健康 食事

食事でがんや冠動脈疾患の死亡リスク低下!地中海食のエビデンス

2020-05-02

はじめまして。会社員 兼 ブロガーのPonです。わたしは食事と健康を軸に記事を書いています。

本日の記事では、世界で一番健康のエビデンスがしっかりとしている地中海食のエビデンスを紹介したいと思います。

地中海食というと、あまりピンとこない方が多いと思いますし、和食が一番健康でしょ!と思っている方も多いと思います。確かに和食はカロリーは低いのですが、塩分が高かったり、白い炭水化物である白米を主食としている点など、問題となる点もあるのです。

食事と死亡の関係を調べた研究では、日本人の死亡に最も影響が大きかったのは、塩分の高摂取、そして続いて全粒穀物の摂取不足でした。

最もこの研究では世界で一番、食事が原因で疾病になり、死亡した人数が少なかった国が日本であるという、日本人にとっては誇らしい研究結果も出ていますので、総じていうと和食は健康と言えるのだと思いますが、いかんせん、エビデンスは少ないのです。

だから、ちゃんとしたエビデンスのある質の高い研究を先ずは紹介したいと思っています。

まず地中海食の定義を確認しましょう

今回、紹介させていただくのは2003年にギリシャで行われた、

Trichopoulou A, Costacou T, Bamia C, Trichopoulos D.
Adherence to a Mediterranean diet and survival in a Greek population.
N Engl J Med. 2003 Jun 26;348(26):2599-608. PubMed PMID: 12826634.

という論文です。2003年ということで少し古いのですが、最新の研究の中で、地中海食を評価するのに、この論文で用いられた地中海食スコアというものを利用していたこともあり、地中海食というものの理解につながる研究だと思い紹介させていただくことにしました。

また、このNew England Journal of Medicineという雑誌はものすごくインパクトファクターが高い医学誌なのですが、この雑誌に食事の論文が載っているということ自体がめずらしかったので、興味があったということもあります。

この研究では地中海食が全ての死亡、環状心疾患による死亡、がんによる死亡に対して、予防的に関連があることを報告している論文です。

結果に入る前に、まず、この論文では、地中海食の特徴として、下記の項目を上げており、これらの項目を元に参加者の食生活を0~9点の10段階評価でスコア分けしています。

【伝統的な地中海食の特徴】
① 野菜、豆類、果物、ナッツ、全粒穀物の摂取量が多い
② オリーブオイルの摂取量が多く、飽和脂肪酸の摂取量が少ない
③ 魚の摂取量が中程度または多い(海からの近さによる)
④ 乳製品は主にチーズやヨーグルトの形で摂取量は低から中程度
⑤ 肉類の摂取量は少ない
⑥ アルコールは主にワインで、食事と一緒に定期的で中程度の摂取量

こんな形で、かなり具体的に地中海食の特徴をまとめて、全ての項目を定量的に評価して地中海スコアというものを出しています。

地中海食の研究は、基礎は昔からあったんだと思いますが、この地中海スコアというもので、しっかりと定量化したことで、その後に数々の地中海食のエビデンスをたたき出したのかもしれません。

地中海食はがん、冠動脈疾患、全ての死亡に対して予防的に関連する

シリアスな問診のイラスト

まず、この研究は約20000人のギリシャ人を対象に健康状態などを3年8カ月間(中央値)追跡した研究です。

コホート研究と言って、とても手間とお金がかかる大変な研究です。研究の追跡期間中に亡くなった方が275名でした。

この研究ではこれらの死亡について、全ての死亡、冠動脈疾患による死亡、がんによる死亡に分けて、比例ハザードモデルという解析方法を使って解析を行い、地中海食が予防的に効果があると結論付けています。具体的には、

・地中海食スコアが2ポイント上昇すると全ての死亡が25%下がる
・地中海食スコアが2ポイント上昇すると冠動脈疾患による死亡が33%下がる
・地中海食スコアが2ポイント上昇するとがんによる死亡が24%下がる

という結果でした。この結果はかなり大きな結果ですよね。わたしが特に重要だと思うのは、冠動脈疾患に対して特に予防的に働くことかなあと思います。冠動脈疾患は、食事が原因となる病気の中で、もっとも死亡に直結する可能性が高いため、予防がとても大切です。

食材別に効果が高かったものは果物・ナッツと脂質の質

ミックスナッツのイラスト(ナッツ)

最後にこの研究で食材別の効果の違いと脂質との関係について紹介をしたいと思います。まず、ポイントをざっくりとまとめると、

【食材について】
・死亡リスクを下げた食材は果物とナッツ
・下げているかもしれない食材は野菜、豆
・死亡リスクを上げているかもしれない食材は乳製品、肉、じゃがいも、卵
・どちらともいえない食材は穀物、魚、オリーブオイル、菓子
 (統計的にも効果が認められたものは果物とナッツのみ。)

【脂質について】
・一価不飽和脂肪酸、多価不飽和脂肪酸、飽和脂肪酸はいずれも死亡リスクと関連しない。
・しかし、飽和脂肪酸の摂取量に対する一価不飽和脂肪酸の比率が高いとリスクを下げる。

という結果でありました。ちなみにナッツと果物はひとまとめで解析しているので、ナッツが良いのか、果物が良いのかは言及できません。

魚やオリーブオイルはわたしの中では健康的な食材という認識があったのですが、この研究を見る限りでは、必ずしもそうとは言えないようです。

また、穀物には外皮をけずった白い炭水化物と、全粒穀物などの茶色い炭水化物がありますが、白い炭水化物は不健康な食材の代表、茶色い炭水化物は健康な食材の代表なので、これらをごっちゃにして解析したのはちょっと残念だなと思いました。

さいごに

看護師によるインスリン注射のイラスト(女性)

ここまで読んでくださりありがとうございました。この論文は地中海食と死亡の関係をまとめていただけでなく、食材別にも細かくデータを出していて、色々と参考になる研究だなと思いました。

地中海食は死亡の中でも特に冠動脈疾患に予防的に働くということでしたが、よく血管年齢なんていうものを聞くと思いますが、この血管年齢こそが冠動脈疾患などの指標になります。

自分はどうなんだろうと思う方は、健康診断でコレステロールや中性脂肪、血糖そして血圧など血管が関わっている項目を注意するとともに、血管年齢の簡易測定器などが薬局に置いてあることもありますので、ときどき測定してご自身の健康状態の参考にしたらいかがでしょうか?

コレステロール、中性脂肪、血糖、血圧などは引っかかった場合には、しっかりと早い段階で病院に行き、適切な治療を行うことが大切ですが、正常の範囲で高めだったりする場合には、食事をしっかりと気をつけることで、重症化を予防することができますので、是非今回の記事を参考に食生活を見直してください。

  • この記事を書いた人

Pon

食品会社勤務の元企業研究員(PhD)。食の機能性研究、腸内細菌の研究をメインにしていました。興味関心は公衆衛生、疫学、食品の機能性。好きな食べ物はカレーと杏仁豆腐。コテンラジオ、キングダムが好きです。統計の専門家に憧れます。興味のある研究について、Xやブログで発信しています。

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