こんにちは。帝王切開で生まれた子供の腸内細菌はあまりよくないって聞いたことがありますか?わたしは初めてこの話をはじめて聞いたのは、ある大学の先生からでした。
「帝王切開の子供は腸内環境がマジで悪いから、自然分娩で生まれてほしいな~」
と、かなり切実な雰囲気で話していたんです。
なぜ帝王切開の子供は腸内環境が悪いと言われているのでしょうか?今日の記事では帝王切開と自然分娩で生まれた子供の腸内細菌を比較した面白い論文を紹介したいと思います。
帝王切開と自然分娩では腸内環境の構成が全然違う
この研究は自然分娩の子供4人、帝王切開の子供6人の腸内細菌を比較した論文です。
この論文のおもしろい所は、新生児の腸内細菌の違いがどこから来ているのかを調べるために、母親の口腔内細菌、皮膚常在菌、膣内粘膜の常在菌も分析しているんです。(母親の腸内細菌はどうも分析していないようで、そこはちょっと腑に落ちませんでした。)
で、その結果が上の図なのですが、帝王切開の子供は皮膚常在菌に似た構成の腸内細菌をしていますね。一方で、自然分娩の子供は膣(ちつ)粘膜の常在菌に似ているんです。
ちなみに乳幼児に多いとされているビフィズス菌は上のグラフには出てこないのですが、産まれたばかりのときは少ないと言われています。
つまり、産まれた時に最初に暴露(ばくろ)した細菌の影響を思いっきり受けて、腸内細菌が形成されていたことが分かったんです。
膣(ちつ)粘膜の細菌には、大腸の細菌も含まれているので、この結果を見ると、自然分娩では母親の腸内細菌を多く受け継ぐけれど、帝王切開ではあまり受け継いでいないということになります。
膣や肛門で細菌に暴露(ばくろ)することは良いこと?
自然分娩の場合にはこのようにして膣(ちつ)粘膜や大腸などの細菌が子供の腸内に住み着くことになりますが、多くの人が疑問に思うことは、不衛生ではないの?ということだと思います。
これに対して、さすがに細かいエビデンスを確認したわけでもないですし、専門家でもないので、参考文献の「腸科学」に書いてあった内容を要約、引用して説明したいと思います。
- 自然分娩の新生児は肛門や膣(ちつ)などの細菌に一番最初に出会い、これらの細菌が子供の腸内に住み着きます。
- 不衛生に思うかもしれませんが、これらの細菌は母親の腸内で培養された、”検査済み”の細菌ですので、新生児が最初に暴露(ばくろ)するのは理にかなっています。
- 一方で帝王切開で生まれた子供は肥満、アレルギーなどが多くなることが知られていて、この原因にもしかしたら、腸内細菌にあるかもしれません。
ということでした。
このパラグラフを読んだときは、何か生命の神秘を感じさせられ、何度も読みなおしました。そして、お~、なるほど!と納得しました。
まとめ
今回の記事をまとめると、
- 自然分娩と帝王切開の子供では、腸内細菌が異なります。
- 自然分娩では膣(ちつ)や肛門周囲にある細菌が、子供の腸に住み着きます。
- 一方で帝王切開では、皮膚の表面に存在する細菌が、子供の腸に住み着きます。
- この腸内細菌の違いが肥満やアレルギーなどの疾患とも関連している可能性があります。
という感じです。
ただ、最後の肥満やアレルギーなどにも関連しているかもという考察は私ももう一度エビデンスを見直して、また、別の記事で紹介できればいいなと思います。
参考文献
- Delivery mode shapes the acquisition and structure of the initial microbiota across multiple body habitats in newborns. Maria G. Dominguez-Bello, Elizabeth K. Costello, Monica Contreras, Magda Magris, Glida Hidalgo, Noah Fierer, and Rob Knight, PNAS June 29, 2010 107 (26) 11971-11975 LINK