短鎖脂肪酸・概日リズム・時計遺伝子
健康,  腸内環境,  食事

短鎖脂肪酸と概日リズムの関係~規則正しい食生活って大事!

こんにちは、この記事に興味を持ってくださりありがとうございます。この記事では、腸内細菌が概日リズムと関わっていることを示した論文を紹介したいと思います。概日リズムというのは体内時計と言われるもので、光などの環境の変化によってスイッチのオン・オフが切り替わり、私たちの活動を調節しています(概日リズムに関する詳しい記事はこちら)。

そして、この環境変化の要因の一つに腸内細菌が関わっているんじゃないか?ということが研究されています。

この記事を書いている私は、食品会社で食品の機能性研究などをしている企業研究員です。腸内細菌などの研究は5年以上続けています。大学では疫学の勉強をしている大学院生でもあります。

短鎖脂肪酸を投与するとPER2遺伝子の位相が早まる

参考文献より改変引用

さて、早速、論文を一つ紹介したいと思います。この論文は、短鎖脂肪酸をマウスに3日続けて投与し、その後の時計遺伝子(PER2)の発現量を見ています

上の図のタイムスケジュールを見ると、朝5:00に通常のエサまたは短鎖脂肪酸とコハク酸を混ぜたエサをマウスに投与しているようです(以下、コントロールと短鎖脂肪酸投与と呼びます)。それを3日間継続した後、7:00から翌朝3:00まで4時間毎にin vivoイメージングシステムという方法で時計遺伝子を発色させて観察を行っています。

その発色させたデータが左側にのせているマウスを上から写真撮影したものですが、短鎖脂肪酸投与マウス(下のマウス)では11時ころから発色が強くなり、15時間~19時間当たりでピークが来ていますが、コントロール(上のマウス)では、19時頃にピークが来ており、少しだけピークの時間が早くなっているようです。

これを定量的に比較した結果が、右のグラフで、こちらを見るとピークが前にズレていることが分かると思います。平均すると大体1時間くらいピークが前に移動したようです

このように短鎖脂肪酸を投与することで時計遺伝子のスイッチが入り、前にピークがずれるのですが、この短鎖脂肪酸というのは、実は腸内細菌が炭水化物や食物繊維を食べた時に産生する代謝産物です。つまり、食事を食べることによって、腸内細菌が短鎖脂肪酸を産生し、時計遺伝子のスイッチが切り替わるということがあるということになります。

この試験は結構興味深い試験で、何となく、規則正しい食生活は私たちの体内時計をコントロールするのに大事ではないかというイメージは持っていると思いますが、その仮説の一部を腸内細菌を通して説明できるかもしれないということが分かりました。

腸内細菌にも概日リズムがあります

ちなみに、概日リズムはかなり多くの生物が持っていることが分かっていて、それは動物だけでなく、微生物でも同じです。

そして、腸内細菌も概日リズムを持っているということが知られていて、腸の中は光などの環境はないので、概日リズムを作っている環境要因としては、私たちの食事だと考えられます

つまり私たちの食事が腸内細菌の概日リズムを作り、腸内細菌が産生する短鎖脂肪酸が私たちの概日リズムをコントロールしていると言えるのです。この議論は、タマゴが先か、ニワトリが先かという議論なので、どちらがより重要ということは言えませんが、こういったことからも規則正しい食生活が概日リズムを作り出すということは理論的には正しいと考えられます。

食事の時間を規則正しくすることが一つ重要な要因

では、どんな食生活が大切なのでしょうか?ここで紹介する内容は、あくまでも論理的に考えてまとめた私の考えになりますが、まず、食事の内容について言うと、短鎖脂肪酸は食物繊維や炭水化物を分解して作られるため、主食を取ることが大事になります

次に食べる時間ですが、講演などで聞いた話では、3時間くらいすると腸内細菌が分解をはじめ、短鎖脂肪酸が産生すると聞いたことがありますが、正しい情報はあまり良く分かりません。ただ、朝の概日リズムのスイッチオンオフに関わっているのは、前日の夜の食事なんだろうなというのは推測されますので、夜の食事時間が規則正しいことが大切なんだろうと思います

もちろん、朝の時計遺伝子の発現が遅い場合でも、さほど問題はないのかもしれませんが、やっぱり朝の時計遺伝子の発現が早いほうが、一日、活動的に過ごせるのではないかなあと思います。

腸内細菌の働きが昼と夜でどのくらいちがうの?、短鎖脂肪酸ではなく、食事の違いを見た論文はないの?など、色々と記事を書きながら突っ込みたい所があるのですが、残念ながら、今の時点では、私もあまり存じ上げません。

一つ言えることは、概日リズムの研究は、論文はとても面白いのですが、夜中に研究室に行ってデータを取ったりと、研究している人たちの概日リズムはめちゃくちゃになってしまうような負担の大きい研究なのです。

また情報などがあれば共有したいなと思いますが、他の研究に比べて、論文が少ないのはしょうがないのかなと思います。

まとめ

いかがでしたでしょうか?まだ研究途上という感じはありますが、研究途上だからこその面白さもあると思います。この研究で言えることは規則正しい食生活が体内時計を作っているかもしれないということですが、じつは、論文の中では、マウスに強制的に時差ボケを起こしていて、その回復を見ていたりします。

ですので、この研究のメッセージの一つは、時差ボケが起こっている場合には、なんかぼーっとして食事の時間とかもズレたりしがちですが、できるだけ、体内時計を戻すように、食事時間を考えると良いのかもしれません

なにか少しでも参考になったら嬉しいなと思います。それでは。

参考文献

Tahara Y, Yamazaki M, Sukigara H, et al. Gut Microbiota-Derived Short Chain Fatty Acids Induce Circadian Clock Entrainment in Mouse Peripheral Tissue. Sci Rep. 2018;8(1):1395. LINK

食品会社勤務の企業研究員。公衆衛生の講座に在籍する、社会人博士課程の大学院生でもあります。食の機能性研究、腸内細菌の研究に軸を置いています。興味関心は公衆衛生、疫学。統計の専門家に憧れます。興味のある研究について、Twitterやブログで発信しています。