健康,  腸内環境,  食事

イスラム教徒のラマダン期間を利用した断食と腸内環境の研究

はじめに

こんにちは。この記事に興味を持ってくださりありがとうございます。この記事を書いている2021年は4/13から5/12までがラマダンになります。

ラマダンはイスラム歴(ヒジュラ歴)の第9の月のことです。イスラム教徒はこの月に断食をします。

で、色々な研究で断食って体に良いとか寿命を延ばすみたいな報告があって、今回、American Journal of Clinical Nutritionという雑誌でラマダンを利用して腸内環境と断食の関係を調べた研究があって、面白いな~と思ったので、紹介します。

Pon(ブロガー)
企業で働く研究者です。社会人大学院生でもあります。興味関心は公衆衛生や腸内細菌です。統計家に憧れます。Twitterはこちら。気軽にフォローしてくれると嬉しいです。

ラマダンになるとイスラム教徒は断食をします

皆様はラマダンってそもそもご存じでしょうか?イスラム歴で第9の月のことですが、この1月の間、イスラム教徒は日の出から日没までの間、断食を行います

詳しく知りたい方はWikipediaなどで調べていただいた方が良いかもしれませんが、ラマダンは毎年時期がズレるんですが、それはイスラム歴(ヒジュラ暦)に従っているためで、太陽暦と11日ずつズレていきます。

そのため、昨年のラマダンは4/24~5/23でしたが、今年(2021年)は4/13~5/12となります。季節が変わると日の出、日没の時間も変わるので、色々と大変だなと思います。

子供とかはどうするんだろうなとちょっと思いましたが、機会があれば、オンライン英会話の先生なんかに話を聞いてみたいなと思いました。

断食は体にいいというエビデンスは多い

参考文献1より引用

さて、断食というのは様々な健康効果が期待されているということをご存じでしょうか?実際には断食というよりもカロリー制限と言った方が適切だと思いますが、様々な健康機能が期待されます。

昨年話題となった書籍LIFESPANでは、カロリー制限による適度なストレスが良い影響を与えているのではないかと論じています。

カロリー制限を行ったアカゲサルの論文(参考文献1、上の図)は物凄く衝撃的だったので、ご存じの方も多いんじゃないかなと思います。この論文では、カロリーを30%制限したアカゲザルと通常食で育てたアカゲザルを比較しました。

そして、その結果、カロリー制限したアカゲザルでは、上の図のように見た目でも明らかに若々しかっただけでなく、通常食のアカゲザルよりも長生きしました

私はこれを見て、カロリーのとりすぎには気をつけようと思いました。

上の論文はサルのカロリー制限のエビデンスですが、ヒトでのエビデンスでは断食によって、インスリン抵抗性を改善し、心血管疾患のリスクを減らすことが報告されているそうです。

このように断食のメリットは基本的にはカロリー制限になると思いますが、その一方で、カロリー制限だけでは説明しきれない点もあるようです。

そこで、次に紹介する研究ではイスラム教徒が行うラマダンを利用して断食の健康効果、特に腸内環境への影響を調べました

ラマダンは短期間に腸内細菌叢を大きく改善する

参考文献2より引用

上の図がこの論文の結果の一部です。左からラマダン前後の体重、腸内細菌の多様性指数、そして前後の腸内細菌を主座標分析でプロットした結果を示しています。

簡単に結果をまとめると、

  • 体重は減少します
  • 腸内細菌の多様性指数は高くなります
  • 主座標分析の結果、前後でPC1の負の方向にシフトしました

また、属レベルの腸内細菌を見ると、

  • Faecalibacterium の増加
  • Subdoligranulum の増加
  • Eubacterium coprostanoligenes group の増加
  • Prevotella 9 の減少

などが報告されています。確かにPrevotella 9は食事の影響が大きい腸内細菌なので、減少したという結果は良く分かります。またPrevotella 9は相対存在量も大きいため、減少すると相対的に他の腸内細菌が増加し、多様性が上がるということも説得力があります。

また増加した腸内細菌のうちFaecalibacteriumは有用な腸内細菌の中で、最もポピュラーな細菌の1つになりますので、Faecalibacteriumが増加している点からも、腸内細菌叢は良い方向にシフトしたと考えていいのかなと思います。

さいごに

ここまで読んで下さりありがとうございました。

断食は私も結構興味があって、食べることは大好きですが、2食、好きなものを普通に食べていたら1食くらいは我慢できると思うので、それが健康的といえるなら、比較的ハードルが低いのかな~と思っています。

この論文では、断食の健康効果は摂取カロリーの低下だけでは説明しきれず、その解明のために腸内細菌を調べたとのことでしたが、個人的にはカロリーで説明しきれないところは、適度なストレスなのかなと思っています。

でも、ラマダンのように1ヵ月間の断食は腸内細菌に結構大きな影響を与えていることも分かり、興味深い内容だったなと思いました。

断食すごいですね!なんか腹が減ってきました(笑)
それでは!

参考文献

  1. Colman, R. J., Anderson, R. M., Johnson, S. C., Kastman, E. K., Kosmatka, K. J., Beasley, T. M., Allison, D. B., Cruzen, C., Simmons, H. A., Kemnitz, J. W., & Weindruch, R. (2009). Caloric restriction delays disease onset and mortality in rhesus monkeys. Science (New York, N.Y.), 325(5937), 201–204. https://doi.org/10.1126/science.1173635
  2. Su, J., Wang, Y., Zhang, X., Ma, M., Xie, Z., Pan, Q., Ma, Z., & Peppelenbosch, M. P. (2021). Remodeling of the gut microbiome during Ramadan-associated intermittent fasting. The American journal of clinical nutrition, nqaa388. Advance online publication. https://doi.org/10.1093/ajcn/nqaa388

食品会社勤務の企業研究員。公衆衛生の講座に在籍する、社会人博士課程の大学院生でもあります。食の機能性研究、腸内細菌の研究に軸を置いています。興味関心は公衆衛生、疫学。統計の専門家に憧れます。興味のある研究について、Twitterやブログで発信しています。