健康

NHKスペシャル(4/18)を見て~新型コロナ全論文解読2

はじめに

こんにちは。4/18のNHKスペシャルが非常に興味深い内容でしたので、備忘録的なまとめ記事を書きました。新型コロナウィルスの論文を集め、AIがネットワーク解析などで最先端の研究、キーワードをまとめた新型コロナ全論文解読2でした。

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Pon(ブロガー)
企業で働く研究者です。社会人大学院生でもあります。興味関心は公衆衛生や腸内細菌です。統計家に憧れます。Twitterはこちら。気軽にフォローしてくれると嬉しいです。

イスラエルでの大規模ワクチン研究から分かったこと

まず取り上げられたのは、イスラエルです。ワクチン接種が世界で最も速く進んでおり、注目されていることはご存じかと思います。

  • イスラエルでは2回のワクチン接種を行った人にグリーンパスポートを発行
  • そして、既に国民の半数がワクチンを接種済み

という状況まで来ています。

ワクチン接種を開始した昨年12月頃には、感染力が高いとされるN501Y変異株が、イスラエルではかなり広がっていて、ワクチンの効果が心配されていました。

イスラエルのワクチン接種については、論文が発表されており、国民120万人にワクチンを接種した効果をまとめています

BNT162b2 mRNA Covid-19 Vaccine in a Nationwide Mass Vaccination Setting

この論文では、N501Y変異株が広がっていましたが、ワクチンの効果が95%だったこと。さらに、発症予防効果が低いと考えられていた高齢者でも95%、肥満、高血圧、糖尿病などでも90%以上の有効性が示されていたという結果で、この結果には専門家も非常におどろいたということでした。

ファイザーのmRNAワクチンが、120万人という大きなサンプルサイズで、リアルワールドデータで予想よりも遥かに高い効力だったことはワクチン接種を進めていく他の国々にも大きな福音だったと思います。

ちなみに公開されているワクチンのN501Y変異株に対する効果は下記の通りです。

ファイザー社モデルナ社アストラゼネカ社
mRNAワクチンmRNAワクチンウィルスベクターワクチン
従来株への効果95%94%82%
N501Y変異への効果94%効果下がらず70%

また、ファイザーなどのmRNAワクチンの有効性が高かったメカニズムには、筋肉の細胞が抗体を産生するだけでなく、キラーT細胞も活性化させるというメカニズムが分かりました

つまり、抗体によって感染を防ぐだけでなく、感染してしまった場合でもキラーT細胞が感染した細胞を攻撃していたことが明らかになっています。

COVID-19後遺症がワクチンで改善するかもしれない?

次にトピックスとして挙げられたのは、後遺症でした。

後遺症に苦しむ人は感染者のうち約30%にも及ぶということで、これだけ感染者が増えている中で当然関心が及ぶ内容です。特に、ワクチンが後遺症にも効くのではないかと言うトピックスが注目されているとのことでした。

しかし、研究者間で後遺症に対して注目が集まっているにもかかわらず、実際に論文を検索しても新型コロナウィルスの後遺症に対するワクチンのエビデンスは無いようです。

しかし、その一方で、プレプリントサーバーで公開されているネクストブレイク論文のトップ5の1つに後遺症とワクチンの論文があります。

Are vaccines safe in patients with long COVID?A prospective observational study.

勿論、査読プロセスを追えていませんので、今後精査すべきポイントがあると思われますが、後遺症が残った人のうち回復した人が15%なのに対して、ワクチン接種で後遺症の回復が23%まで増加したという報告でした。

このメカニズムとしては、感染後に体内に残る微量のウィルスや残骸が残っている可能性があります。それに対して、ワクチン接種によって活性した免疫細胞が働き、それらを一掃したのではないかと考えられているようです。

N501Y、E484K、2つの変異ウィルスの違いと展開

続いてのトピックスとして、変異ウィルスがあげられました。変異ウィルスについては既に若干触れていますが、もう少し丁寧に解説したいと思います。

まず変異株というのが何なのかを簡単に説明したいと思いますが、変異株はコロナウィルスの突起のタンパク質の構造が変わった株を指します。

大きな変化があるわけではありませんが、マイナーチェンジによって強力になったものが変異株として問題視されています。

特に注目される変異株としては、N501YとE484Kの2つがあります。

それぞれの特徴として、N501Yは感染力や重症化率が高いというのがポイント。そして、E484Kは1度感染したり、ワクチン接種により抗体を持っている人に対しても感染力がある(免疫回避と言います)と言う点です。

そして、このN501Y、E484K変異の二つの特徴を併せ持つ変異株が現在増加しているというのが非常に恐れられています。よく耳にする変異株にはイギリス型、南アフリカ型、ブラジル型の3つがありますが、イギリス型はN501Y変異のみで、現在はこれが全国的に猛威を振るっています。

