健康,  腸内環境

腸内環境と肥満の関係を示した2006年発表のエビデンス

こんばんは。みなさま、腸内細菌のF/B比って聞いたことありますか?もしくはデブ菌とかヤセ菌とかって聞いたことありますか?

こういった表現は今はあまり言われないのですが、腸内細菌の研究者で大ボス中の大ボスとも言えるJ・ゴードン教授の研究チームが2006年に発表した研究が始まりとされています。

J・ゴードン教授の研究チームは正に世界一の腸内細菌の研究グループで、欧州の研究で著名なF・バックヘッド教授やこの記事の参考文献にものせている腸科学の作者のJ・ソネンバーグ教授もこのJ・ゴードン教授の研究所の出身です。

今回の記事ではこのデブ菌、ヤセ菌という概念の始まりとなった研究の紹介と、今では使われなくなった流れなどを紹介したいと思います。

太っている人ほどFirmicutes門が多く、Bacteroidetes門が少ない

はじめにデブ菌、ヤセ菌の概念を発表した研究を紹介したいと思います。

ここで紹介するのはNatureで発表された、J・ゴードン教授らの研究ですが、実は、腸内環境と肥満の関係は以前から知られていました。

例えば、抗生物質を摂取すると腸内細菌の多くが死滅し、劇的に変化しますが、豚や牛などの家畜に抗生物質を与えると家畜はよく太り、美味しくなるということは畜産業の人にとっては常識なようです。

ですが、なぜ腸内細菌が影響しているのか?どんな腸内細菌が効いているのか?などは明確な答えが無かったのでしょう。

参考文献1より改変引用

上の図はNatureで発表された論文のサマリー記事から改変引用したものですが、肥満と標準体重の人を比較するとFirmicutes門とBacteroidetes門の割合が違うんです。

この試験では、肥満気味の方を集めて、1年間、炭水化物制限または脂質制限によるダイエットを行い、同時に腸内細菌の測定を定期的に行ったものです。

図の(b)は食事制限の期間中のFirmicutes門とBacteroidetes門の割合を示していますが、食事制限の期間が長くなり、体重減少に伴ってBacteroidetes門の割合が増えているというのが分かると思います。

さらに図の(c)を見ると、横軸に体重減少の割合を、縦軸にBacteroidetes門の割合を示していますが、炭水化物制限でも、脂質制限でも体重減少が大きいほど、Bacteroidetes門の割合が高くなっていました。

また、炭水化物制限食と脂質制限食では炭水化物制限食のほうが少ない体重変化量でBacteroidetes門の割合が増えていますし、脂質制限食に比べて、より直線的な関係がみられるので、Bacteroidetes門は食事の影響も受けており、炭水化物の影響が特に大きいのかなということが言えそうです。

つまり、デブ菌はFirmicutes門で、ヤセ菌はBacteroidetes門のこと、そしてF/B比というのはこのデブ菌とヤセ菌の比のことで、F/B比が低いほどやせているということになります。

この門というのは腸内細菌の分類のカテゴリーですが、門という分類はメチャクチャざっくりした分類です。例えば、人間すなわちホモサピエンスを分類すると下記のようになります。

:動物界 Animalia
:脊索動物門 Chordata
亜門:脊椎動物亜門 Vertebrata
:哺乳綱 Mammalia
:サル目 Primates
:ヒト科 Hominidae
:ヒト族 Hominini
亜族:ヒト亜族 Hominina
:ヒト属 Homo
:H. sapiens(ホモサピエンス)

まあ、こんな感じで、上のホモサピエンスの分類をみて分かる通り、門レベルで分類するというのはかなりざっくりとした話なんです。

魚類・両生類・爬虫類・鳥類・哺乳類など背骨(脊椎)をもつ動物を含んだ脊椎動物と、それと近縁な動物群である頭索動物(ナメクジウオ)と尾索動物(ホヤ)をひとまとめにしているくらいざっくりとしている感じです。

本当か?と思うところもあるんですが、メチャクチャ複雑な腸内細菌をこのように、あえて、ざっくり分類したという点がこの論文のおもしろい所で、分析技術が進んだものの、複雑な統計解析するだけのスキルが追いついていなかったときに、これくらいざっくりした解析だったら、できるぞ!という研究者がたくさんいたというのも、少なからず影響していると思います。

なんでFB比はあまり言われないの?

参考文献2より改変引用

さて、このF/B比ですが、悲しいことに今ではあまり使われない概念になっています。その理由はF/B比って本当にあってるの?と疑問を抱いた研究者から、再現性が取れないという話が出てきたことによります。

そして、とうとうメタアナリシスによってF/B比は間違っていたと結論がついたという状況です。上の図はメタアナリシスの論文のデータですが、研究によってF/B比のざっくりとした比率が違うんですよね。

たしかに研究ごとにみると、肥満の人たちのほうがF/B比が高そうだなというのは、割と再現性はありそうなんですが、そもそも研究によってF/B比がバラバラなので、ちょっと怪しいな~と思われても仕方ありません。

そもそも説明がつかないって問題も大きい

もう一つは、そもそもの話として、先ほども書いた通り、門レベルというとざっくりしすぎていて、結果の説明ができないんですよね。

説明ができない以上は、説明ができるようにどんどん細かく門レベルから分解していって、内容を比較する必要がありますね。

でも、Firmicutes門のなかにも、Bacteroidetes門のなかにも、いい子もいれば、悪い子もいるでしょう。

そんな感じで行き詰まったんだとは思います。残念ですが、まあ、よくある話だとは思います。

まとめ

今回の記事はここまでになりますが、腸内細菌と肥満の話で一番有名な論文を紹介しました。肥満については、ビフィズス菌がいいよ~とか、新しいエビデンスは出ていますが、これだっ!っていえるものはまだ少ないかもしれません。

ですが、基本的には腸内環境を良い方に保つことは肥満にも予防的に働くのかな~と思います。そして、腸内細菌が様々な健康機能に関わっているというのもとても面白いと思います。

その辺の話については、また別の記事で紹介できればと思います。この記事が何かの参考になったら嬉しいです。それでは。

参考文献

  1. R.E. Ley, P.J. Turnbaugh, S. Klein, J.I. Gordon. Microbial ecology: human gut microbes associated with obesity. Nature, 444 (2006), pp. 1022-1023
  2. W.A. Walters, Z. Xu, R. Knight. Meta-analyses of human gut microbes associated with obesity and IBD. FEBS Lett, 588 (2014), pp. 4223-4233

食品会社勤務の企業研究員。公衆衛生の講座に在籍する、社会人博士課程の大学院生でもあります。食の機能性研究、腸内細菌の研究に軸を置いています。興味関心は公衆衛生、疫学。統計の専門家に憧れます。興味のある研究について、Twitterやブログで発信しています。

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