こんにちは。いつも読んで頂きありがとうございます。本日は歩数と死亡に関する米国の研究を紹介したいと思います。本来であれば、システマティックレビューや日本人でのデータなどが紹介できたら読者のみなさまにとっては価値が高いと思うのですが、ちょうど今年、JAMAという著名な医学誌から発表された論文(参考文献1)がありましたので、紹介したいと思います。
この記事のポイント
- たくさん歩けば歩くほど、死亡のリスクは下がります。
- ただし、それには男女差があって、高齢女性は7,500歩を超えると死亡のリスクが上がります。
- 歩くスピードが早いほど健康に良い印象ですが、統計的には明らかな違いはありませんでした。
この記事を書いている私は、食品メーカーに勤める企業研究員で、大学に出向して公衆衛生を学んでいます。この記事はリハビリ専門の病院に勤めている先生の話をきっかけに興味を持って調べた内容となります。
たくさん歩くほど死亡のリスクが下がります。でも女性は歩きすぎにも注意!
それでは早速この研究の紹介に入りたいと思います。この研究は米国で行われた研究で約5,000人の研究参加者に活動量計を7日間装着し、その後の死亡リスクを比較した研究です。
非常にシンプルな研究デザインですので結果もとても分かりやすいと思います。
まず、上の画像の左(a)のグラフが参加者全体の死亡率を縦軸に、1日当たりの平均歩数を横軸にプロットしたグラフになりますが、1日当たりの歩数が多ければ多いほど死亡率が下がっていますね。ただ、10,000歩を超えると頭打ちとなり、12,000歩を超えるとほとんど差がないようです。
この結果を考慮すると、1日当たりの歩数は多ければ多いほど長生きにつながりそうですが、10,000歩を超えれば、活動量としては十分なのかなと思います。
ですが、右上(b)のグラフを見ていただくと、歩数と死亡率の関係は男女差がかなり大きいことが分かります。特に面白いなと感じる点は、男性だと歩数が多ければ多いほど死亡リスクが下がっているのに、女性だと10,000歩を超えると逆に死亡リスクが上がります。
実は死亡率と歩数の関係は年齢差も大きく、右下(c)のグラフを見ても明らかなように、高齢な人ほどたくさん歩くことで死亡のリスクが劇的に下がる傾向が出ます。
まあ、これは若い人は歩数に関係なく死亡率は低いので当然の結果なのですが、実は今回の研究と類似した研究(参考文献2)では、65歳以上の女性だけで同様の試験を行った結果、約7,500歩を超えると死亡のリスクが上がる傾向があり、自分の体力を考えながら適切な歩数を考えて継続するということがとても大切なようです。
どうしても、たくさん歩くという点に意識が向きがちなので注意したいところですね!
歩くスピードが早いほど死亡のリスクが下がりそうですが、言及できません
さて、次にこの研究では歩く速度と死亡率の関係も調査しています。1分当たりの歩数をケーデンスという呼び方をしたりしますが、上のグラフは左から(a)1日の平均速度、(b)最も速い連続30分の平均速度、(c)最も速い1分間の平均速度を示しています。
速度はある程度安定して歩いている状況でなければ計測できないためデータがない場合も多いです。よく考えてみれば当たり前ですが、例えば連続30分の平均速度なんて、そもそも連続30分歩いてなければデータ欠損しますし。
で、この結果をまとめると、結論としては歩くスピードと死亡リスクには統計的な関連は見られませんでした。グラフだけ見ると、速度が速い人は少し死亡率が低いかなと思ったりもしますが、一貫したデータにはなっていないですね。
つまり、このデータも踏まえてまとめると、ゆっくりでもいいのでたくさん歩くことが大切と言うことがこの研究のメインメッセージになるかな~と思います。
健康のためには軽くでも運動することがとても大事!
厚生労働省のアクティブガイドラインでは、園芸などの軽い作業でも良いので、1日60分くらいの活動が推奨されています(65歳未満)。60分の活動を歩数に換算するとだいたい8,000歩くらいのようなので、今回の研究結果から考えても、とても合理的な値なのかな~と思います。
ガイドラインには、時には走ったり、トレーニングをしたりと、筋肉に負荷がかかるような活動が含まれていれば、さらに良いと書かれていますが、今回の研究結果から考えても、そこまで筋力にこだわる必要はないかもしれませんね。
ですが、できることなら少し運動を取り入れることもよいかもしれません。下記の記事ではどんなスポーツが死亡のリスクを下げたかを調べた、私のお気に入りの論文を紹介した記事です。よかったら、読んでみてください。
また、もしも運動不足だけど、一人ではなかなか運動を続けられないという方は、ジムなどに通ってみるのもオススメです。経費はかかりますが、将来の医療費をその分削減できると考えれば、その経費は出費というよりも、投資と言うことができます!そして、何より、運動が苦手という人にとって、ジムなどはえ!?と思うくらい楽しいはずです。
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まとめ
この記事では、歩数と死亡リスクについての最新の研究を紹介しました。まあ、驚きは少ないかなと思いますが、やっぱりたくさん歩くほど死亡のリスクは下がるというエビデンスはとても大切です。
ただ、ポイントとして覚えていただきたいのは、
- 女性高齢者では7,500歩を超えると、逆に死亡リスクが上がるなど、年齢や性別に応じてこの結果は多少の違いがあるということ
- 歩行速度はあまり気にしなくていいということ
- ガイドラインでは8,000歩以上が推奨ですが、この研究からは、男女問わず、10,000歩が推奨される目標値ということ
かなあと思います。この記事を見て、自分の健康状態などを振り返るきっかけになったら嬉しいです。ありがとうございました。
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参考文献
- Association of Daily Step Count and Step Intensity With Mortality Among US Adults. Pedro F. Saint-Maurice, Richard P. Troiano, David R. Bassett Jr, et al. JAMA. 2020;323(12):1151-1160. LINK
- Association of Step Volume and Intensity With All-Cause Mortality in Older Women. I-Min Lee, MBBS, Eric J. Shiroma, Masamitsu Kamada et al. JAMA Intern Med. 2019;179(8):1105-1112. LINK
- 厚生労働省 アクティブガイド -健康づくりのための身体活動指針- LINK