健康,  腸内環境,  食事

免疫と食物繊維の関係には、やっぱり腸内細菌が関わっていた

こんにちは。コロナ禍で免疫というキーワードにはどうしても敏感になってしまうと思いますが、免疫には腸内環境ということも、よく聞くと思います。

ですが、そうは言っても、なんとなく腸内環境を良くしていればと言う程度で、結局のところ、ぼやーっとしているところがありますよね。

この記事では、免疫と食物繊維そして腸内細菌の関係について、非常にクリアーに証明した研究(参考文献1)を紹介したいと思います。2016年にCellから発表された研究なので、さすが!と言えるしっかりとした研究です。

この記事のポイント

  • 食物繊維が少ないと感染症のリスクが高くなります。ただし、イヌリンなどのプレバイオティクス素材は効果なし。
  • そのメカニズムは、食物繊維が少ないと、ムチン層という粘膜を腸内細菌が食べて、薄くなるからです。

食物繊維の量でマウスの腸内細菌は大きく変わる

参考文献1より改変引用

それでは、さっそく研究の紹介をしたいと思いますが、この研究はマウスに高食物繊維食、低食物繊維食、プレバイオティクス添加食のどれかを与えて、8週間飼育して、その腸内細菌などを比較した研究です。

研究ではマウスに与えるエサを次のように分けて比較をしています。

高食物繊維食・・・穀物や野菜から食物繊維を摂取しています。
低食物繊維食・・・食物繊維が多い素材は含まれません。
プレバイオ・・・・イヌリンやオリゴ糖など複数の食物繊維素材を添加しています。

最初の2週間は同じ食事(高食物繊維食)を与えています。右の図では、最後の2週間(42~56日目)の腸内細菌を表していますが、グループごとに腸内細菌が違っていますね。

高食物繊維食は全然違う腸内細菌叢(そう)なんですが、プレバイオティクスは意外なことに低食物繊維食に近い腸内細菌叢(そう)です。同じ食物繊維でもオリゴ糖やイヌリンのような添加物だと、穀物や野菜から食物繊維を取るのと、こんなに違うのかと思うと、ちょっと残念な感じがします・・・。

ちなみにαー多様性という言葉があるのですが、これは高ければ高いほど良いと言われているんですが、たくさんの種類の腸内細菌が、均一にいるほど多様性は高くなります。

この上の図では多様性指数を出していませんが、パッと見ただけで、高食物繊維食のほうが均一に腸内細菌がいるのが分かりますので、多様性も高いんじゃないかと思います。

では、この結果、どんなことが起こるのかを次に紹介したいと思います。

低食物繊維食を与えるとムチン層が4分の1以下になる

参考文献1より改変引用

上の写真は、高食物繊維食のマウスと低食物繊維食のマウスの腸管の顕微鏡写真ですが、下の写真は、ムチン層という腸の粘膜を緑色に染色したものです。結構、色々な講演で紹介される有名な写真です。

この写真を見ると一目瞭然なのですが、低食物繊維食のマウスはムチン層がメチャクチャ薄いです。ムチン層の厚さを比較したグラフを右にのせていますが、低食物繊維食とプレバイオのグループは半分なんて言うレベルではないですね。4分の1以下の厚さになっています。

このムチン層というのは、腸の表面に広がっていて、感染症などから私たちを守る、とても重要な役割を果たしています。

ムチンは食物繊維の一種なのですが、食物繊維を食べていないと、腸内細菌のエサが無くなりますので、ムチンをエサにできる腸内細菌が増えるんですね。最初に紹介した図にはムチンを分解した腸内細菌を右隅に書きましたが、赤色(A.municiphila)やピンク色(B.caccae)の腸内細菌がすごく増加しているのが良く分かります。

ちなみにこのA.municiphilaなどは、必ずしも悪い腸内細菌というイメージはないと思います。

ムチン層が薄くなった結果感染症のリスクが上がる

参考文献1より改変引用

最後に上のイラストは今回紹介した論文の全体をまとめた図になります。

食物繊維が多い食事ではムチン層が機能して病原菌から私たちを守ってくれますが、食物繊維が少ないと、エサとしてムチン層を食べる腸内細菌が増えます。その結果、ムチン層を食べてしまい、病原菌に感染するリスクが高くなります。

グラフはのせませんでしたが、この論文では、病原菌に曝露させた実験も行っています。そしてその結果、低食物繊維マウスはわずか10日で感染症により6割のマウスが死んでしまいましたが、高食物繊維マウスでは1匹も無くなりませんでした。

まとめ

ここまで読んでくださりありがとうございました。ここまで読んで食物繊維が腸管免疫のためにとても大事だということや、ムチン層がどれほど大切かよく理解できたのではないかと思います。

また、この論文では割と大きなメッセージとして、イヌリン、オリゴ糖のような添加物の食物繊維の効果が穀物や野菜の食物繊維と比べて効果が小さいことを示していました。これはちゃんと証明されていませんが、食物繊維が食材の成分として含まれている場合には、食材がカタマリのまま腸内細菌のエサになっているからだと言われます。

このメカニズムは腸管からの感染になりますので、コロナはちょっと違うかなと思っていますが、感染症から身を守るといことは、日々意識するととても良いのではないかなと思います。また、COVID-19と腸内環境を結びつけるエビデンスというのは、あまり分かりませんが、腸内環境との関連がよく知られている多発性硬化症やパーキンソン病などの神経障害との関連は報告されているので(参考文献2)、全く関係ないとも言い切れないと思います。

この記事が少しでも参考になったら嬉しいです。

参考文献

  1. Desai MS, Seekatz AM, Koropatkin NM, et al. A Dietary Fiber-Deprived Gut Microbiota Degrades the Colonic Mucus Barrier and Enhances Pathogen Susceptibility. Cell. 2016;167(5):1339-1353.e21. doi:10.1016/j.cell.2016.10.043 LINK
  2. S.B. Alam  Steven Willows  Marianna Kulka  Jagdeep K. Sandhu, Severe acute respiratory syndrome coronavirus‐2 may be an underappreciated pathogen of the central nervous system. Eur J Neuro. 2020;10.1111/ene.14442 LINK

食品会社勤務の企業研究員。公衆衛生の講座に在籍する、社会人博士課程の大学院生でもあります。食の機能性研究、腸内細菌の研究に軸を置いています。興味関心は公衆衛生、疫学。統計の専門家に憧れます。興味のある研究について、Twitterやブログで発信しています。