一方で南アフリカ型、ブラジル型は日本国内での報告症例数は多くありませんが、N501Y変異、E484K変異の両方を持っており、今後の増加が恐れられています。

イギリス型南アフリカ型ブラジル型
N501Y変異変異あり変異あり変異あり
E484K変異変異なし変異あり変異あり

トピックスの中では、ブラジルのマナウスの例を紹介していました。

マナウスでは昨年4月頃に従来株が大流行し、住民の約7割が感染したほどだったのですが、昨年12月頃から第2波が始まり、若い世代への感染拡大や従来株に感染した人に対する再感染が広がりました。

この時に広がったのが、まさにブラジル型だったのです。

E484K変異株に対するワクチンの効果の論文では、ファイザーワクチンの効果がおよそ10分の1になっていることが報告されていました

Resistance of SARS-CoV-2 variants to neutralization by monoclonal and serum-derived polyclonal antibodies

ただし、その一方で、プレプリントではありますが、キラーT細胞はE484K変異にも働くので、感染した場合であっても、重症化予防に関しては効果が変わらないことが期待されているということで、抗体とキラーT細胞という2つのメカニズムをもつmRNAワクチンの優秀さがここで生かされているようです。

ワクチン開発戦略を新たに考え始めている

このように、変異株が増加していく中で、今後のワクチン開発戦略としては、以下の2つの戦略が考えられているそうです。

  • ブースターショット
  • ワクチン修正

ブースターショットと言う方法は、通常2回接種をしているワクチンを3回接種することで強力に抗体を産生する方法になります。この方法は、既にあるワクチンを用いるため、安全性試験などのハードルが小さく、短期間での対応が可能となります。

一方のワクチン修正法は変異株が出てきた場合に、mRNAワクチンの情報を変異株の情報に書き換えるという方法です。既にあるワクチンの修正となるため、開発期間はそこまで長くはなりませんが、それでも安全性試験を新たに行う必要があるため、リードタイムが長くなります。

AIを用いた日本の今後の最新予測

最後に今後の日本での感染者の変動を筑波大学の倉橋教授による東京都の感染者数の予測シュミレーションが紹介されました。

今までと同程度の社会制限の場合の今後の感染者の予測

現状の東京都をモデルに今後の感染シュミレーションを行うと、5月中旬に4波、10月に5波の予想がされ、それぞれの感染者数は約1900人/日、3500人/日となっていました。

ワクチン接種による今後の感染状況の変化予測

イスラエルの論文で示された94%の発症予防のデータ、1日あたり約0.5%の都民が接種できる(想定される最大数)と想定すると、5月の4波はほとんど効果なし、10月の第5波は約1100人/日となり、かなり抑えられる計算となりました。

ワクチンに加え、緊急事態宣言の発動を行った場合のシュミレート

次に、ワクチン接種に加え、緊急事態制限並みの行動制限を加えると、5月の4波でも感染者数が約1400人/日程度まで抑えられ、1月の第3波の約1600人/日よりもピークが抑えられていました。さらに、第5波では約500人/日程度に抑えられる計算となりました。

南アフリカ型またはブラジル型(E484K変異)が増加した場合のシュミレート

一方で、南アフリカ型やブラジル型が増加した場合のシュミレーションも紹介されました。

この時の計算では、感染力が50%増加、ワクチンの効果が20%と仮定してシュミレーションを行ったところ、4月の初旬に感染者が10名で、ワクチン接種や緊急事態宣言を行ったと想定しても、7月には感染者が1800人/日となり、さらに10月には3000人/日を越える感染者になることが予想されました。

には、ワクチンの効果はほとんど見込めないため、急激な増加が予測されます。具体的には、緊急事態宣言並みの大きな行動制限を行っても第5波での人数は3000人/日を越えます。

イギリス型(N501Y変異)が増加した場合のシュミレート

同様にN501Yのみの変異ウィルスであるイギリス型が増加した場合でも、9月ころまでの軌跡はほとんど変わらず、10月以降にワクチンの効果が出始め、10月のピークでは約2500人/日程度となる予測でした。

かなりショックなシュミレーション結果ではありましたが、そうは言っても、ワクチン接種によって重症化も抑えられるので、医療崩壊を起こさないという方向には進むのではないかということでした。

すこし興味深かったのは、こういったモデルの中で、高齢者ではなく、若者を中心にワクチン接種をすることで感染者も減少するし、重症化もさほど多くならないというシュミレーションが出ていて、ワクチン接種戦略が高齢者優先と言うシナリオだけにこだわる必要はないということを仰っていました

さいごに

ここまで読んで下さりありがとうございました。非常に興味深い内容が盛りだくさんでしたね。わたしの記事はテレビを見てざっと書いた形でしたので、興味がある方は是非、論文の原本も覗いてください。

NHKスペシャル、勉強になりますね。それでは。

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食品会社勤務の企業研究員。公衆衛生の講座に在籍する、社会人博士課程の大学院生でもあります。食の機能性研究、腸内細菌の研究に軸を置いています。興味関心は公衆衛生、疫学。統計の専門家に憧れます。興味のある研究について、Twitterやブログで発信しています。