最近、とても話題になっている機能性表示食品の1つにヤクルト1000があります。テレビでマツコ・デラックスさんがヤクルト1000を飲んでから眠りの質が上がったと絶賛したことから、火が付いたようです。
ヤクルト1000はヤクルト社が満を持して発売した初の機能性表示食品で、「腸内環境の改善」「睡眠の質改善」「ストレスの緩和」のトリプル表示になっています。ヤクルト菌(乳酸菌シロタ株)にはさまざまな機能がありますが、生活習慣病でも免疫でもなく脳腸軸の機能に着目したのはさすがですよね。
ですが、ヤクルト1000の臨床試験によると、8週間の継続摂取が必要であり、ストレスの緩和も睡眠の質改善も、効果は限定的なものですので、過度な期待はしない方が良いかもしれません。この記事では、ヤクルト1000の機能性表示食品の届出資料や乳酸菌で報告されているその他のエビデンスを紹介しながらヤクルト1000について詳しく紹介したいと思います。
過度な期待は厳禁、あくまでも食品です
ヤクルト1000の機能や飲み方について
初めにヤクルト1000の機能と飲み方について紹介します。パッケージに記載されている内容に従うと1日当たりの目安量は1本です。また、この機能は1回飲んで効果が出る類のものではなく、継続的に飲み続けることが必要ですが、届出資料に記載されている論文を見る限りでは、8週間ほど飲み続けることが必要です。
ストレス緩和も睡眠の質改善も機能は微妙
では、つぎにストレスの緩和と睡眠の質改善の機能について、どのくらい効果があるのかを紹介します。どちらも、ポジティブな結果が示されていますが、さほど強い効果があるとは言えないのが正直なところです。わたしが論文を確認した印象をざっと紹介すると、ストレスが大きいときに、おなかを下しやすいなど、腹部症状を伴う方は飲んでよいと思います。また、睡眠の質は脳波のデータでは改善が見られるみたいですが、あまり効果を実感できないみたいなのと、11週間とかなりの期間、飲み続けたにもかかわらず、効果が微弱な点は気になるところです。
ストレス緩和はメタアナリシスが厳しい
ストレス緩和の機能をおすすめしない理由
わたしがストレス緩和の機能についてあまりお勧めできない、もう一つのポイントはメタアナリシスにあります。
乳酸菌シロタ株(ヤクルト菌)の論文ではないのですが、乳酸菌やビフィズス菌などのプロバイオティクスによるストレス緩和の効果を調べた論文は実は意外とたくさん報告されています。当然、効果があった研究もあれば、効果がなかった論文もありますが、このような複数の臨床研究の結果を統合して一つの結論を出す研究をメタアナリシスなどと呼びます。そして、プロバイオティクスによるストレスの緩和などを調べたメタアナリシスが既に複数報告されているのですが、そのほとんどで効果が微弱です。
脳腸相関と言う研究分野は非常にインパクトの高い分野ですが、まだまだこれからなんだと思います。
睡眠の質改善はメタアナリシスで効果があった
一方で、睡眠と乳酸菌についてもメタアナリシスが報告されていますが、こちらは1本しかありませんでした。プロバイオティクスの摂取が睡眠の質を改善したという結果のようです。また、詳細な解析によると、摂取期間が8週間以上で健康な人ほど効果があったと言うことです。
ヤクルト1000の論文では睡眠の質改善は脳波のデータが中心で、あまり効果を体感できなかった点など、すこし一致しない点もありますが、基本的にはこのメタアナリシスの結果に近い内容なのかなと思っています。
それでは、次に実際の論文の効果を紹介したいと思います。
8週間毎日摂取してどれくらい効果があるの?
ヤクルト社の論文にあるストレスに対する効果
ヤクルト社が行った臨床研究は大学生を対象に大学のテスト前8週間、毎日ヤクルト1000かプラセボを飲んでもらうという試験でした。データを見ると、感覚尺度でストレスを評価した結果がわずかに低い値を推移していた点とテスト前日のだ液中のコルチゾールというストレスを測定する指標で差がありました。ですが、正直なところ、ストレスのレベルが改善したかと言うとそれほどでもなく、コルチゾールの値を見ると飲み始めて数週間の間はヤクルト1000の方が高かったり、ちょっと不安定な結果でした。
ポイントだと感じたのが、腹部症状に関しては、かなり改善しているようで、ストレスが腹痛、下痢、便秘などの腹部症状として出やすい人にとってはQOLを改善し、ストレスが緩和されるのではないかと思いました。
ヤクルト社の論文にある睡眠に対する効果
一方で、睡眠の質を調べた研究ですが、こちらもストレスの研究と同じ試験の中で、睡眠中の脳波や睡眠の質に関するアンケートに回答しています。この試験結果もポジティブな結果なのですが、大学のテスト前8週間、ヤクルト1000を飲み続けた結果、効果が出ているのがテストの後なんですね。つまり、テスト前はいくらヤクルト1000を飲んでも、睡眠の質改善はさほど期待できないけれども、テストの後に睡眠の質がより回復するというイメージです。基本的には試験期間中の睡眠の質を高めたいと思うかもしれませんが、そこまでは期待できないというのはつらいところです。
さいごに
この記事を読んで、みなさまはヤクルト1000を飲みたいと思いましたか?ちょっと微妙だと思いましたか?正直なところ、エビデンスのキレとしては、めちゃくちゃよい訳ではありませんが、個人的には、食品の機能性と言うのはこのくらいのものなのかなと思っています。いや、むしろちゃんと臨床研究で有意な効果が認められていて、その上、メタアナリシスまであるなら、普通にすすめても良いかなと思います。ただ、あくまでも食品なので効果の強さはマイルドだと言うことは忘れないようにしてほしいなと思います。
参考文献
- 消費者庁 機能性表示食品届出資料 届出番号D279 Yakult(ヤクルト)1000 LINK
- Irwin, C., McCartney, D., Desbrow, B., & Khalesi, S. (2020). Effects of probiotics and paraprobiotics on subjective and objective sleep metrics: a systematic review and meta-analysis. European journal of clinical nutrition, 74(11), 1536–1549. https://doi.org/10.1038/s41430-020-0656-x