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【GBD study まとめ記事】世界195カ国の食事と健康の関係を調べた論文

2020-06-26

はじめに

はじめまして、こんにちは。この記事に興味を持ってくださりありがとうございます。

わたしのブログでは食事と健康に関する情報を紹介しています。今回の記事はタイトルに「まとめ」とありますが、実はわたしのブログでは基本的に1つの論文をサラミのように薄切りにして、自分の考えや追加で調べた知識などを加えてまとめていました。そんな感じで実は今までアップしてきた内容の半分以上が一つの論文をベースにしていました。

で、ある程度順番を追って大事だと思う点を記事にしてきたので、今回の記事はその総まとめということを考えています。この記事は、下記の論文の要約を紹介し、さらに詳しく研究内容やその情報を知りたいという方のために、わたしのブログで記事を書いている場合にはそのリンクをつけています。

また、この記事を読むだけでも、ざっと論文の内容が頭に残るようにまとめました。わたしの文章力で十分に伝えられるかはギモンではありますが、内容的にはとても有益な内容なので、読んでもらえたら嬉しいです。

また、この記事の内容を元にオススメの商品をまとめた記事もあります。良かったら読んでください。
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論文名

Lancet. 2019 May 11;393(10184):1958-1972. doi: 10.1016/S0140-6736(19)30041-8. Epub 2019 Apr 4. Health Effects of Dietary Risks in 195 Countries, 1990-2017: A Systematic Analysis for the Global Burden of Disease Study 2017

タイトルを和訳すると下記のような感じです。

195カ国、1990-2017年における食事リスクの健康への影響:Global Burden of Disease Study 2017による系統的解析

どんな研究なのか?

この研究では、病気に関連するエビデンスが強い食事要因を集め、その食事要因の影響でどれだけ健康に影響を与えたかを世界195カ国の食事データ、社会経済学的データ、人口動態調査や健康に関するデータを使って比較した研究です。

研究方法は大きく下記の通りになります。

  1. 病気に関連する食事要因の絞り込みを論文のエビデンスレベルなどから絞り込む。
  2. それぞれの食事要因について摂取量と病気の関連性についてメタアナリシスを行い、どの程度摂取することでどのくらい病気にかかりやすいかを推定する統計モデルをつくる。
  3. 世界195カ国で、1)で絞り込んだ食生活の実態を調査する。データがない場合には機械学習などを使って推定を行う。
  4. 3) で推定した各国の食生活の結果と2) でつくった病気の推定モデルを使って、どのような病気にどのくらいの割合で罹患し、その結果障害の健康にどの程度大きな影響を与えるか(DALY)や、どのくらいの割合の人が死亡したかを推定する。

とても大きな研究で、推定した結果と推定した結果をかけ合わせていたりするので、正直言ってパワープレイだなあと思うところもありますが、一方で世界195カ国のデータを集めているという圧倒的な強みがある壮大な研究です。

ちなみにビル・ゲイツ&メリンダ財団が研究資金を出していて、関連研究者は2500人を超えるという、めちゃくちゃビッグプロジェクトです。

どんな結果だったのか?

病気に関連する15の食事要因を調べた結果

この研究で選ばれた健康または不健康な食事因子は全部で15要因ありました。15項目を選んだというよりは、しっかりとエビデンスがあったものがたまたま15個あったという感じだと思います。

健康に与える影響が大きく、エビデンスがしっかりしたものに絞り込んでいるため、リコピンとかβカロテンなどのように、必ずしも一般的に考えられているような食事要因という訳ではありません。

