健康 食事

がんのリスク要因を調べたら、日本人特有の結果が面白い!

2020-05-13

はじめまして。こんにちは。この記事に興味を持ってくださり、ありがとうございます。今回の記事では、がんと食事に関するエビデンスを紹介させていただきます。

先日、別の記事でがんと食事の習慣について書かせていただいたのですが、今回の記事では、もっと具体的な内容を言及できればと思っています。

食事が一番影響している病気は心血管疾患と言って、動脈硬化などのような太い血管にかかわる病気です。また心血管疾患はわたしたちの死亡の原因としてもおおきいです。ですが、そうは言っても、日本人の死因第1位はあいかわらず「がん」です。

今回の記事ではBMJという医学誌で紹介された研究記事を紹介します。論文名は下記のとおりです。

Diet, nutrition, and cancer risk: what do we know and what is the way forward?
BMJ 2020; 368 doi: https://doi.org/10.1136/bmj.m511 (Published 05 March 2020)

この論文では、口腔がん、咽頭がん、食道がん、胃がん、大腸がん、肝臓がん、すい臓がん、肺がん、乳がん、そして前立腺がんとがん毎にどのような食生活が関連しているかを記述的にまとめています。

今回の記事ではその中からわたしが気になったものをポイントを絞って、紹介したいと思います。

たばこ、肥満、アルコール摂取が重要!

シリアスな問診のイラスト

まず、このBMJで紹介されている内容のポイントを紹介します。

① 全てのがんのリスクを高める要因は肥満とアルコールです。
② 大腸がんのリスクを高めるのは、加工肉(と赤身肉)、リスクを下げるのは、食物繊維、乳製品、カルシウムです。
③ 果物や野菜はがんとの関連は不明です。ただし、摂取量が少ない場合にはいくつかのがんのリスクを高めます。

これだけでは良く分からないかもしれませんので、次にもう少し丁寧に紹介をしていきたいと思います。

まず、上のグラフを見ていただきたいのですが、この棒グラフはがんを発症した人に特徴的に見られた生活習慣を影響が大きい順に示しています。

圧倒的に要因として大きいのはたばこ(Tabakko smoking)、そして次に来るのが肥満(Overweight and obesity)です。肥満ががんの発症に関連するメカニズムについては、ちょうど先日、京都大学の研究が発表されました。

どうやらインスリンが過剰に分泌することにより、細胞のがん化をコントロールできなくなるというのがメカニズムのようです。

食事に関連する項目では、飲酒(Alcohol)、加工肉(Processed meat)そして母乳を使用しない育児(Not breastfeeding)の3つです。

圧倒的1位のたばこはやっぱりなという感じです。たばこは早くこの世から消えてほしいな、と改めて思いました。まあ、嗜好品については、人それぞれですが・・・。でも、たばこはやめることによるメリットしかないものなので、公衆衛生のことを考えるのであれば、喫煙者は禁煙に取り組んでもらいたいです。

次に肥満が大きな要因ですが、日本人の場合には肥満が少ないので、アルコールのほうがリスク因子としてはおおきいそうです。

母乳なしの育児というのは、様々な状況があると思いますので、仕方がないんだろうなと思いますが、がんのリスクを上げるというエビデンスがしっかりあるということにびっくりしました。

出産直後の母乳は子供に免疫をつけるために特に重要と言われていますが、母の力と言うのは本当にすごいなと思いました。

肥満はほとんどのがんに影響し、飲酒は少量でも影響が大きい

続いて、がん別のデータを紹介したいと思います。上のグラフがその結果になるのですが、説明しやすいように表にまとめたいと思います。

下の表は、肥満と飲酒による部位別のがんのリスクを示しています。表1ではBMIが5上がるごとに各がんのリスクがどの程度変わるかを示しています。

表2では同じく、アルコールを1日あたり10 g摂取量が増加するごとのリスクの変化を示しています。表2のほうが一見インパクトが小さいですが、350 mlの缶チューハイでもアルコール濃度が9%だと、30 gを超えてしまうので、結構恐ろしいと思います。

表1 BMIが5上がる毎のがんのリスクの増加

がんの種類リスク比(per BMI 5)
子宮内膜がん1.50
食道がん1.48
肝臓がん1.30
腎臓がん1.30
胆のうがん1.25
胃がん1.23
すい臓がん1.10
卵巣がん1.06
大腸がん1.05
乳がん(閉経後)1.12
乳がん(閉経前)0.87

表2 アルコール摂取量が1日あたり10 g上がる毎のがんのリスクの増加

がんの種類飲酒(per Alcohol 10 g/day)
食道がん1.25
口腔がん1.15
大腸がん1.07
肝臓がん1.04
乳がん(閉経後)1.09
乳がん(閉経前)1.05

この結果を見ると、肥満は、ほぼすべてのがんのリスクを上げていますので、共通のメカニズムが関連しているのだと思います。

最初に説明した京都大学の研究のメカニズムであれば、インスリンの過剰分泌が関連しているということですので、糖尿病も同じようにほとんど全てのがんのリスクを上げる可能性があります

つづいて、飲酒も、食道がん、口腔がん、大腸がん、肝臓がん、乳がん(閉経前、閉経後)のリスクを上げるようです。1日10 gのアルコール摂取あたりとなっていますが、わりと沢山の方が毎日、350~500 mLくらいアルコールを摂取していると思いますので、それを考えるとかなりぞっとするなあと思います。

また、さきほども書いたのですが、日本人は肥満が比較的少ないので、肥満よりもアルコール摂取のほうが、がんの発症リスクに大きく影響しているようです。

さいごに

食べ過ぎの人のイラスト(男性)

さいごまで読んでくださりありがとうございました。今回の結果をまとめると、

〇 がんのリスクとして注意しなければいけないのは、たばこ、肥満、飲酒の3つです!
〇 日本人は、肥満が少ないので、飲酒のリスクが肥満を上回っている点が特徴的です!

これら3つの項目はある程度はわたしたちが意識することで改善できるというのが救いではないでしょうか?お酒は百薬の長と言われていたころもありましたが、いくつかのエビデンスで否定され始めていて、適切な摂取量というものがなく、飲酒は一切しないというのが一番健康には良いという可能性もあるようです。

わたしはそこまで太っているわけでもないですし(お腹はちょっと出てる~)、お酒もそんなに飲まないので、今回の記事を読んで個人的に一番悩ましいと思ったのは加工肉です。

加工肉というのはハムやソーセージなどのことですが、健康には明らかに悪いエビデンスが多いんです。ですがわたしは大好きなんですよね~。牛肉、豚肉などの動物の肉(赤肉)も発がんの可能性はあるようですが、加工肉は明らかに発がん性があるという結論なので、ちょっと辛いです。

できることならばチャーハンとかの肉もソーセージがいいかもと思うくらいなんですが、体のことを考えると、シーチキンが正しいのかもしれません。

皆様の参考にしていただけたら幸いです。また、興味がありましたら、他の記事も読んでみてください。

  • この記事を書いた人

Pon

食品会社勤務の元企業研究員(PhD)。食の機能性研究、腸内細菌の研究をメインにしていました。興味関心は公衆衛生、疫学、食品の機能性。好きな食べ物はカレーと杏仁豆腐。コテンラジオ、キングダムが好きです。統計の専門家に憧れます。興味のある研究について、Xやブログで発信しています。

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