健康

NHKスペシャル パラ陸上の女王マクファーデンの強さに脳科学で迫る

こんにちは。この記事に興味を持ってくださりありがとうございます。以前、割と頻繁にNHKスペシャルのまとめ記事を作成していたのですが、色々あって(99%半沢直樹)、久しぶりにNスぺの記事を書きます。

今回は、パラリンピック、陸上競技の車いすレースで圧倒的な強さを誇る女王マクファーデン選手の強さに、脳科学から迫るという内容だったのですが、とても刺激的な内容でした。彼女の障害者としての人生と、アスリートとしての強さが脳科学によって、まさに点と点がつながるような内容で、本当にすばらしい内容でした。

この記事は、10/4に放送されたNHKスペシャルを参考に、書いた記事になります。この記事を書いているわたしは、普段は食品会社で働いており、健康や食に関する記事を書いているブロガーです。少しでも興味を持って読んで頂けたら嬉しいな~と思います。

マクファーデン選手の競技成績とその生い立ち

競技成績

はじめにマクファーデン選手の生い立ちや競技成績などを紹介したいと思います。(※画像はWikipedia – Tatyana McFaddenより引用)

まず、マクファーデン選手は車いすの陸上選手です。パラリンピックでの競技成績では、下記の通りです。2004年のアテネで初出場し、合計16個のメダル、しかも2016年のリオパラリンピックでは、金メダル4つと、どちらも僅差での銀メダル2つという、まさに怪物と言うにふさわしい成績をたたき出しています。ちなみに冬季パラリンピックにも出場し、スキーのクロスカントリーで銀メダルも取っています。

金メダル銀メダル銅メダル
2016 リオ 4種目400M800M1500M5000M2種目100Mマラソン
2012 ロンドン3種目400M800M1500M1種目100M
2008 北京3種目200M400M800M1種目4×100M
2004 アテネ1種目100M1種目200M

陸上の世界選手権などの記録も素晴らしいのですが、もう一つ、マクファーデン選手を有名にしたのは、マラソンでの実績です。シカゴ、ボストン、ニューヨーク、ロンドンの4大マラソンを1年間で全て制覇する年間グランドスラムを男女通じて初めて達成しています。

しかも、2013年から2015年まで、3年連続年間グランドスラムという快挙を成し遂げています。

生い立ち

そんなマクファーデン選手ですが、彼女の生い立ちはとても過酷なものでした。彼女の生まれはロシアですが、二分脊椎症という、生まれながらに下半身まひをもっており、医師からは長くは生きられないだろうと言われ、育てることができなかった実母が孤児院に預け、そこで育ちました。

妹もいたようですが、妹も同じ病気を持っており、実際に半年ほどで亡くなってしまったそうで、彼女が今、こうして健康に生きていることだけでも奇跡的なことなのかもしれません。

彼女は孤児院の中で、靴がもらえない、一人仲間外れにされるといったコンプレックスを経験しますが、足の代わりに手を使い、逆立ちで歩き、困難を乗り越え続けました。とても過酷なものだったと思います。

そして6歳のときに、彼女に転機が訪れます。

米国から孤児院を見学に来た、デボラ・マクファーデン氏が彼女の養母を申し出て、米国に移住したのです。詳しくは紹介されていませんでしたが、米国に移住してから、障害者スポーツなども始めたのではないかと思います。

マクファーデン選手のスポーツ選手としての強さ、幼少期の生い立ちの話は、どちらもものすごいストーリーになると思うのですが、今回のNHKスペシャルはこの二つの話を、脳科学で見事に結びつけています。

幼少期の経験が脳の発達に与えた影響

超適応による究極のバランス力

まず、マクファーデン選手の強さを調査するために、脳科学研究者によるマクファーデン選手の詳細な解析が行われていたのですが、彼女の強さの1つ目は精密なタイヤのこぎ方にあることが分かりました。