とりあえず15の食事要因と適切な摂取量についてまとめたいと思います。

表 不健康な15の食事要因

食事の要因適切な摂取量
果物の不足200~300 g
野菜の不足290~430 g
豆類の不足50~70 g
全粒穀物の不足100~150 g
ナッツ・種子類の不足16~25 g
乳製品の不足350~520 g
赤肉の過剰摂取18~27 g
加工肉の過剰摂取0~4 g
加糖飲料の過剰摂取0~5 g
食物繊維の不足19~28 g
カルシウムの不足1.0~1.5 g
魚介由来ω-3系脂肪酸の不足200~300 mg
多価不飽和脂肪酸(ω-6系)の不足摂取エネルギーの中の9~13%
トランス脂肪酸の過剰摂取摂取エネルギーの中の0~1%
食塩の過剰摂取1~5 g

いかがでしょうか?まあ、この結果だけ見てもあまりピンとこない方も多いと思うので、全然飛ばしていただいても大丈夫なのですが、一つ付け加えておくとしたら、例えばポリフェノール、βカロテン、リコピン、βクリプトキサンチンなどのように、健康に良いと言われている素材はこの中には入っていませんね。同じく、カフェインなどのように若干悪者扱いされやすい栄養素も入ってません。

これらの理由は、たとえばブドウのポリフェノールだったら果物に入れちゃってOKでしょう!など色々考えられますが、結局のところ、みんなが思っているほどちゃんとしたエビデンスがある素材ではないということだと思います。

世界195カ国の食事が健康に与える影響を比較した結果

【世界195カ国でのヒートマップ】10万人当たりの食事因子による病死の人数(A)とDALYs(B)(論文より引用)

上の図が世界195カ国での食事が原因の病死の人数をヒートマップで表したものです。濃い青色ほど死亡者数が少なく、濃い赤色ほど死亡者数が高いことを表します。(上のグラフは10万人当たりの死亡者数、下のグラフではDALYsといって少し違った指標を出していますが、グラフの見方は同じです)

この図で世界をざーっと見渡すと、日本は韓国、フランス、スペインなどと並んで、世界でも数少ない健康な食生活を送っている国と考えてもよいのかなと思います。

195カ国のうち、人口の多い上位20カ国だけで比較すると、その中では日本が最も死亡が少なく、エジプトが最も死亡者数が多いようです。

また、なんとなく想像通りではあるかもしれませんが、米国はそれほど健康とは言えず、中の上くらいのレベルです。やっぱり米国人はファーストフードが中心になったり、不健康な食生活を送っている人が相当数いるのかもしれません。

一方で中国、インドでは中国のほうが死亡が多く、おそらくですが、インドは香辛料など、独特の食文化の影響もあって、食生活は比較的健康という印象があります。

で、もっと大きく見ていくと、赤っぽい色が多いのは圧倒的にアフリカ、アジアとロシアですね。社会経済学的な要因を考えると中南米なども、同じような感じなのかなあと私は思っていたので、そこはちょっと意外でした。やっぱりアジア人は欧米食に対して遺伝的に弱いのかなあと考えさせられました。

各食事要因が健康に与えた影響を病気ごとに層別解析

食事要因、病気別の健康に与える影響の比較(論文より改変引用)

それでは、具体的に各食事因子がどのような病気によってわたしたちの健康に影響を与えているのでしょうか?これを比較した結果が上のグラフになります。

この結果はDALYsと言って、病気によって早死にしたり、障害になった期間の合計を表したもので、生涯の健康に与える影響を数値化しています。大きければ大きいほど健康への影響が大きい食事要因となります。

これを見ると、少し意外と思うかもしれませんが、1位全粒穀物、2位食塩、3位フルーツ、4位ナッツ・種子類となっています。

ちなみに日本人では1位が食塩、2位が全粒穀物です。日本人ってほとんどの人が白米を食べていて、全粒穀物だって不足量は大きいはずなのに、1位が食塩ということは、どんだけ日本食塩分が高いんだよ!と思わされます。

これを見ると、摂取量が多くて、理想的な摂取量とのギャップが大きいという2つが重なっている食材の影響が大きいのかなと思います。全粒穀物などはさすがに少しは市民権を得ていると思いますが、それでも知識として知っている状況に留まっていて、実際に毎日のように食べているという人はかなり少ないのかなあと思います。

