こんにちは。先日、食物繊維と免疫について、腸内細菌の関係を紹介しました。
上の記事で紹介している内容は、非常に大事な内容だと思いますが、今回の記事では腸管免疫とCOVID-19との関連を示唆した研究を紹介したいと思います。
ただ、先に話しておきますが、今回の記事がどれだけ信ぴょう性があるかについては、賛否あると思いますので、それも含めて読んで頂きたいです。この仮説は、どちらかというとメディアを意識している内容かなあとも思っています。ですが、内容は面白いなあとは思いますし、どちらにしても、IgAというのは私たちにとって非常に重要な内容ですので、そういう点でも参考にしてもらえたらと思います。
この記事のポイント
- 粘膜などの免疫で大きな働きをしている「IgA」という抗体があります。
- IgAの分泌量は国や民族によって違いがあり、IgA欠乏症の人数が高いほど、COVID-19の死亡者数が高いことから、IgA欠乏症が国別の死亡率に影響している可能性がある。
IgAは粘膜の免疫で働く重要な抗体
はじめに、IgAについて簡単に紹介をします。IgAは鼻の粘液、唾液、腸管の粘液など全身に広がっている抗体です。
また、特異性が低い、つまり特定の病原体ではなく、色々な病原菌やウイルスなどに幅広く結合し、私たちの体を守っています。
これだけの特徴を見ると分かるように、IgAは私たちの健康にとって欠かせない抗体で、風邪の予防や疲労の軽減などに役立っています(参考文献1)。
IgA欠乏症がCOVID-19の重症化に影響しているかもしれない
こんなことから、コロナ予防という点においても、IgAは重要なんじゃないかなというのは、異論はないと思いますが、コロナ関連の論文で、IgA欠乏症という病気に着目した論文があります。
IgA欠乏症というのは、他の抗体(IgGなど)が健常者と変わらないのですが、IgAが極端に少ない病気です。日本人ではまれな病気ですが、欧米では、200~1000人に1人くらいいて、健常人と混ざって普通に生活をしています。
そして、国別のIgA欠乏症の割合とCOVID-19での死亡率を比較したグラフが下記の通りです。
この論文では統計的に相関関係があるかどうかを言及していないのですが、ぱっと見ると確かにIgA欠乏症が多い国ほど、新型コロナウィルスによる死亡率も高そうだなと思います。
新型コロナウィルスによる国別の死亡率に大きな差があることがいったいなぜなのかを考えている研究はたくさんあって、BCGワクチンの摂取だ!とか、ウィルスがヨーロッパで変異して毒性が高まったんだ!など様々な情報が行きかっていますが、この研究では新しい仮説を紹介していますね。
COVID-19の国別の死者数の原因を説明する一つの要因としてIgAがあるのではないかというのがこの論文のメッセージです。
IgAってどうやったら増えるの?
さて、このIgAですが、どうやったら増えるの?という研究は、インターネットで検索するといくつか出てきます。笑うと増えるとか、ちょっとゆるめのエビデンスもあるので、なんとなくメディアが喜びそうな感じですよね。
そして、重要なのがやっぱり腸管です。食事や腸内細菌との関連もやっぱり報告があります。例えば高脂肪食によって、腸内環境が悪くなることが知られていますが、高脂肪食を食べたマウスのIgAは減少しすることも報告がされています。
ですので、腸内環境を改善するような食事を意識することはとても大事ではないかなと考えられます。
まとめ
ここまで読んでくださりありがとうございました。この論文は、もしかしたら結構、注目されるかもしれません。だって、笑うとIgAが上がりますとか、食事とIgAとか、明らかにメディアが喜びそうなネタかなと思うんです。
それに、この論文の著者の3名は食品の機能性研究などに関わっている方だったら、良く知っている、超有名な方3名が著者なのです。すでにテレビ取材とかも来ている可能性は十分あると思いますね。
この仮説が正しいかどうかは、全く別の問題ですがIgAは大事だと思うし、高い方が望ましいということに異論がある人もいないと思います。
ですが、一応、最後にこの研究の問題点も指摘させていただきます。
・この研究は生態学研究と言って、関連を示すことができますが、因果を説明できません。
・IgA欠乏症がそもそも多い国でも1%程度なので、新型コロナウィルスの死亡率/感染者数を考えても十分に説明はできません。
・新型コロナによる死亡率は国別に大きい差があるので、国の文化の違いなども含め、国ごとに特徴が異なるような内容で比較すると、全然関係ないことでも意外と相関が出たりするもんなのです。
でも、じゃあこの研究意味ないじゃんっていうのは、ズレた指摘で、ここで立てた仮説を元にこれからちゃんと研究をしていく!というのが科学なんだと思います。
この記事が何かの参考になれば幸いです。それでは。
参考文献
- Med Sci Sports Exerc.;40,1228-36,2008
- Inter J Family Med and Primary Care, 1(3), 1011, 2020
- Nature Communications volume 10, Article number: 3650, 2019