通常は、力の大きさなどには左右差がありますので、右のタイヤと左のタイヤをこぐ力に微妙なずれが出てきます。たとえ力の大きさに差がなかったとしても、タイミングなども含めるとぴったり合わせるということは極めて難しいはずです。

マクファーデン選手と同じクラブの他の選手のこぎ方を解析してみると、どうしても微妙な差が出てくるのですが、マクファーデン選手は驚くことに、ちからの大きさも、タイミングもぴったり一緒だったのです。

そして、彼女がタイヤをこぐときの、脳を解析すると、なんと手を動かしているのに、足の動きを支持する脳の部位が活性化していたのです。

このように、手を動かしているのに、足の動きを支持する脳の部位が活性化しているため、よりたくさんの指令を脳から手に送り、タイヤをこぐちからやタイミングを、より精密に制御することで、今回の試験のようにぴったり合ったのではないかと考えられました。

このように、まひしてしまった足の代わりに、手の動きに支持を送ったメカニズムを脳科学の分野では超適応と呼ぶそうで、マクファーデン選手の強さの一つである究極のバランス力が腸適応によって証明されたのです。

限界を超えてこぎ続ける

もう一つのマクファーデン選手の強さには、普通であれば短距離型のがっちりとした上半身の筋力を強みにしているのですが、短距離からマラソンまで全ての距離でトップアスリートとして活躍をしています。

この秘密を調べるために、心拍数を測定しながら限界までトップスピードで車いすをこぎ続けるという実験を行いました。

通常は心拍数が170を超えると、脳が命に危険があると考え、ストッパーとなるため、続けることができなくなります。マクファーデン選手と同じクラブのマラソン選手で実験をしてみたところ、心拍数が170を越えてから、約18分間トップスピードでこぎ続けることができました。

この記録は、マラソン選手のような持久力を必要とするトップアスリートの記録としては、妥当と言える結果のようですが、マクファーデン選手はなんと約28分間もこぎ続けることができたのです。

脳科学の観点で考えると、マクファーデン選手の脳は、競技を止めるストッパーの役割が効きづらくなっている可能性があるといいます。

どうしてそのようなことが起こっているのでしょうか?

おそらく、彼女が幼少期に逆立ちで歩き続け、それによって孤児院での過酷な生活を乗り越えることができたという成功体験を脳が記憶し、限界を超えてもストップをかけなくなったのではないかと考えられました。

さいごに

いかがでしたか?わたしは今回のNHKスペシャルですごいな~と思ったことは、とにかくマクファーデン選手が乗り越えた孤児院での過酷な日々が、彼女を世界一のアスリートに変える力となったことを、情緒的な物語ではなく、最新の科学を使って、点と点をつないでいくように説明されていることが、とても感動的であり、興味深かったです。

放送の最後には、マクファーデン選手の言葉が紹介されていました。(ちょっと間違えているかもしれません)

「わたしの人生は望むようにならないことの連続だった。

 でも、わたしはそれを乗り越える方法をかんがえ続け、挑戦し続けた。

 諦めずに戦い続けることができれば、どんな結果であっても、決してそれは負けではない。」

という言葉でした。

そして、マラソンのレースを終えた後、約12時間かけて42.195キロを走った市民ランナーのゴールを会場で迎えることを、慣例にしているエピソードをエンディングで紹介していました。

マクファーデン選手は、化け物と呼ばれるほどに筋骨隆々としたカラダを持ちながら、弱い人の気持ちを理解し、寄り添うことができる本当に偉大なアスリートだなと感じました。

オリンピック、パラリンピックは延期になってしまいましたが、彼女が来年のパラリンピックでいくつのメダルをとることができるのかを楽しみにしたいなと思います。

食品会社勤務の企業研究員。公衆衛生の講座に在籍する、社会人博士課程の大学院生でもあります。食の機能性研究、腸内細菌の研究に軸を置いています。興味関心は公衆衛生、疫学。統計の専門家に憧れます。興味のある研究について、Twitterやブログで発信しています。