はじめまして、こんにちは。この記事に興味を持ってくださりありがとうございます。
みなさまは作業中にBGMを流しますか?わたしは社会人になってからはテレビがついていたり、音楽が流れているなかで作業をすることが増えましたが、中学、高校の頃は音が流れる中で勉強をするということは考えられませんでした。
友達の中で、ラジオを流しながら勉強している人がいたのですが、その友達はすごく優秀だったので、そんなこと、よくできるなーと思ったのを覚えています。
さて、そんな作業中のBGMについては、一般的には、適度なBGMであれば作業効率や集中力のUPにつながると思われているのかなあと思うのですが、実際に定量的に評価した結果、その逆で、BGMは作業効率を下げる!と結論付けた論文が2019年に発表されました。
少しでも作業効率を上げたいと思うみなさまであればきっと興味があるだろうと思いましたので、この記事で紹介をさせていただきます。
作業用BGMはどんなものでも一貫してダメ
今回取り上げるのは下記の論文になります。
Background music stints creativity: Evidence from compound remote associate tasks
Emma Threadgold John E. Marsh Neil McLatchie Linden J. Ball
Appl Cognit Psychol. 2019;33:873–888
まず、結論から紹介させていただきますが、この論文ではいくつかのタイプのBGMで作業効率を定量的に評価したのですが、どんなタイプのBGMでも基本的には一貫して効率を下げるようです。
どんな実験をしたのか紹介をしたいと思います。
まず大前提としてこの研究では、CRATという創造的な作業の評価を様々な環境の中で比較しているのですが、CRATが評価しているのは、単純作業ではなく創造を必要とする作業に焦点を当てているというのは一つ重要なポイントだと思います。
ですので、単純作業の場合には今回の論文は必ずしも当てはまらないということは承知しておいてください。
さて、実際の試験の中身なのですが、この論文では3回、BGMとCRATスコアの関係を評価した実験を行っています。簡単に試験の内容と結果をまとめると下記のようになります。
【実験1】無音と歌詞が良く分からない海外の曲をBGMに流したときの作業パフォーマンスを比較した結果、無音のほうが、明らかにパフォーマンスが高かった。
【実験2】無音と歌詞がないインストゥルメンタルをBGMに流したときの作業パフォーマンスを比較した結果、無音のほうが、明らかにパフォーマンスが高かった。
【実験3】無音と図書館内の雑音がある環境下そしてアップテンポで前向きな歌詞の曲をBGMに流した時の作業パフォーマンスを比較した結果、無音と図書館内の雑音では差がなかったが、BGMを流した場合には明らかにパフォーマンスが低かった。
この結果、いかがでしょうか?この実験1~3は直接比較しているわけではないので、とくにどのBGMで効率が低かったということまでは言及できないのですが、BGMを流すことが一貫して創造的な作業効率を下げてしまうことが示されています。
モーツァルトを聴くと頭がよくなるも都市伝説
ちなみに少し話はズレますが、BGMではなく、単純にクラシック音楽などを子供に聴かせると賢く育つということは聞いたことがありますか?
これは、モーツァルト効果と言って、米国では「The Mozart Effect」という商標まで取って荒稼ぎをした方がいるそうです。
初めてこの報告がされたのは1990年代前半なのですが、このモーツァルト効果の影響で音楽と学習効果に関する研究が世界中で行われるようになったようです。
しかし、残念ながら2007年にドイツの研究者によって完全に否定されることになります。
実はわたしも子供が生まれた時には、モーツァルトを聴かせてみようか?なんて言うことを妻と話した記憶があるので、2000年代でもけっこう普通にモーツァルト効果というのはCDなどの販売のPRに使われていたんだろうなと思います。
脳は同時に二つのことを処理することができない!
さて、話を今回のBGMに戻しますが、今回の研究結果のメカニズムについてわたしの考えも含めて紹介すると、脳は2つ以上のことを同時に処理することはできません。
これが今回の結果のメカニズムのすべてだと思っています。
聖徳太子は7人の話を同時に聞くことができたと言われていますが、わたしが小学生だったころに、テレビで「それはフィクションです」と専門家の先生がお話しされていて、テレビ番組の中で実験などが行われたのを見たことがあります。
わたしは歴史の教科書に書いてあって、勉強したばっかりのタイミングだったこともあり、教科書がこんなに当たり前のようにフィクションを歴史として教えてよいのかな?と疑問に思った記憶があります。
まあ、歴史は事実かフィクションかという話は別にして、結局、脳は同時処理ができないのです。
だから、今回の試験でも全く同じで音楽を聴いてしまうと、それだけで脳が同時処理しなければいけなくなってしまうので、パフォーマンスが落ちるということなのです。
一方で、図書館内のちょっとしたノイズレベルであれば問題ないという結果も、妥当な結果なのかなと思います。
これは、聞いてしまうことに脳がどこまで働いているかの問題だと思うのですが、わたしたちの脳はちょっとした雑音であれば、無意識の中で音を除外しているのかなと思います。
でなければ、ちょっとした物音などでも、いちいち脳がはたらいてしまい、くたくたになってしまいます。
また、個人的には完全に無音になると、ヒトというのは音を探しに行ってしまい、逆に気が散ってしまうのかなと感覚的に感じているので、雑音程度であれば、むしろプラスにはたらく要素もあったのかもしれないなあと思います。
まとめ
今回の記事をまとめると下記のようになります。
・創造的な作業をしているときはいかなるBGMでも一貫して作業効率を落とします。
・一方で生活音レベルの雑音は基本的には問題ありません。
・モーツァルト効果は都市伝説です。
・脳は2つ以上のことを同時に処理することができません。
ということになります。これを読むと、カフェなどで作業をするときは、必ずBGMが流れていると思うので、作業内容を単純作業だけにするとか、あるいはノイズキャンセリングのイヤホンを持ち歩いて普段から余計な音を拾わないようにするなど工夫をするとよいかもしれないなと思いました。
最後まで読んでくださりありがとうございました。今回の記事が、読んでくださったみなさまの何かお役に立てたらいいなと思います。