はじめに
こんにちは。この記事に興味を持ってくださりありがとうございます。今日の記事は、認知症と睡眠の関連を調べたイギリスの研究の紹介です。先日、Nature communicationsで発表された論文なんですが、わたし的には、雑誌(Nature communications)のイメージとちょっと違っていて面白いな~と目を引きました。
認知症は高齢者が一番なりたくない病気だというのに、どんどん増えています。ですので、認知症の対策はとても大事だと思っています。
- この記事のポイント
- 睡眠時間は7時間がベスト!
- 睡眠時間が6時間未満の場合には、認知症になる可能性が30%上がる!
- 若いとき(50代)の睡眠時間の影響が大きい!
認知症関連の記事に興味がある方は、下記の記事も注目です! 日本食と言えば魚介類。心血管疾患や認知症予防のエビデンスについて β‐グルカンと脳腸相関のメカニズムを解説 認知症のリスクを腸内細菌で推定した研究 |
Pon(ブロガー)
食品会社勤務。社会人博士課程の大学院生。
腸内細菌や食品の機能性研究、公衆衛生などに興味があります。Twitterはこちら。気になった論文を共有したりしています。
25年という長期の追跡調査を行ったイギリスの認知症研究結果
それでは、本文の紹介に入りたいと思います。今回紹介する研究は、イギリスのコホート研究ですが、コホート研究の多くは10年ほどの追跡調査を行っています。
もちろん研究によってはもっと長い研究もたくさんありますが、研究費の打ち切りや、実務担当者など、様々な問題によって打ち切られてしまうこともありますね。
でも、認知症ってこの先10年の間に発症するリスクって言われてもピンと来なくても、25年と言われると、「どうなんだろう?」って思いますよね?
今回の研究は、タイトルの通りですが、25年間の追跡ですので、若いときに、後々、認知症になるリスクを知ることができる!ということで、読んでいて、自分事として考えやすいです!
試験結果①:認知症のリスクは睡眠時間が6時間未満で30%増加する
上のグラフはこの研究のメインの結果になります。年齢や性別など様々な要因を調整したうえで、認知症のリスクが睡眠時間によってどの程度変わるかを、睡眠時間7時間を基準に評価した結果です。
左側(a)と右側(b)のグラフでは調整の仕方がちょっと違っていて、右側の方が、重みをつけて調整をしているようなので、より現実世界に近い調整方法なのかもしれません。
言えることとしては、
- 睡眠時間7時間がもっとも認知症のリスクが低い
- 睡眠時間が4時間未満は、認知症のリスクは3倍以上
- 睡眠時間が7時間よりも長い場合に、認知症リスクが上がるかは不明
長時間睡眠については、右のグラフと左のグラフで結果が全然違いますね。ですので、データから判断するのは難しそうですが、計算方法によってはリスクを上げるし(左のグラフ)、計算方法によっては差が無い(右のグラフ)ということは、睡眠時間が7時間よりも長い人は認知症の割合は高いという実はあるのですが、他の要因によって結果が強く出ているのかもしれません。
分かりやすい例でいえば、高齢者ほど認知症になりやすいはずですが、高齢者のほうが、就寝時間は早く、睡眠時間も長そうです。こういった影響を完全に取り除けていないのかもしれません。
試験結果②:後から睡眠時間を長くしても効果はあまりない!
続けて、もう少し参加者の睡眠時間の傾向を分解した、層別解析の結果を紹介したいと思います。
睡眠時間の変化 | 認知症/人数 | 調整後リスク比 |
短時間(6時間未満) | 94 / 1253 | 1.29 (0.98–1.69) |
標準的(約7時間) | 132 / 2353 | 1.00 (基準) |
長時間(8時間以上) | 32 / 430 | 1.26 (0.85–1.85) |
50歳:短時間 ⇒ 70歳:標準的 | 59 / 1006 | 1.28 (0.94–1.74) |
50歳:標準的 ⇒ 70歳:長時間 | 45 / 870 | 1.11 (0.79–1.56) |
50歳:標準的 ⇒ 70歳:短時間 | 36 / 462 | 1.16 (0.80–1.56) |
上の結果は認知症発症に関係が強いのが50歳の睡眠なのか、70歳の睡眠なのかという結果を示している、とても興味深いデータです。
結果は、
- 50歳のときに短時間だと28%認知症リスクを上げる
- 70歳のときに短時間だと16%認知症リスクを上げる
- ずっと短時間だと29%認知症リスクを上げる
という結果で、50歳のときに睡眠時間が短いと、ずーっと短い人と認知症のリスクは大して差が無いということが言えそうです。この結果はなんとなくそうだろうな~とは思いつつも、目をそむけたくなるような結果でした。
わたしは、常に寝不足と闘っているような所があるので、早いうちから睡眠時間を改善しないと、認知症リスク30%アップになってしまうなと思いました。
さいごに
ここまで読んで下さりありがとうございました。今回の論文のように、特に若い時期の生活習慣が重要なポイントだと言える結果は、私たちの参考にもなるなと思いました。
私が感じた特に重要なポイントは、
- 睡眠時間は7時間がベスト!
- 6時間未満の場合には、認知症になる可能性が30%上がる!
- 若い時期(50歳)での睡眠時間が重要!
の3点でした。特に3つ目の若い時期の睡眠時間の影響が特に大きいという点は、今回のように25年間と長期の追跡を行ったからこその結果じゃないかなと思います。
今回の研究では睡眠時間の影響を見たものでしたが、個人的には睡眠の質も興味があります。Healthy Body Makingさん(Twitter: @HBM_2020)のブログではスマートウォッチの使用によって睡眠の質改善などが報告されていて興味深いなと思いました。スマートウォッチの健康効果は今後ますます注目されそうですね。よかったら読んで下さい。
外部リンク:ウェアラブルデバイスを装着するだけで睡眠の質が改善するかもしれない
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この記事が、なにかお役に立てたらうれしいです。
それでは。
参考文献
Sabia, S., Fayosse, A., Dumurgier, J., van Hees, V. T., Paquet, C., Sommerlad, A., Kivimäki, M., Dugravot, A., & Singh-Manoux, A. (2021). Association of sleep duration in middle and old age with incidence of dementia. Nature communications, 12(1), 2289. https://doi.org/10.1038/s41467-021-22354-2