紹介したCOVID-19の感染リスクが、ビタミンD欠乏症でリスクが1.77倍にもなるというのは、こういった前置きの研究があったことを考えると、論理的にも妥当な結果だったのではないかなあと思いました。

ちなみにビタミンDによる免疫力維持のメカニズムは、専門用語ですみませんという感じですが、ナチュラルキラー細胞やマクロファージなど外敵を攻撃する細胞の働きを高めるというメカニズムのようです。

血中のビタミンDを上げる方法は?

最後に、ビタミンDのサプリメントや血中のビタミンD濃度の測定について少し紹介をしたいと思います。

この記事ではビタミンDがCOVID-19も含めて、呼吸器系の病気の予防にとても大事だということは分かったと思います。

ですが、こういったデータは一貫して血中のビタミンDが不足している人のみで当てはまり、血中ビタミンD濃度が充足している人が、サプリメントなどでビタミンDを摂取をしても、予防効果はほとんどありませんでした

ビタミンDが不足していないかを確認することがまず大切ですが、一般的にはビタミンDの不足は現代人の問題の一つでもあるようで、約半数くらいの人が不足しているようです。

今回の参考文献1のデータでも明らかなビタミンD欠乏症は25%、ビタミンD欠乏症の疑いありを含めるとなんと40%の人がビタミンDが不足していました。

血中のビタミンD濃度は病院などで一般的には測定ができるようです。個人的には血中濃度にこだわりすぎるのではなく、ビタミンDを普段から意識することがよいのではないかなあと思います。

Googleで検索すれば誰でもわかるレベルの情報ですが、ビタミンDを増やすには下記のようなことが重要です。

  • 魚介類を積極的に食べる
  • きのこを積極的に食べる
  • 日光に当たる

ちなみに、現代人にビタミンD欠乏症が増加している原因は日光に当たることが減ったことが原因ということで、とくに日光に当たることが大事と言われます

もちろんビタミンDをサプリメントで摂取することもできます。

ビタミンDのサプリメントは基本、どの会社でも販売していて、価格も比較的安いので、わたしはどちらかというとサプリメントは否定的ですが、ビタミンDは素直におすすめしてもいいかなあと思いました。

例えば下記のネイチャーメイド1粒で30分以上の日光浴に相当するくらいのビタミンDを摂取できる計算になります。

手っ取り早くビタミンDを底上げするにはいい方法かな~とも思います。各社販売していますので、興味があったら調べてみるといいと思います。

まとめ

ここまで読んで下さりありがとうございました。ビタミンって色々あって、イマイチ違いが頭に入ってこないところがありますが、ビタミンD、優秀でしたね。

自分の血中ビタミンD濃度なんて、測定したことはありませんが、興味が出てきました。そして、太陽の偉大さを感じました。

最後にこの記事で紹介した研究の問題点についても触れておきたいと思います。

研究ではビタミンD欠乏症のコロナ感染のリスクが1.77倍と算出されましたが、ビタミンDの影響に隠れた別の要因(交絡因子)をちゃんと取り除けていない可能性が非常に高いです。たとえば、

  • ビタミンDのサプリメントを飲んでいる人は、喫煙者が少ないなど、もともと健康意識が高い
  • ビタミンDのサプリメントを購入できる人は収入が高く、白人が多い。つまり、別の理由で感染リスクが低い
  • 血中ビタミンD濃度が高い人は、日光を浴びる活動的な人の可能性があり、もともと健康な可能性が高い

などです。今回紹介した論文では、こういった影響が、ビタミンDが免疫力を高める機能に上乗せされている可能性が非常に高いです。そのためリアルな効果というのはもう少し小さいということは頭に入れておいてください。

ですが、そう言ったことを差し引いても、今回の記事のトータルの結論としては、ビタミンDを意識して、日光を浴びたり、魚介類を食べることを意識してほしいと思いますし、それでも十分に摂取するのが難しいようでしたら、サプリメントなどで手っ取り早くビタミンDを摂取するのも良いかなと思います。

少しでも、この記事が参考になったら嬉しいです。それでは。

2021/5/28追加情報:ビタミンDは直接関連していないかもしれません

追加情報です。残念ながら、下記のTwitterのとおり、ビタミンDと新型コロナウィルスの関連を否定する研究結果も出ています。

大分、ビタミンDを推した内容になっている中で恐縮ですが、ビタミンDが本当に効果があったかは分かりません。ビタミンDは日光浴で蓄積するので、生活習慣などの代理変数としてビタミンDが関連していただけかもしれません。

参考文献

  1. Association of Vitamin D Status and Other Clinical Characteristics With COVID-19 Test Results. David O. Meltzer et al. JAMA Netw Open. 2020;3(9):e2019722 LINK
  2. Vitamin D supplementation to prevent acute respiratory tract infections: systematic review and meta-analysis of individual participant data. Adrian R Martineau et al. BMJ 2017;356:i6583 LINK

  • この記事を書いた人

Pon

食品会社勤務の元企業研究員(PhD)。食の機能性研究、腸内細菌の研究をメインにしていました。興味関心は公衆衛生、疫学、食品の機能性。好きな食べ物はカレーと杏仁豆腐。コテンラジオ、キングダムが好きです。統計の専門家に憧れます。興味のある研究について、Xやブログで発信しています。

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