健康 腸内環境

【腸内細菌と免疫の話】腸内細菌がとっても大切な理由

2020-07-24

腸内細菌の話を続けていますが、多くの方が興味がある内容として、免疫はあるのではないかなあと思います。実際、医薬系の研究所で腸内細菌の研究をしている先生方は、免疫系の専門の先生も多いと思います。

そんな中、わたしの記事を読んで頂けるというのは大変恐縮してしまいます。免疫の話で出てくることは、大きく分けると細菌が感染する前の話と後の話になります。

腸内細菌はどちらにも関連はしていますので、今回の記事では大まかにどんな影響があるのかを紹介したいと思います。ざっくりとした話になるので、論文の紹介などはありません。

腸が外的環境の影響を受けやすい(我々は管である)

米国のサイエンスジャーナリストであるメアリー・ローチ氏が「Gulp: Adventures on the Alimentary Canal」でとても面白い表現をしているのですが、「とどのつまり、われわれ人間は口から始まって肛門で終わる、複雑な1本の管である」と言ってるのです。

この表現には人間が手や足を持っているのは、食べ物を手に入れて、口に運ぶための器官であり、からだのすべての機能は食べて、排泄するためにあるという説明、

そして、消化管はからだの内側だと私たちは思っていますが、実は単に管の内側なだけであり、消化管はからだの外側なのだという説明をしています。

おもしろいですよね。

人間は、複雑な機能を備えたミミズなんだと言ってるんです。

ここでのメッセージとしてとても重要なのは、消化管はからだの外側だということです。からだの外側にある器官なので、当然外部環境の影響をたくさん受けます。そのため免疫細胞が集中していると言ってよいのかなと思います。

腸内細菌が免疫細胞と対話する

腸管には、私たちの免疫細胞の7割以上が存在するということは、かなり一般的になったと思います。もう多くの方が知っているんじゃないかなと思います。

これも、腸管はからだの外側で、しかも口から入ってきた食べ物を消化吸収する重要な過程にあるためだと考えれば、外側から内側に通過させるときの検問のような役割として免疫細胞が腸に集中しているというのは分かりやすい話ですよね。

免疫細胞ってなに?って感じの人のほうが多いと思いますので、ネットで調べて出てくる主要な免疫細胞を紹介します。知ってるよって方はスルーしてください。

主な免疫細胞

樹状細胞
Dendritic Cell
異物を取り込み、その特徴などを他の免疫細胞に伝える役割を持ちます。
マクロファージ
Macrophage
異物を取り込んで、食べてしまいます。
また、サイトカインという他の免疫細胞を活性化させる物質を産生します。
T細胞
T Cell
ウイルスなどに感染した細胞などを排除する働きを持ちます。
キラーT細胞:感染した細胞を殺す役割
ヘルパーT細胞:キラーT細胞を助ける役割
制御性T細胞:標的を正しく伝えたり、キラーT細胞をコントロールする役割
B細胞
B Cell
異物・外敵を攻撃する抗体をつくる細胞
NK細胞
Natural Killer Cell
ウイルスなどに感染した細胞などを排除する働きを持ちます。
T細胞と違って、単独で働きます。

こんな感じで、様々な免疫細胞がありますが、腸内細菌は短鎖脂肪酸などの代謝産物を使って、この免疫細胞を増やしたり活性化させることが分かっています。

一応、論文などを探して、図をのせようと思ったんですが、激しいシューティングゲームみたいな感じになって複雑すぎたので諦めました。

免疫応答との重要な役割をするネバネバしたムチン層

ここまでの話は、腸内細菌が侵入してきた病原菌などを排除する、つまり、感染した後の腸内細菌や免疫細胞の役割について紹介をしました。

もう一つ、今度は侵入する前に、入ってこないように防ぐという点での腸内細菌の役割を紹介します。個人的にはこちらの方がイメージはしやすいのかなと思います。

ここで出てくるのは、腸の内表面を保護している粘膜です。

粘膜は鼻腔など、感染が起きやすい場所を保護しているイメージは何となくあると思いますが、粘膜にはいくつか重要な役割があります。

1つはそのままですが、この粘膜自体がネバネバしていて、感染源となる有害な細菌などを近づけないという物理的な役割です。

もう1つの重要な役割は、この粘膜をエサとする腸内細菌を集めて、有用な微生物で腸を守っているんです。

もう少し詳しく説明をすると、実はこの粘膜はムチンというネバネバした水溶性の食物繊維なのです。オクラや山芋のネバネバ成分としても知られています。

水溶性食物繊維をエサとして分解する腸内細菌がムチン層には集まっているので、感染源となる有害な細菌の侵入を防ぐという仕組みになっているのです。

このムチン層は食物繊維が少ない食生活を送ると、薄くなってしまうことも知られていますので、やっぱり、食事は免疫においてとても大事と言えます。

まとめ

この記事を読んでくださりありがとうございました。まとめると、

  • 腸は体の内側にあるけれど、体の外側なんです(とどのつまり、私たちは管である)。だから、感染症など、様々なリスクとたたかう免疫機能が発達しています。
  • 腸にはわたしたちの体の約7割の免疫細胞が集中するともいわれていて、一部の腸内細菌はその働きを調整することも知られています。
  • 外敵から腸管を守るために、腸の表面はムチン層という粘膜でおおわれています。

こんな感じです。一つ一つを丁寧に説明していくと、かなり大作になりそうなのと、わたしの勉強が追いつかないので、今回の記事はここまでにします。続けて別の記事で免疫と腸内細菌について書いていきたいと思います。それでは。

参考文献

  • この記事を書いた人

Pon

食品会社勤務の元企業研究員(PhD)。食の機能性研究、腸内細菌の研究をメインにしていました。興味関心は公衆衛生、疫学、食品の機能性。好きな食べ物はカレーと杏仁豆腐。コテンラジオ、キングダムが好きです。統計の専門家に憧れます。興味のある研究について、Xやブログで発信しています。

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