健康,  腸内環境,  食事

悪い腸内環境が受け継がれると、食事を改善しても回復できない!

こんにちは。Ponです。いつも読んで下さりありがとうございます。今日の記事は食生活が子供たちの腸内細菌にどのように影響を与えるかを研究したマウスの論文を紹介したいと思います。

この研究はスタンフォード大学のソネンバーグ夫妻の研究チームが2016年にNature誌に発表した論文です。ソネンバーグ夫妻は下記の書籍を出版していて、私も度々ブログの中で引用させていただいています。良書だと思いますので、興味がある方は是非読んでみてください。

この記事のポイントは下記の通りとなります。

  • 腸内細菌のエサとなる炭水化物の摂取量が少ないと腸内細菌の多様性が下がります。
  • 多様性が低い腸内細菌叢(そう)は子孫に受け継がれます。
  • 孫の世代まで受け継がれると、食生活を改善しても、元には戻らないので、気をつけましょう。

また、この記事を書いている私は、食品メーカーの企業研究員です。5年以上前から腸内細菌の研究をしています。大学に出向し、社会人博士課程で公衆衛生を学んでいます。

MACsってなに?腸内発酵性の炭水化物です!

では、早速どんな研究だったかを紹介したいと思いますが、この研究ではMACsが多い食事で育てたマウスとMACsが少ない食事で育てたマウスを4世代にわたって観察したという研究です。

MACsって何?マクドナルド?って思うかもしれませんが、これは腸内細菌のエサになる炭水化物と論文の中で定義しています。学術用語としてMACsという言葉があるわけではなく、ソネンバーグ夫妻の造語と思われますが、日本語だと、ケロッグなどが使っている発酵性食物繊維という言葉が近いかもしれません。

MACsが多い食事というのは単に食物繊維が多いだけでなく、水溶性の食物繊維、不溶性の食物繊維など様々な種類の食物繊維をバランス良く配合しています。

色々な材料が混ざっているため、実際にはどの食材が良いのか特定しにくいなど、試験としては分かりにくくなると思うのですが、1つの食材に偏ると、それを好む腸内細菌が偏って増えてしまうなど、意図と違う結果になる可能性があるため、このような複雑な食事を与えていると思っています。

MACsの例としては、身近にある食材で具体例をあげると、

  • 大麦、全粒小麦、ライムギなど食物繊維が多く含まれる穀物
  • 果物に含まれるペクチン、海藻の食物繊維、イヌリン、オリゴ糖などの食物繊維素材
  • キノコ、豆類など食物繊維が多く含まれる食品

などが上げられますが、実際には、食べる人の腸内環境によっても発酵性は異なりますので、必ずしも上記の通りとは言えないようです。

発酵性の炭水化物(MAC)が少ないと多様性が下がります

参考文献を改変引用

それでは、結果を見ていきたいと思いますが、上の図が第一世代の試験結果です。4週間高MAC食を食べて腸内環境が良好な状態から、黄色の食事シフトグループは7週間低MAC食に切り替えて腸内環境を悪くします。すると期待通り、腸内環境が大きく変わります。上のグラフの結果ではありませんが、具体的な腸内細菌の変化としては、細菌の種類が減っています。

さて、この後に再度全てのマウスに高MAC食を与えるのですが、残念ながら完全に元に戻ることはできませんでした。

この結果は割とすんなり受け入れられるんじゃないかな~と思うんですが、一回腸内細菌を悪くしてしまうと、それを回復させるには、より長い期間かかってしまう、もしくは、完全には元に戻らないと言うことです。

地味に恐ろしい情報ではないですか?

