こんにちは。この記事に興味を持ってくださりありがとうございます。機能性表示食品の中に口腔内フローラを改善するロイテリという商品をご存じですか?
口腔内フローラというのは口の中の細菌のことです。口の中にはさまざまな細菌がいます。なかでも注意しなければいけないのが虫歯や歯周病などの原因となる細菌です。
一般的には、ブラッシングやマウスウォッシュなどの日常のケアで、細菌の増殖を抑えることが大事ですが、その一方で、悪い細菌が増殖しにくいように、良い細菌を摂取するというアプローチもあります。
ロイテリは乳酸菌の一種でロイテリ菌という細菌が有効成分となるプロバイオティクス素材です。発酵食品や腸内細菌のブームもあり、良い細菌を摂取することの大切さは、徐々に認知されていると思いますが、口腔内の細菌はプロバイオティクスでどのくらい変化するのか?はまだまだエビデンスが少ないように思います。
そこでこの記事では口腔内フローラを改善する機能性表示食品、ロイテリの届出資料から、どのようなエビデンスが報告されているのかを紹介したいと思います。
- 「ロイテリ」はロイテリ菌という細菌が有効成分で歯周病予防の機能性表示食品。
- 届出資料を見ると、まだ論文数は少ないけれど、ポジティブな結果が出ている。
- 歯周病予防はブラッシングが基本なので、ロイテリ菌はあくまでも補助的なものです。
Pon(ブロガー・食品開発・疫学研究)
この記事を書いているPonは、食品メーカーの研究職で、大学で公衆衛生を学んでいます。食品の機能性研究を中心に、健康に関する情報をBlogやTwitterで発信しています。
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機能性表示食品、ロイテリってなに?
さっそくロイテリについて紹介したいと思いますが、ロイテリはロイテリ菌という乳酸菌の1種を有効成分としたオハヨー乳業が販売している機能性表示食品です。口腔内フローラを改善し、歯ぐきを健康にしてくれます。
下記の通り、ヨーグルトとサプリメントがあります。
機能性表示食品って何?
機能性表示食品というのは、名前の通りですがパッケージに健康機能の表示が認められている食品です。
通常の食品はパッケージに「血糖値が下がる」「コレステロールが下がる」といった表示が禁止されています。食品には医薬品と同じような薬理作用があるわけではないので、健康と言うとても大事な文脈の中で誤解を与えてしまうからです。
そのため、パッケージに健康機能を表示するためには「特定保健用食品」として認証してもらうか、「機能性表示食品」として届出(実質審査)を行うなどの必要があります。
機能性表示食品の数は2022/2/11時点で5000商品以上が届出されており、非常に大きなマーケットですが、この中で歯周病関連の商品は限られています。
私が知っている限りでは今回紹介したロイテリ(ヨーグルト、サプリメントの2商品)と下記の湖池屋のピンキー(ノーマル、ヨーグルト、ブルーベリー、ミントの4商品)がある程度です。
機能性表示食品は届出制ですが、実質のところは審査のような制度なので、ちゃんとエビデンスがある商品と言うことになります。
そうは言っても、機能性表示食品にもあやしい商品もいっぱいあるので次にエビデンスを解説するよ!
口腔内フローラ改善って、どのくらい効果があるの?
それでは、ここからロイテリのエビデンスを紹介したいと思います。
まず、ロイテリ菌がどんな細菌かを簡単に説明します。Wikipediaで紹介されているレベルでは、下記のような情報が出てきます。
- 人間を含む多くの動物が保有するメジャーな乳酸菌
- 幅広いpHで生息が可能なため、口腔内でも、腸内でも定着する
- ロイテリンという抗生物質を分泌し、歯周病菌などの悪い細菌の増殖を抑える
ちなみに後で紹介したいと思いますが、ロイテリ菌は腸内細菌としても有用な細菌と言われています。
届出資料のエビデンスのポイント
では、この届出資料を解説していきたいと思います。こちらの届出資料は、1報の論文を引用したシステマティックレビュー(SR)となっています。
引用文献が1つのSRの機能性表示食品はいくつかありますが、基本的にはとても印象が悪いです。まあ、1本しか論文が無ければそれでSRを書いて、届出を行うのがメーカーの現状です。これは同じメーカーで働く身の私は良く分かります。
正直、論文が1本という時点でちょっと不安になります。
ロイテリ関連の論文は結構出ているようなのですが、不都合な論文を除外しているのか、制度上使用できない病者が含まれた論文だったのかは分かりません。
この届出では評価項目が「口腔内フローラを改善し、歯ぐきを丈夫に健康に保つ」となっています。この届出にあった研究論文が少なかったのかもしれません。
さて、この届出資料で引用している論文ですが、届出資料によると、
- 歯周病の人にロイテリ菌を2億個含むガムを2週間食べてもらいます。
- その結果、歯ぐきの炎症が改善した。
となっています。非常にシンプルであまり良く分かりません。実際の論文にはもう少し詳細な情報があり、2種類のロイテリ菌(LR1、LR2)を評価して、
- 歯肉の炎症は1種(LR1)だけ改善しています。(プラセボとの比較)前後比較ではプラセボを含めすべての群で改善しています。
- プラークも両方とも改善しています。(前後比較)
- 細菌の定着を確認したらLR1は65%の人で、LR2は95%の人で検出された。
という結果です。同じロイテリ菌でも種または株レベルの違いが機能に影響している可能性はありますが、基本的には良い結果のようです。
また、歯肉の炎症はLR2は改善していないわけではなく、ブラッシング指導もしているため、プラセボでも炎症が改善しているのですが、LR1はプラセボよりも改善していたということでした。
オハヨー乳業で使用しているロイテリ菌(L.reuteri DSM 17938株)はこの研究のLR1と思われます。(確認できませんでした)
細菌の定着(コロニー形成)まで見ていて、たった2週間続けただけで定着しているのだとすれば、これは摂取を続けていれば、口腔内の環境改善に貢献するかも!と思いました。
食べ方など、どんなことに注意したらいいの?
