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免疫力アップには腸活! ウソ?ホント?ちゃんとした情報を!

2020-05-04

はじめに

はじめまして。会社員 兼 ブロガーのPonです。本日の記事では、腸活と免疫について紹介をしたいと思います。

私が働いているのは商品会社です。今は、新型コロナウィルスの影響で食品業界の機能性と言えば、免疫関係がおおはやりです!それはわたしの会社でも、同じです。

では、食品で免疫力アップってなんなの?と思うと思います。メディアによってバラバラですが、良く出てくるのは、

①バランスの良い食事を心掛けて免疫力アップ!
②ヨーグルトや食物繊維など、腸に良い食材を食べて免疫力アップ!

などです。これらの情報ってどれくらい正しいのでしょうか?どんな根拠があるのでしょうか?基本的にはメディアというのは、あいまいな表現は嫌います。

やっぱりちゃんと言い切ってあげないと、読者、視聴者はモヤモヤしますものね。

でも、わたしのブログでは、事実を伝えるということに焦点を当てていきたいと思います(つまり、はっきりと言い切らないからモヤモヤするかもしれません)。でも、事実をちゃんと知ることができると、いい加減な情報で言い切られるよりも、よっぽどスッキリとするんじゃないかと思います。

そもそも免疫って何?

免疫というのは、わたしたちの体に備わっている、外敵からの防御システムです。

わたしたちは生活をしている中で、体に無い物質などに触れることがあります。このようなものに触れた時に体を守る働きを免疫と言います。

そして、その外敵と言われるものは、感染症を引き起こすような細菌やウィルスなどを指し、細菌やウィルスが付着した時に、体が正しく応答して、発熱などによって撃退するのです。

免疫力アップと言われると、なんとなく風邪をひきにくいと言ったイメージはあるのですが、実際にはその言葉に定義はないと思います。

ただし、あえて言うなら、免疫は適切なレベルといのはありますが、免疫力が高すぎるというのはアレルギーなどの過敏症になりますし、免疫力が低すぎると風邪をひきやすくなります

ですので、免疫力アップという考えよりはメンテナンスという意識が正しいと思います。

食事と免疫の話は動物や細胞の研究が中心

髪の毛の研究のイラスト

わたしたちが健康情報として参考にするのは人を対象とした研究の結果です。いわゆるエビデンスレベルが高いと言われる研究になります。

その一方で免疫などの研究というのは、どちらかというとメカニズムを知るための研究が中心になりますので、動物実験などが中心になります。

動物実験の結果というのは、専門家の個人的な見解よりもエビデンスレベルは低いと言われますが、メカニズムを知るためにはとても大切なので、大きな研究、未解明のことが多い分野ほど動物実験は大切です。

ですので、動物実験などで効果があるというエビデンスはとても大切なことですし、今の多くの免疫の研究は、人では確認できていないけれど、理論上効果があるというのがよく言われる情報です。

また、免疫力アップのためには十分な睡眠や適度な運動といった話や、衛生仮説など昔から言われていることですが、これらはおそらくしっかりとしたエビデンスがあると思いますが、わたしは論文などで確認したことがないのであまり言及できません。

衛生仮説というのは、衛生レベルが低い環境で育つことで、アレルギーなど、免疫機能の異常による病気が少なくなるという仮説で、これはもうかなり古くから知られていることなので、仮説でもなく、事実なのかなと思っています。

免疫が過剰に起こるとアレルギーになります

くしゃみをしている人のイラスト(花粉症)

これはみなさまよくご存じだとは思いますが、免疫細胞が過剰に反応してしまう現象をアレルギーといいます。

くしゃみや涙などで、なんとかアレルゲンを体の外に出そうと頑張ってしまうのですが、これは免疫細胞が正常に動いていない状況でもあります。

免疫力アップと言って、花粉症などが収まるようなイメージを持っている人もいるかもしれませんがそれは間違いです。過剰な免疫応答がアレルギーです。

免疫力アップという言葉に、どこまで厳密な定義があるのかは分かりませんが、わたしの中では、基本的には、免疫力アップという言い方は誤解を与えやすいのかなというのは、こういったことからです。

腸と免疫細胞の関係

ここまでのポイントをまとめると下記のようになります。

・免疫とは体の中へ侵入してきた細菌などと戦う体のシステム
・アレルギーは免疫細胞が過剰に反応してしまう現象
・免疫力アップよりは免疫をメンテナンスするというほうが適切

では、ここから本題の腸と免疫の関係について紹介をしていきます。

まず、免疫細胞というのは、外から体の中に侵入してきたものに対して反応するので、体の表面となる皮膚や食べたものが通過する消化管などに存在します。

中でも圧倒的に多いのが腸と言われています。腸には、免疫細胞のうち、なんと5~7割ほどが集まっているそうです。これはすごいなと思います。だから腸が健康であれば免疫のシステムも正常になるというのはとても分かりやすいと思います。

では、健康な腸ってどんな状態なのでしょうか?それを説明するのに腸内細菌が登場します!

腸内細菌が健康な腸のポイントです!