腸内環境に良くない食生活を送ると、その後、健康な食生活に戻しても、かなり長期的な食生活の改善が必要になったり、場合によっては元に戻らなくなってしまうと言うことです。

ですので、まずは食物繊維が多く含まれるような腸内細菌のエサになるような食品素材を意識して食べることで健康な腸内環境を維持することを意識しましょう。

これがこの研究の1つ目の大事なメッセージです。

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世代をまたぐと、腸内細菌は回復しにくくなる

参考文献を改変引用

ここまでは第一世代の話でした。では、ここからこの研究のメイントピックスでもある子孫への影響について説明をしていきます。

この研究ではマウスに高MAC食、または低MAC食を与えているときに子マウスを産ませ、第四世代まで継代します。実際の論文を見ると、細かい箇所は少し違いますが(ご了承ください)、だいたい上の図のように7週目くらいで子マウスを産んでいます。

そして、各世代で10週間低MAC食を食べさせ、その後は6週間高MAC食に切り替えます。そしてどこまで腸内細菌が回復するかを世代ごとに評価しています。

結果を見ると、子供世代(第二世代)では、第一世代と同じように、完全に元には戻っていないのですが、少しは回復しています。ところが、孫(第三世代)、ひ孫(第四世代)になると、いくら高MAC食を食べさせてもほとんど回復しないという悲劇が起こりました。

なぜこのような結果になったのでしょうか?おそらくですが、孫、ひ孫の腸内細菌には、MACsをエサにして増加する腸内細菌自体があまりに少なく、エサにMACsが入っていてもその効果がなくなってしまったのかなというのがわたしの考察です。

恐ろしくないですか?これがこの研究の2つ目のメッセージですが、腸内細菌のエサにならない食事を続けていると、孫の世代では、健康な食生活を意識しても昔のような多様性に富んだ腸内細菌にはならないということです。

私が思ったのは、昔は麦ごはんなどがたくさん食べられていましたが、今は真っ白なご飯がすっかり定着し、もう3世代くらいになっているかもしれないなぁと言うことです。もしかしたら自分や子供たちの世代は腸内細菌のエサになる食事をいくら意識しても手遅れなのかもしれないと思ったら恐ろしくなりました。

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最終手段として出てくるのはやっぱり便移植

参考文献を改変引用

最後にこの論文では、腸内細菌を回復させる方法として便移植を実施しています。

すると、これまでいくら高MAC食を与えても回復しなかった腸内環境が1発で元の腸内環境に戻っています。この結果もなかなかインパクトがありますね。

最新の医療技術として便移植が注目されていますが、この結果を見ると、食事ではどうしても改善できないような腸内環境を劇的に変える最後の手段として、便移植の有効性が良く分かります

まとめ

いかがでしたでしょうか?今回紹介した記事は私たちの食生活に強い警戒をもたらした研究で、腸内細菌と食事に関する研究の中では大きく注目されたものでした。

復習になりますが、大事なポイントとしては、

  • 一度、悪くなった腸内環境を元に戻すにはより長い時間がかかる。もしくは、完全に元に戻らない可能性がある。
  • 子供の世代、孫の世代と継代するに従い、腸内環境を回復させることがより困難になる。

と言うことです。また、今回は健康的な腸内環境として示された食事には腸内細菌のエサとなる炭水化物(MACs)という概念も示されました。

これもとても重要で、私たちはついつい食物繊維とひとまとめに言ってしまいがちですが、単純に食物繊維では無く、腸内細菌のエサとなるかどうかという点までしっかりと考えることが今後のトレンドとなってくるということです。

実際に、国内でも単純に食物繊維という言い方ではなく、腸の奥まで届くという謳い文句で帝人がプロモーションをかけている「スーパー大麦(バーリーマックス)」や発酵性食物繊維という新しいキーワードを打ち出しているケロッグなど、各社でこのMACsという概念を意識して腸内環境という比較的新しい市場を盛り上げています。

腸内細菌の研究分野はまだまだこれから大きくなっていく、注目の分野だと思いますが、しっかりとしたエビデンスをベースにこの市場が盛り上がっていくといいなと思います。

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参考文献

Diet-Induced Extinctions In The Gut Microbiota Compound Over Generations. Sonnenburg ED, Smits SA, Tikhonov M, Higginbottom SK, Wingreen NS, Sonnenburg JL. Nature. 2016 Jan 14;529 (7585): 212-5. LINK

食品会社勤務の企業研究員。公衆衛生の講座に在籍する、社会人博士課程の大学院生でもあります。食の機能性研究、腸内細菌の研究に軸を置いています。興味関心は公衆衛生、疫学。統計の専門家に憧れます。興味のある研究について、Twitterやブログで発信しています。