ロイテリの食べ方ですが、サプリメントはブラッシングを行った後に口の中でゆっくりと溶かすように摂取するのが良いと思います。
一方で、ヨーグルトは正解が分かりません。理屈としては歯周病菌が増殖しにくいようにマウスウォッシュを行った後が良いとは思います。でも、夜のブラッシングの後に食べるわけにもいかないので、朝や日中に食べることになるのかな~と思います。
ちなみに、最近の研究ではヨーグルトが歯周病を予防するという研究報告もあるので、そこまで食べ方を気にしなくても良いのかもしれません。
また、機能性表示食品の届出資料で引用している論文ではガムを摂取しているので、サプリメントでもヨーグルトでも根本的に摂取形態が異なっていますのでそこは注意しましょう!
また、歯周病の治療はブラッシングが一番大事です。フロスなども含め、しっかりとブラッシングを行い、マウスウォッシュなどを使って歯周病細菌が増殖しない環境を作ることを最優先にすることが大切です。
ロイテリ菌はまだまだ注目される期待の細菌!
ここまでは機能性表示食品のロイテリの解説を行いましたが、最後に少しだけロイテリ菌の機能性について、その他の研究を紹介したいと思います。
まず、ロイテリ菌を3ヵ月摂取した後の口腔内細菌の変化を調べた米国の研究がありますが、ほとんど変化がありません。先ほどの研究ではロイテリ菌が2週間検出していたとありましたが、ちゃんと定着しているわけではない可能性が高いです。
細菌が定着しないというのは、腸内細菌の研究でも同じような議論がありますね。この場合には、摂取をやめたら、細菌もいなくなってしまうので、摂取し続けることが必要なのかなと思います。
ロイテリ菌の介入試験は臨床試験登録されているものもあるので、今後、ポジティブな結果が出たらいいな~と思います。
また、ロイテリ菌は腸内でオキシトシンを産生し、社交性を高めるという研究がマウスレベルで行われています。私は、腸内細菌の研究に興味があるため、この文脈でもロイテリ菌はとても面白い細菌だなと思います。
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参考ロイテリ菌が自閉症モデルマウスの社会性を回復させる
自閉症スペクトラム症は先天性の病気ですが、後から形成されるはずの腸内環境を改善することで社会性を回復させる可能性があるようです。興味があったら読んでみてください。
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さいごに
ここまで読んで下さりありがとうございました。今回の記事のポイントは、
- 「ロイテリ」はロイテリ菌という細菌が有効成分で歯周病予防の機能性表示食品。
- 届出資料を見ると、まだ論文数は少ないけれど、ポジティブな結果が出ている。
- 歯周病予防はブラッシングが基本なので、ロイテリ菌はあくまでも補助的なものです。
となります。ロイテリ菌は非常に興味深い細菌です。今回紹介したのは機能性表示食品のオハヨー乳業のロイテリですが、実はサプリメントで色々と売られていて、わりと手軽に購入できます。
積極的に他社品をお勧めするわけでもないですが、もし他社品で機能性食品でないものを考えるのであれば、Lactobacillus Reuteri(ラクトバシラス・ロイテリ)DSM 17938株を使っているかどうかを1つのポイントに考えると良いかもしれません。
参考資料
- 届出食品の科学的根拠等に関する基本情報(一般消費者向け):ロイテリ お口のサプリメント LINK
- 届出食品の科学的根拠等に関する基本情報(一般消費者向け):PinkyFRESH(ピンキーフレッシュ) LINK
- Krasse, Per et al. “Decreased gum bleeding and reduced gingivitis by the probiotic Lactobacillus reuteri.” Swedish dental journal vol. 30,2 (2006): 55-60. LINK
- Romani Vestman, Nelly et al. “Oral microbiota shift after 12-Week supplementation with Lactobacillus reuteri DSM 17938 and PTA 5289; a randomized control trial.” PloS one vol. 10,5 e0125812. 6 May. 2015, doi:10.1371/journal.pone.0125812 LINK
- The effect of probiotic Lactobacillus Reuteri Prodentis consumption on gingival crevicular fluid inflammatory response and metagenomic profiles of oral microbiome in orthodontic patients. ClinicalTrials.gov. NCT04847960 LINK