腸内細菌のイラスト

腸内細菌はみなさん、聞いたことあると思いますが、腸内細菌には良い腸内細菌と悪い腸内細菌がいると言われます。

良い腸内細菌というのは腸に届いた未消化の食べ物をエサとして、体にとって良い物質を作ります。この良い物質というものの代表は、酢酸や酪酸、プロピオン酸などの短鎖脂肪酸(たんさしぼうさん)という酸性の物質です。

このような酸性の物質は腸の中のpHを下げて、悪い腸内細菌が増殖しにくい環境にしてくれると共に、その物質そのものも血液の中に取り込まれて血糖値が急激に上がるのを防いだり、腸の蠕動(ぜんどう)運動とよばれる動きのエネルギー源になるといった様々なよい働きをします。

一方で悪い腸内細菌というのは、メタンガスなどを産生したりします。

つまりこの酢酸や酪酸、プロピオン酸などを産生する腸内細菌が増加し、メタンガスなどを産生する腸内細菌の増加を抑制することがとても大事です。

食物繊維が足りないと腸管のバリアーが薄くなります

腸管には免疫細胞が正常にはたらけるように、表面にムチンという水溶性の食物繊維でできた粘液があり、バリアーのような働きをしています。

実はわたしたちが食べる食物繊維は、このバリアーとなっている粘液を保護する機能があります。下記にその論文を紹介したいと思います。

Desai MS et al.
A Dietary Fiber-Deprived Gut Microbiota Degrades the Colonic Mucus Barrier and Enhances Pathogen Susceptibility.
Cell. 2016 Nov 17;167(5):1339-1353.e21. PMID: 27863247

この論文は究極の科学誌の一つとも言えるCellで報告されたレポートです。この論文では食物繊維の量が異なるエサをマウスに与え、その後の腸管の表面を詳細に観察した論文なのですが、下記がその結果となります。

Desai et al. Cell (2016)より引用

Fiber-rich dietというのが食物繊維が豊富なエサを食べたマウスで、Fiber-free dietというのが食物繊維を含まないエサを食べたマウスになりますが、見ての通り食物繊維を含まないエサを食べたマウスはピンク色の粘液(英語ではMucus layer)が無くなっています

これは腸内細菌にとってエサである食物繊維がなかったために、腸管の粘液をエサとして食べれる腸内細菌が増加し、粘液を食べつくしてしまったというイラストなのです。

先ほども書きましたが、腸管の粘液はムチンという食物繊維でできているので、エサに食物繊維が含まれないと、代わりにこの粘液を食べてしまうんですね。

そして、この結果、感染性の細菌が腸管から侵入してきています。イラストで言うと黄色い細菌が感染症を引き起こす細菌です。かなり恐ろしいですね。この研究は動物レベルで、人間で確認された試験ではありませんが、理論上では人間でもマウスと同じようなことが起こることが予想されます。

エビデンスレベルは低いし、人でも証明されていないけれど理屈は正しい

研究・科学実験のイラスト(男性)

ここまでの結果を見て分かるように、腸内環境と免疫の関係というのは関連がとてもおおきいですし、同時に、食物繊維をしっかりと食べなければ、腸内細菌のバランスが崩れ、感染症などの原因にもなりかねないことを紹介しました。

ですが、一つ留意していただきたいのは、これらの結果はあくまでも、動物試験での結果で、エビデンスレベルは低いです。

また、動物で研究されているけれども人で研究ができていない理由はおおきく2つあって、

動物実験が人で確認できない例
① 研究デザイン上、解剖など詳細な観察が必要なため人では確認ができない。
② かなり小さな効果しかないから、人では個体差に埋もれてしまい確認できない。

といった理由があります。実際にはほとんどが①と②の両方だと思いますので、腸活で免疫力アップというのは理論上正しいし、わたしも支持していますが、メディアや腸活などのキーワードで商品が売れるようなメーカーのマーケティングというのもおおきいと思います。

さいごに

最後まで読んでくださりありがとうございました。本日の記事のポイントは、

① 腸は免疫と大きな関わりがあります。
② 酢酸などの短鎖脂肪酸を産生する腸内細菌が健康には大事です。
③ 食物繊維を摂取することで腸の粘液が保護され、細菌感染を防ぎます。

ですが、③については動物レベルの実験にとどまっていますので、過大評価の可能性もあります。

ですが、わたしは自分が良いと思っていることは素直に薦めたいと思いますので、みなさま、是非、食物繊維をしっかりと意識して摂取をして、健康に気をつけてください。

とくに免疫という点では水溶性の食物繊維を意識するとよいと思いますので、大麦や海藻、あとはごぼうなどを積極的に食べるとよいと思います。朝食で毎日食べるのであれば、おすすめはミューズリーというシリアルが得におすすめかなあと思います!

  • この記事を書いた人

Pon

食品会社勤務の元企業研究員(PhD)。食の機能性研究、腸内細菌の研究をメインにしていました。興味関心は公衆衛生、疫学、食品の機能性。好きな食べ物はカレーと杏仁豆腐。コテンラジオ、キングダムが好きです。統計の専門家に憧れます。興味のある研究について、Xやブログで発信しています。

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