【まとめ】各食事要因について書いた記事のリンク

下記はこれまで15の食事要因のうち私のほうで紹介したいと思った個所を記事にしていますので、ご参考までにと思います。

全粒穀物:
世界で最も多くの人の健康に影響を与える食材「全粒穀物」

食塩:
都道府県別、食塩摂取量ランキングとその考察
無理なく塩分を下げる方法!塩分コントロールについて
日本人が最も気をつけなければいけない栄養素、食塩!
英国ではパンの塩分を減らして心血管疾患などが減少!

果物:
食物繊維は大事だけど、穀物や果物から摂取することが超大事!

ナッツ・種子類:
ナッツ類は、手軽に食べられて健康!でも意外と知らないよね!

魚介類由来ω3脂肪酸:
魚を食べると頭がよくなるという仮説を検証した研究の紹介
日本食と言えば魚介類。心血管疾患や認知症予防のエビデンスについて

食物繊維:
【基礎知識】食物繊維って何?多い食べ物や効果の違いについて

豆類:
豆は循環器疾患を予防する!日本人は特に納豆がよさそうだよ!

乳製品・カルシウム:
日本人はカルシウム、牛乳が不足!でも過剰摂取は気をつけて!

加工肉・赤肉:
牛肉・豚肉・ハム・ソーセージ。発がん性あるのでほどほどに!

社会経済学的要因で層別解析した結果

最後にこの研究では、食事による健康格差についても言及をしています。全体の結果をまとめると、高所得の国では食事が原因の死亡が少なく、健康格差は比較的大きいと考えられます。また、もう一つポイントとしては、高所得の国ではがんの割合が高く、心血管疾患や糖尿病などと比べてがんは、社会経済学的要因を受けにくく、相対的に多かった可能性も考えられます。

社会経済学的要因の結果については下記の記事にまとめましたので、データなどに興味があれば、論文の原本か、下記の記事を参考にしていただければと思います。

まとめ

ここまで読んでくださりありがとうございました。この記事では、これまで繰り返し紹介してきたGBD studyの論文を元にした記事をざーっとまとめました。

この研究は非常に壮大で、個人や普通の研究室レベルでは不可能なレベルの研究ですが、やはり世界の食文化の違いによる病気について知ることは、わたしたちがどのようなことに気をつけて食事をすればいいのかを考えるための非常によい資料になるのではないかなあと思います。

全体の研究結果をみると日本食が如何に健康で、そしてわたしたち日本人がいかに健康な暮らしができているかを改めて感じますが、その一方で、食塩の摂取量が多すぎること、乳製品やカルシウムが少ないことなども、他の国と比べることで浮き彫りにされました。

また、日本食はカロリーが低めで、大豆や魚介類を良く摂取する点など確かに健康だと感じる点は多いのですが、実はわたしたちの健康に対してインパクトが大きいことは、主食を食物繊維が多い全粒穀物に置き換えることだったり、塩分摂取量を減らすことなど、もっともっと注意が必要なことがたくさんあることにも気づかされました。

このような気づきを、できるところから少しずつ私たちの食生活に反映させ、健康的に過ごせたらいいなあと思います。この記事が皆様の健康に少しでもお役に立てたら嬉しいなと思います。

また、この記事が参考になったという方は、下記の記事にこの記事のエビデンスを元にまとめたおすすめの商品などをまとめたので良かったら読んでください!

それでは。

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  • この記事を書いた人

Pon

食品会社勤務の元企業研究員(PhD)。食の機能性研究、腸内細菌の研究をメインにしていました。興味関心は公衆衛生、疫学、食品の機能性。好きな食べ物はカレーと杏仁豆腐。コテンラジオ、キングダムが好きです。統計の専門家に憧れます。興味のある研究について、Xやブログで発信しています。

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