健康

アレルギーの発症はキレイすぎること?衛生仮説に関するアーミッシュの研究

こんにちは。今日の記事では、アレルギー発症のメカニズムとしてよく言われる衛生仮説というものを紹介したいと思います。

衛生仮説は、言葉からも何となく内容を想像できると思いますが、家が清潔すぎるとアレルギーになりやすいという仮説ですね。この仮説については、因果関係も証明されていて、既に仮説というよりもメカニズムという感じです。

また、近年ではそのメカニズムに腸内細菌も関わっていると考えている人が多いようです。衛生仮説を支持する疫学研究はたくさんあるのですが、この記事ではこの衛生仮説に関するアメリカのアーミッシュの研究が面白いと思ったので紹介したいと思います。

アーミッシュ(Amish)にはアレルギーが少ない。これは偶然?

アーミッシュ(Amish)ってなに?

アーミッシュをご存じですか?アーミッシュというのは、アメリカにいるスイスからの移民で遺伝的にはドイツ人の人々で、移民当時の生活を守り続けているプロテスタントの宗派の人々です(正確にはプロテスタントの中のアナバプテスト派と言うそうです)。

基本的には自給自足の生活をしていて、電気などもほとんど使わないというとても興味深い生活を続けています。ちなみに写真も宗教上の理由から基本的には控えるので、上記のような後姿の写真や遠くからとったような写真が多いです。

アメリカのペンシルバニア州、オハイオ州、インディアナ州などに多くいるそうですが、2017年統計では約30万人ほどいるそうです。

昔お世話になった方で、ペンシルバニア出身の方がいますが、親だったか、祖父母だったかがアーミッシュだったと言っていました。その時にはあまりアーミッシュというものを知らなかったのですが、アーミッシュをやめる人はいるようですが、大変なようですね。

アーミッシュにはアレルギーが少ない

参考文献1より改変引用

こちらの図はアーミッシュとアーミッシュ以外のスイス系移民を農家の子供と農家以外の子供に分けてアレルギー疾患を比較した研究です。結果を見ると一目瞭然で、アーミッシュ<農家の子供<農家以外の子供という順番でアレルギー疾患が増えます。

この研究は横断研究なので、因果関係は説明できません。また、アーミッシュの家庭のほうが家が汚いのかは分かりません。ですがトラクターなどを使わないので、農作業中の多様な微生物との接触は多そうですよね。また、自給自足で家電なども使わないことを考えると、一般の農家の子供よりも畑作業を手伝ったり、外遊びが多かったり、多様な微生物に暴露しやすい環境にはあるかもしれません。

そういった生活習慣や環境の違いがアレルギーと関係があるのではないかというのは想像できますね。

衛生仮説のメカニズムは?

さて、この衛生仮説ですが、言葉だけ聞くと分かった気になりますが、調べてみると色々難しいです。

衛生仮説自体は、キレイすぎる環境で育つと、アレルギー疾患になりやすいということです。ですが、難しいのは、メカニズムなどが調べていて決定的と言えるほど十分な説明はできません。

このことについて、参考文献2でとても詳しく説明されています。(日本語の文献ですし、フリーで読むこともできますので、良かったら読んでみてください。)この論文を引用しながら、2つの説を紹介したいと思います。

Th1/Th2バランス説

この仮説は2003年頃に発表された衛生仮説のメカニズムです。この仮説では、感染症にかかることでT細胞の種類に偏りが出ることで説明されています。

T細胞のうちのヘルパーT細胞は、大きく分けてTh1細胞、Th2細胞があります(T細胞についてはこちらの記事にも書いてあります)。Th1細胞は感染症などを撃退し、Th2細胞はアレルギー性物質を撃退します。

このTh1/Th2バランス説(この名前は一般的か知りません)では感染症にかかることが少なかった子供は、Th1細胞があまり発達せず、Th2細胞が偏って発達したと考えています。そして、その結果、Th2細胞が偏って発達したことで抗原に過敏に反応するようになったと考えられています。

これがアレルギー疾患につながっているというのは、非常に分かりやすく説明ができると思います。ですが、クローン病、多発性硬化症、1型糖尿病など、いくつかの疾患の増加を説明できないという問題も報告されています。

エンドトキシン説

このエンドトキシン説(この言葉が正しいか分かりません)というのは、微生物の産生する細胞毒=エンドトキシンにゆるやかに、慢性的に暴露していることで、ユビキチン修飾酵素A20タンパク質というものが発現し、抗原をブロックしているというメカニズムです(参考文献3)。

参考文献4では、上記のアーミッシュの家庭ではエンドトキシンがハウスダストに多く含まれていたという報告もあり、Th1/Th2バランス説では説明ができなかったアレルギー性疾患についての説明ができるのではないかと期待されているようです。

まとめ

今回の記事はここまでですが、一つ重要な話があります。それは、アトピーや食物アレルギーなどについては衛生仮説では十分に説明がつかないということです。

逆に花粉症や喘息などはこの衛生仮説で説明ができますし、そのメカニズムとしてTh1/Th2バランス説でも、エンドトキシン説でも上手く説明ができているので、頭に入れておくとよいのかなと思います。

むやみに家の中を汚したりするのはどうかと思いますが、子供たちが、様々な微生物に触れることで心身ともにつよく育っていくということは確かなことのようです。子供たちには、砂場遊びをさせたり、プランターなどで家庭菜園を経験させたり、今の時代に合わせた方法で多様な微生物に触れるということはさせてもいいのではないかなあと思いました。

また、食物アレルギーについては、別の記事で書きたいなと思います。

参考文献

  1. Mark Holbreich, et al. Amish children living in northern Indiana have a very low prevalence of allergic sensitization. J Allergy Clin Immunol. 2012 Jun;129(6):1671-3. LINK
  2. 松田 明生. 基礎から見た衛生仮説の再考. アレルギー 2019; 68:29-34. LINK
  3. Schuijs MJ, et al. Farm dust and endotoxin protect against allergy through A20 induction in lung epithelial cells. Science 2015; 349:1106-10. LINK
  4. Michelle M. Stein, et al. Innate Immunity and Asthma Risk in Amish and Hutterite Farm Children.,  N Engl J Med 2016; 375:411-421 LINK

食品会社勤務の企業研究員。公衆衛生の講座に在籍する、社会人博士課程の大学院生でもあります。食の機能性研究、腸内細菌の研究に軸を置いています。興味関心は公衆衛生、疫学。統計の専門家に憧れます。興味のある研究について、Twitterやブログで発信しています。